米中覇権争いで、いきなり南北統一も

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政策提言委員・拓殖大学主任研究員・元韓国国防省分析官 高 永喆

 1989年10月25日、ソウルを訪問した西ドイツのブラント元首相は記者会で、「ドイツ統一はいつ頃可能か」との質問に「欧州が統合された️10年後に可能だろう」と答えた。しかし、その日から半月で東西ドイツを分断するベルリンの壁は崩壊した。東ドイツのホーネッカー書記長も同年1月、「ベルリンの壁は50年でも100年でもあり続けるだろう」と語ったが、それから10ヵ月後に壁は崩壊した。
 一方、旧ソ連のゴルバチョフ書記長は同年6月15日、西ドイツを訪問した後、記者会見で「ベルリンの壁が突然崩れる可能性がある」と答えた。この発言は当時、実現の可能性がないと無視されたが、5ヵ月後にその見解の正しさが証明された。そのソ連も2年後の91年、15ヵ国に分離独立し、同年12月25日に消滅した。1917年のロシア革命後、74年で国際共産主義の宗主国が崩壊したのだ。
 ところで共産主義中国は今年、建国から72年を迎えているが、覇権主義的な膨張に拍車をかけている。最近、中国は米国と覇権争いの意思がないことを表明したが、東•南シナ海の島嶼や岩礁を無断占拠したり尖閣諸島の領海侵入を繰り返し、台湾に対する威嚇も増えつつある。また、チベット、新疆ウィグル、香港、内モンゴルでの人権弾圧や圧政が国際的な非難を浴びている。
 旧ソ連が崩壊した背景には、大陸国家ながら大海軍力の建設に国家予算を浪費して国力が衰退したことがあると指摘されている。今度は中国が大陸国家にもかかわらず、大海軍力を建設しながら海洋進出を強め、海洋国家アメリカとの軍拡競争に巻き込まれている。
 最長の陸上国境を持つ中国が海洋権益の防御線まで拡大すれば、その負担は莫大なものとなる。結局、四分五裂する可能性が高まると考える。
 北朝鮮の後ろ盾である中国の少数民族分離、独立は北朝鮮の自由民主化を招くだろう。その時、38度線はいきなり崩れ、第2のベルリンの壁崩壊になり得るとも考えられる。専門家の間では南北統一はこれから30年以上、長い歳月が流れても難しいと言われている。
 だが、東西ドイツの統一がいきなり実現した前例に照らして見れば、南北統一もいきなり訪れる可能性が高いと考えざるを得ない。
 
*本稿は4月30日付世界日報に掲載したコラムを部分的に修正したものです。