澁谷 司の「チャイナ・ウォッチ」 -149-
李源潮国家副主席失脚は間近か?

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政策提言委員・拓殖大学海外事情研究所教授 澁谷 司

 胡錦濤前国家主席の大番頭、令計劃(党中央弁公庁主任)が失脚して以来、「共青団」の勢力は衰退している。おそらく、胡前主席の健康問題が深く関係しているのかもしれない。
 昨2015年、北京で開催された「9・3大閲兵」の際、胡錦濤前主席は、江沢民元主席、李鵬元首相、温家宝前首相等と共に天安門の楼上に姿を現した。
 だが、なぜか胡前主席は両手の拳をぎゅっと握りしめていた。そのため、パーキンソン病が疑われている。
 目下、習近平主席は、「共青団」(=「団派」)を改革するという名目で、同勢力をそごうとしている。
 現在、「共青団」の中心的人物の1人である李源潮(原名:李援朝。江蘇省出身)国家副主席が失脚の危機に瀕している。
 李源潮の父親、李干成は上海市副市長を務めたことがある。だが、「文化大革命」時に、李干成は「四人組」から迫害を受けた。また、母親の呂継英も共産党員だった。したがって、李源潮は「太子党」でもある。
 かつて李源潮と李克強首相はライバル同士だった。2012年秋の中国共産党第18回全国代表大会(18大)で、本来、李源潮は政治局常務委員になるはずであった。ところが、李源潮は国家副主席という閑職へ追いやられている。
 さて、李源潮は、3億元(約46.5億円)を収賄したと疑われている。また、北大方正集団の理事、李友は、令計劃の妻、谷麗萍と息子、令谷にも日本の京都の豪邸を贈ったとされる。同じ様に、李友は、李源潮の妻、高建進と息子、李海進にも京都の豪邸を贈っている。その2棟併せて、5億米ドルと言われる(ただし、額の桁が間違っている公算が大きい)。
 令計劃と李源潮が“敵国”の日本に不動産を持つ事自体、他の共産党幹部にとっては印象が悪い。
 李源潮の第1秘書(趙姓or張姓)が、中央紀律(規律)検査委員会で取り調べられた。また、李源潮愛人と言われる江蘇省江蘇省機関事務管理局長の楊樺も、同委員会で取り調べられている。
 同様に、李源潮の妻、高建進も同委員会に拘束されている。ただし、高建進の弟、高全建は中国大陸を逃れ、香港に潜伏中だと目される。
 すでに李源潮は、習近平主席と王岐山中央紀律検査委員会主任にも聞き取りされているという。
 実は、李源潮は、周永康、薄熙来、令計劃、によるクーデター計画に関与したと見られる。
 2012年3月18日、令計劃の息子、令谷が「黒いフェラーリ事件」を起こした。車を運転していた令谷は即死し、同乗していたチベット族の2人の女子大生(?)も重傷を負い、そのうち1人は後に亡くなっている。
 この事件を契機に、その翌19日、周永康らによって「北京政変」が起きた。胡錦濤主席や習近平副主席に代わり、令計劃が総書記、李源潮が首相になる計画だったという。けれども、クーデターは未遂に終わった。
 今や「共青団」の“4天王”が失脚しようとしている。羅志軍(前江蘇省委員会書記)、強衛(前江西省委員会書記)、秦光栄(元雲南省委員会書記)、袁純清(元山西省委員会書記)である。
 特に、羅志軍は李源潮の「江蘇幇」(=「江蘇系」)に属している。また、王珉(前遼寧省委員会書記)や王栄(現広東省政治協商会議主席)等も李の「江蘇幇」に連なる。
 李源潮の「江蘇幇」の1人、前雲南省副書記の仇和が、昨(2015年)3月に中央規律検査委員会の取り調べを受けた。同年7月、仇和は失脚し、党籍を剥奪され、党務を解任された。
 今年(2016年)8月25日、仇和は、貴陽市中級裁判所で、仇和の賄賂に関する裁判が始まった。今度は、李源潮が失脚し、逮捕される番かもしれない。
 ところで、一部の中国研究者は、「太子党」の習近平主席・王岐山中央紀律調査委員会主任と「共青団」の李克強首相は、「鉄のトライアングル」を作っていて、3人の結束は強固だと見ている。
 しかし、『人民日報』上における習主席と李首相の間での激しいバトルを見れば、経済政策をめぐり、両者が火花を散らしているのは一目瞭然である。
 今年夏の北戴河会議(現役の幹部らと引退した幹部らによる非公式会議)では、習近平主席の経済政策(サプライサイド経済学)が支持されたと伝えられている。
 もし、それが事実ならば、李克強首相の出番はほとんどなくなる。そして、李首相ら「共青団」は、ますます中国政治の周辺部に追いやられることになるだろう。