「野党連合遠のく」
―「容共」と「反共」は合流できない―

.

会長・政治評論家 屋山太郎

 野党合流が目前まで行きながら、年を越してしまった。目下のところ解散の可能性が小さいので、実現の見込みはさらに遠のいた。枝野立民代表と玉木国民民主代表の会談が何度か行われたが、決裂した原因は明らかにされず推測あるのみである。敢えてそこを強引に分析してみる。
 枝野氏はかつて革マルの支援を得ていたと言われるほどの過激派だから、共産党などを恐れていないだろう。自分が引き摺って行くくらいの度胸があるはずだ。玉木氏は党内に反共の者を抱えているから、全野党で安倍政権に対決というような場面には立ち会いたくない。この共産党に対する思想の違いはイデオロギーに関するものだから強要はできない。合併の奥に共産党が存在したとなれば、反共の人たちは「玉木、オレを騙したな」ということになりかねない。
 もう1点、乗り越えることが困難な問題は原発政策である。小泉純一郎氏は首相時代、原発政策を進めながら、退任すると狂気のような反対論に転じた。スウェーデンの原発を見て一転、気が変わったという。野党支持である連合の中の電気連合に「廃止せよ」と言わせるのは自分の職場をなくせと言わせるに等しい。政策的にも原子力発電こそ地球温暖化阻止の決め手だと信じている人も多い。
 立民・国民合併の奥に見える障害は共産党と原発の2点である。
 共産党は両野党合併を容易にしようと1月18日、熱海市で28回党大会を開き2004年綱領の一部を改訂した。中国共産党と米国を念頭に置いて「いくつかの大国で強まっている大国主義、覇権主義は、世界の平和と進歩への逆流となっている」と批判した。現実路線に転換したつもりのようだが、綱領には「アメリカ軍とその軍事基地を撤退させる」「自衛隊の解消」の文言も残っている。
 人事では志位和夫委員長が20年目を迎えるし、小池晃書記局長も続投。コケの生えた綱領や人事が存続維持されるのは、民主集中制という独裁の仕掛けのせいだ。普通の民主主義が行われていないのである。これは政党ではなくて運動団体だ。西欧最大と言われたイタリア共産党はソ連崩壊の2年前に「左翼民主党」と党名を変えた。94年の総選挙は連立で政権を執ったのちに「民主党」と名を変えた。現在は「左翼」と名乗り、目指すは民主社会主義である。
 かつてフランス最大の野党を築いたフランス共産党は下院577議席のうちの10議席に凋落した。党員はわずか5万人。ピエール・ローレン総書記はシンボルマークから「ハンマーと鎌」を外すと宣言した。
 いまヨーロッパで「共産党」を名乗っている政党はない。政党は民意に応えて政策を作り替えて行く。日本共産党はその名の通り、日本に共産主義を打ち立てようとしているのか。特殊任務を帯びた運動団体に見えるから、何となく恐ろしいのである。
(令和2年1月22日付静岡新聞『論壇』より転載)