澁谷 司の「チャイナ・ウォッチ」 -274-
中国共産党政権が崩壊する契機

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政策提言委員・拓殖大学海外事情研究所教授 澁谷 司

 昨2017年クリスマス・イブに、習近平主席が北京301病院に緊急入院した。
 習主席が度重なる主席への“暗殺未遂”のため、腹痛を起こしたという。だから、大事を取って入院したと伝えられている。無論、真偽のほどは不明である。当日、何かクーデターのような事件が起きた可能性も排除できない。
 さて、最近、米国在住の何清漣・程暁農が共著で『中国:潰而不崩(仮訳―中国:壊れるが潰れない―)』を上梓した。
 我々は同書を未だ入手していなので、『ラジオ・フリー・アジア(RFA)』(2018年1月5日付)の余傑よる梗概を紹介したい。
 欧米では、1989年の「6・4天安門事件」が発生以来、「ドラゴン・スレイヤー」(中国崩壊を唱える「反中派」)とパンダ・ハッガー」(中国台頭を唱える「親中派」)の両者がせめぎ合ってきた。
 しかし、何清漣と程暁農はいずれの主張も排する。壊れる主体は中国であり、潰れない主体は中国共産党だという。同党が潰れないのは、社会的あらゆる人的資源・物質的資源等を握っているからである。
 まず、「中国が壊れる」とは、(1)環境問題―水、土壌、大気の安全(2)社会構成員の行動規範と道徳心のバランス(3)社会構成員の就業と生存権(4)社会が正常に機能するための政治システム―—を指す。
 次の「中国は潰れない」とは、中国共産党政権の事であり、同政権は強権政治で体制を維持している。
 何清漣と程暁農は、何故中国が潰れないかを以下のように説明する。
 第1に、中国には市民社会が消滅し、民間組織が瓦解し、個人は原子のようにバラバラに存在している。一部には「群体性事件」(集団的騒乱事件)に期待する向きもあるが、中国共産党はネットワークを張り巡らせ、すぐさま武装警察で弾圧する。
 第2に、郭文貴のような海外中国知識人は、中国共産党の精神構造が酷似している。単に罵り合いをしているだけで、それでは共産党の崩壊には繋がらない。
 第3に、中国はヨーロッパの多くの国々と友好関係がある。また、米国にも、オバマ前大統領のような「隠れ左翼」がいる。また、『ニューヨーク・タイムズ』紙のような左翼メディアには、“中国モデル”にシンパシーを覚える左翼人士がいて、中国共産党の考えを無償で代弁している。
 以上が、ごく簡単な余傑による同書の紹介である。
 仮に、余の梗概が正確だとしよう。同時に我々の理解もほぼ正しいと仮定したい。その場合でも、何清漣・程暁農の主張とは正反対に、中国共産党政権の崩壊は十分考えられるのではないか。
 第1のシナリオとして、もし宮廷クーデターや軍事クーデターによって、突然、習近平主席が暗殺されたらどうなるだろうか(“恣意的な”「反腐敗運動」を恨んでいる高級幹部はごまんといる)。中国共産党自体、大混乱が生じるのは間違いない。「6・4天安門事件」後と同じように、党は深刻な内部分裂に陥るだろう。
 第2のシナリオとして、近い将来、米朝間で「第2次朝鮮戦争」が起きたら、どうなるのか。
 現時点で、(金正恩委員長の大嫌いな)習近平政権は、多少なりとも北朝鮮に経済制裁を課そうとしている。だが一方、ずっと北朝鮮に核・ミサイル技術を供与してきた江沢民系「上海閥」は依然、金王朝を支え続けている。
 共産党内は、既に対北朝鮮政策で、真っ二つに割れているのである。戦争が勃発すれば、更に亀裂が大きくなるだろう
 第3のシナリオとして、現在、散発的に起きている「群体性事件」が一斉に発生したらどうなるだろうか。たとえ、武力警察でも抑えが効かないおそれがある。共産党は人民解放軍を投入するのか。その際、退役軍人らが蜂起したら、共産党政権は一夜にして転覆する公算もある。何清漣と程暁農は、SNSの発達を軽く見ていないだろうか。
 第4のシナリオとして、今後も中国の景気が回復せず、ずっと“不景気”が続いたら、どうなるのか。
 周知の如く、今の北京政府の経済政策は矛盾に満ちている。習近平政権は、小さな政府を目指すべく「サプライドサイド経済学」を掲げながら、真逆の施策を推し進めている。習主席は効率の良い民間企業よりも非効率な国有企業の巨大化を目指す(「習近平思想」普及という政治を優先させたいからだろう)。
 また、北京政府の「ゾンビ企業」整理も十分ではない。従って、これからも「ゾンビ企業」に赤字を補填して生かし続けるしか方法はないだろう。中央政府の財政赤字(現在でもGDPの250~300%)は更に増大し、その借金で首が回らなくなる日は間近ではないか。