澁谷 司の「チャイナ・ウォッチ」 -144-
“外国人”が政治に深く関与する中国

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政策提言委員・拓殖大学海外事情研究所教授 澁谷 司

 よく知られているように、習近平主席(「紅二代」=中国革命に功績があった共産党幹部二世)の親族は、外国籍や外国の永住権を持つ。
 長姉の齊橋橋(旧名、習橋橋。齊は母親の姓。夫は鄧家貴)はカナダ国籍、次姉、齊安安(旧名、習安安。夫は呉竜)はオーストラリア永住権、実弟の習遠平もオーストラリア永住権を持つ。
 米政府の資料によれば、閣僚クラス(引退した人達を含める)以上の「官二代」(=中国高級官僚の子女)の75%が、米グリーンカード(=米国永住権。中国国籍を維持可能)を持つか、米市民権(=米国籍。その場合、原則、中国国籍を捨てなければならない)を持っている。また、閣僚クラス(同)以上の「官三代」(=高級官僚の孫の世代)になると、90%が米市民権を有する。
 そして、彼ら「官二代」や「官三代」は、米国の有名大学に学び、名だたる大企業に入って働いている。
 例えば、江沢民元主席の孫の江志成(江綿恒の息子)は、米ハーバード大学経済学部卒業後、ゴールドマン・サックスに勤めていたことがある。 
 「保守派」の元老、陳雲の孫、陳暁丹(陳元の娘)は、スタンレー・モルガンで働いたことがある。また、温家宝前首相の娘、温如春は、JPモルガン・チェースに勤務した経験を持つ。 
 中国共産党高級幹部の二世・三世が、米国のウォールストリートを闊歩している姿を想像すると、実に奇妙な光景ではないか。 
 さて、昨2015年7月、王岐山(中央紀律検査委員会主任)が「キツネ狩り」と称し、米国へ逃げた中国腐敗官僚の捕獲を計画していた。 
 とりわけ、胡錦濤の大番頭であった令計劃(今年7月、無期懲役の判決を受けて服役中)の弟、令完成は、約2700の国家機密書類(核のボタンの場所と中南海の詳細等が含まれるという)と最高幹部の「セックス・ビデオ」を持って米国へ逃亡した。令完成こそ、習近平政権の第1のターゲットであった。ちなみに、令の本名は令狐である。 
 実は、米証券取引委員会からJPモルガン宛に召喚状が送られている。そのリストのトップが王岐山だという。 
 王は、JPモルガン・チェースに自分の親族の就職を不正に斡旋した。そのため、王岐山は訪米できなかった。王自らが米当局に身柄を拘束される恐れがあったからである。 
 ところで、中国共産党は、しばしば外国(人)による内政干渉は許さないと表明している。だが、一方、我が国に対しては、終戦記念日、首相や閣僚による靖国神社参拝はけしからんと、内政干渉を行ってきた。 
 中国には、不思議な実態がある。 
 2013年のデータだが、全国人民代表大会代表の約6%(179人)と人民政治協商会議代表の約20%(450人近く)は、外国の永住権・外国のパスポート・外国籍を持っているという。 
 かつて、全国人民代表大会(全人代)は、党中央政治局の決定を追認するだけの「ゴム版」とか「挙手マシン」、また、人民政治協商会議(政治協商会議)は「花瓶」(お飾りの意)等と言われていた。 
 ところが、今や全人代は「国際会議」、他方、政治協商会議は「万国クラブ」と揶揄されている。 
 海外のパスポートを持つ人間や外国籍の人間(=外国人)の一部が、国家を代表して政治を行っている。これは、まさしく、中国共産党自身が忌み嫌う、外国(人)による内政干渉に他ならない。 
 さらには、90%の中央委員、85%の中央委員候補、88%中央紀律検査委員会委員の直系親族らが欧米へ移住し、
 そこで働いている。親族らは、すでに現地の国籍を取得済みである。 
 共産党中枢の要職にある人々は、国家に緩急あれば、すぐにでも海外へ逃げる算段である。彼らは資産もすでに中国から海外へ移している。 
 このような中国共産党幹部らの無責任さは、おそらく今始まったわけではないだろう。非情な歴史(盛者必衰の理)から得た教訓に違いない。彼らは危なくなったら、いつでも逃げられる準備をしている。 
 しかし、この無責任な共産党政権下で暮らす14億の民に対して、誰しも同情を禁じ得ないだろう。