「憲法改正、今がその時!!」
―国際情勢無視、憲法改正阻止、安倍内閣打倒で何が生まれる?―

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会長・政治評論家 屋山太郎

 北朝鮮をめぐって国際情勢が急変している。そこで憲法記念日は何か変化があるのかと注目していたが、革新側は相変わらずの空論である。安倍内閣でできた新安保法もやり直せというに至っては、呆れるほかない。
 安倍内閣は国際情勢の変化に対応できるように、法的に集団的自衛権が行使できるようにした。新安保法は国会の多数決で成立したものだが、立憲民主党などは「憲法に抵触する部分があるから、それを取り消してから、憲法改正にかかる」という。どこが憲法に抵触するのかについては百人百様の意見が出るだろう。そのような事態を打開するためにこそ、多数決がある。その多数決が無効だという議論は、実は憲法改正をさせない意図と見るほかない。
 旧社会党は土井たか子党首の時代「山が動いた」というほどの大勝を博した。しかし社会党が狙っていたのは政権獲りではなくて、議席の3分の1を握ってさえいれば、保守党は憲法改正ができないという負の効果のみだ。
 国会はモリ、カケ問題に明け暮れているが、この問題は政治の首座にもってくるようなものではないだろう。安倍首相の周辺に現金が廻ったというような事実がない限り、犯罪は成り立たない。陳情や忖度などは野党議員も含めて日常茶飯事の事だろう。昔は公団住宅に入るには共産党か公明党に頼めと言われたものだ。
 その他愛もない「モリ、カケ」問題を国会の中心議題にして、北朝鮮問題に向き合おうとしないのは、土井社会党時代の発想だ。
 立憲民主党の枝野幸男代表の言い分などは時代を逆行させる意図としか思えない。集団的自衛権の行使を認めた部分を剥ぎ取れば憲法は丸裸になる。枝野氏の解釈だと現憲法で自衛隊を読み込むことはできないから非武装になれ、ということか。土井社会党は常時、憲法改正を阻止できる議席を握っていたが、立憲民主党は議会(衆院)の3分の2、310議席のうち54議席しかない。
 安倍内閣の支持率は30%台にまで落ち込んできたが、その分を取り込んだ野党は1つもない。モリ、カケでいくら文句をつけても、与党が失った人気を吸収する野党がない。政権交代があるべき民主主義の姿だとすれば、現在の状況は何を物語るのか。
 安倍首相は改憲について「私の在任中に成し遂げたい」と明言。自民党は憲法改正案をまとめた。自民党案は9条の1、2項はそのまま。但し、9条の2として「必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として、自衛隊を保持する」を加えるというものである。
 自民党案に対して党内外から「相撲の勝負で言えば、常にウッチャリで勝てというようなもの」という文句が出ている。しかし安倍氏は公明党の「加憲」姿勢を汲んで考えたもの。そもそも憲法は時代に応じて変えるべきもの。今がその時だ。
(平成30年5月9日付静岡新聞『論壇』より転載)