澁谷 司の「チャイナ・ウォッチ」 -148-
G20杭州サミットと日中韓国外相会議

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政策提言委員・拓殖大学海外事情研究所教授 澁谷 司

 今年(2016年)9月4・5日、中国の杭州市でG20首脳会議が開催される。G20は、世界人口の3分の2を有し、世界のGDPの90%、世界貿易の80%を占めている。
 杭州市は、9月1日から7日まで、市庁舎・学校等の公共施設および一般の会社や商店が休日となる。大気汚染対策でもある。
 昨2015年、9月3日、北京では「大閲兵」が行われた。その際にも、同市は、会社・工場・商店等がすべて休みになっている。
 杭州市は、すでに軍の装甲車等で“要塞化”された。同市はテロに備えて厳戒体制下にある。まるで戦争の準備しているようだとも囁かれている。
 杭州サミットに先がけて、今年7月9・10日、G20貿易相会議が上海市で開かれた。また、同月24・25日には、G20財政相・中央銀行総裁会議が成都市で開催されている。
 成都会議では(1)現在のグローバル経済情勢、(2)「勢いがあり持続可能で均衡な成長の枠組み」、(3)国際金融の枠組み、(4)投資とインフラ、(5)金融部門改革、(6)国際的な税収協力、(7)グリーン金融、(8)気候資金、(9)テロ対策融資などの議題について討論を行った。
 今回、杭州サミットのテーマは、「4つのI」――Innovated(革新的)、Invigorated(活力のある)、Interconnected(連動した)、Inclusive(包摂的)――である。
 昨2015年11月、すでに習近平主席が「革新的で、活力のある、連動した、包摂的世界経済の構築」を謳っていた。
 中国にとって今度のサミットでの重要課題は、いかに世界と連携して自国経済を発展させるかだろう。目下、中国国内では内需が冷えこんでいるので、習政権は「一帯一路」での外需取り込みに必死である。
 また、北京は、米国と手を携えてどのように東アジアの平和を維持するかについて話し合いたいのだろう。ただし、周知の如く、米国は大統領選挙真っただ中である。たとえ習主席がオバマ米大統領と会談しても、成果が得られるかどうか疑問符が付く。
 他方、習近平政権としては、できれば各国(特に日本)が東シナ海・南シナ海問題に触れて欲しくないのではないか(今年7月12日、国際仲裁裁判所が、南シナ海における中比紛争で、中国側に不利な「裁定」を行ったことは記憶に新しい)。
 反対に、安倍政権としては、東シナ海と南シナ海における中国による“膨張”を会議のテーマとしてテーブル上に乗せたいだろう。そして、各国と協調し、中国が“法秩序”を遵守することを求めたいに違いない。
 さて、今年8月24日、日中韓外相会議が東京で開催された。G20杭州サミットを見据えた“地ならし”の側面がある。
 今回、岸田文雄外務大臣(議長)、中国の王毅外交部長(外相)、韓国の尹炳世(ユン・ビョンセ)外交部長官(外相)らが参加した。
 王毅外相は、G20サミットを成功させるためか、同会議では歴史問題・尖閣諸島問題等を持ち出さなかった。
 実は、その前月(7月)8日、米韓両政府は地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD:終末高高度防衛ミサイル)を在韓米軍に配備すると発表した。
 朴槿恵政権は、中国に対して気兼ねしつつも、THAADの導入を決めている。韓国としては、北朝鮮の核実験や長距離弾道ミサイル発射の脅威に晒されているので、やむを得ない選択だった。
 習近平政権は、北京までカバーする韓国のTHAAD導入に反対していた。だが、韓国がTHAAD導入を決定したので、中韓の関係が急速に悪化している。
 翌月(8月)22日から米韓軍事合同演習「ウルチ・フリーダムガーディアン」が開始された。
 その2日後の24日(日中韓外相会議当日)未明、北朝鮮は、同国北東部にある咸鏡南道(ハムギョンナムド)・新浦(シンポ)付近の海上から潜水艦発射弾道ミサイル新型SLBM「KN11」(飛翔距離推定500キロ)を我が国の防空識別圏へ発射している。金正恩党委員長は米韓軍事合同演習に対抗して、SLBMを発射した公算が大きい。
 同月26日、国連安全保障理事会(15ヶ国)は、北朝鮮によるミサイル発射を強く非難する声明を発表した。さすがに、今回は中国も北朝鮮非難に同意している。習近平政権はG20杭州サミット成功を最優先させたのだろう。
 さらに2日後の28日、それに対し、北朝鮮外務省スポークスマンは「米国などによる我が国の自主権と尊厳への無謀な挑発」と決め付け、「断固、全面的に排撃する」と強く反発している。相変わらず、北朝鮮の動きは不可解きわまりない。