空理、空論の通常国会閉会
―政治の役割理解できぬ民・共―

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会長・政治評論家 屋山太郎

 通常国会が終わったが、何という空理、空論、無駄な議論が多かったことか。主要テーマには天皇の退位を実現する特例法、性犯罪を厳罰化する刑法改正もあってこちらは無事に片付いた。しかし会期の大半を費やしたテロ準備法と「加計問題」は国民の感覚と度はずれた空間で議論されていたのではないか。
 民進党と共産党はテロ準備法は不要だというスタンスなのか。テロに準備せねばならないのは世界の状況を見れば明らかだろう。国際的な連携が不可欠であって、互いに情報を交換することで網目を細くすることができる。この観点から国際組織犯罪防止条約に加盟するのは不可欠である。政府はそのために関連の国内法を改正する必要があるという。野党はそれをやれば戦争中の治安維持法同様の言論統制が行われ、暗黒社会になると大真面目に言う。現行法で十分ならサリン事件はなぜ起こったのか。イスラムの禁書を翻訳した学者がなぜテロリストに殺されたのか。サリン事件などは原料を入れたドラム缶3000本が運び込まれたという。山の中に大量のドラム缶を運べば、米、欧の国なら途中で必ずチェックされるはずだ。日本は明らかに法に違反していなければチェックされない。チェックする法律もない状態だった。
 国会で聞きたかった議論は、新法ができればこういうケースはチェックできるとか、事前に準備できる具体例などを示すことだ。こういう知識を国民が事前に知ることによって、警察に通報するなど効果は何倍にもなる。もともと国民がこれほど警察に協力する国はない。それは公の意識が強いからだ。
 私なども日教組教育で「権力は悪」と教えられて育ったが、子供心に「日教組が天下をとったら悪ではないのか」と訝ったものだ。野党の追及のやり方を見ていると、「権力は悪」意識が抜けていない。民主党政権の無残なあり様は、自らが「権力をとった時」を全く想定していなかったからだ。既成の官僚機構を敵と見做して叩いたのだ。今のような空論を聞いていたら、国民は政権を託す気にならないだろう。反対のための反対の見本を目の前で見たようだ。議論を避けて時間を稼いで審議未了か強行裁決に持ち込むという自社対決時代さながらの国会運営である。これでは一強多弱の政界の構図は変わるまい。質問を通じて国民の理解を得るという議会政治の根本を示してもらいたい。このために、まず野党は常に与党のテーマに反対するという日本独特の“公式”を破棄すべきだ。
 「加計問題」はこれほどの騒ぎになる問題なのか。この問題を通じて浮かび上がってきたのは政治の意向にかかわらず、行政がいうことを聞かないという図式である。前愛媛県知事の加戸守行氏は平成22年に宮崎県で口蹄疫が発生した際、愛媛県の港の検疫態勢をとるのに獣医師が足りず、ペットの獣医師にまで助けてもらったという。もちろん獣医学部の設置には賛成だ。同氏は文科省で前川喜平前時次官の先輩だが「大臣のいうことを聞くのが官僚だ」と前川氏を強く批判した。
(平成29年6月21日付静岡新聞『論壇』より転載)