「参院選に向けた連合と野党との関係」
―“技術政党”なり下がった共産党―

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会長・政治評論家 屋山太郎

 野党陣営に面妖としか表現できない現象が起きている。11月30日、連合が中心になって、来夏の参院選に向け、立憲民主党と国民民主党とそれぞれ政策協定を結んだ。同文の政策協定なら三者が集まって手を結んでも同じはずだが、別々に結ぶところに将来に向かっての意味があるようだ。
 締結式には連合の神津里季生会長のもとに立憲の枝野幸男代表と国民の玉城雄一郎代表が参上する形で行われた。連合との同文の書簡を前に神津氏は「まずはこれを第一歩として大きな目標に向かって両党と力を合わせていきたい」と述べた。野党勢力としては政党条件消滅寸前の社民党、岡田克也氏の無所属の会、共産党、希望の党、自由党などがあるが、神津氏は立民、国民の2党を選び出したのには深い意味がある。
 将来、何かの問題に直面してこの2つの政党が対立する原因は共産党だろう。共産党は衆院12、参院14議席を抱えたれっきとした政党だが、この党と一緒に仕事ができるかと問われると国民のほぼ全部、立民の半分は断るだろう。連合が政策協定を別々に結んだのは共産党とのからみが出てくれば、分裂に至る危機があるからだ。
 東京都知事選で小池百合子候補は「新党・希望」を立ち上げた際、「排除の論理」を持ち出した。民主党をそっくり希望の党に迎え入れるにあたって、憲法の9条改正反対などを公言している極左を排除しようと考えたからだ。文句を言われた小池氏は一転「排除を取り消す」と言明して評判を落とした。振り返って考えるとこの踏み絵は、9条反対論者にとっては、“渡りに船”になった可能性がある。党名を変える、新党を結成するという動機があれば、変節は変節でなくなる。
 日本を取り巻く国際情勢を脅威と感じない人はいないはずだ。社会党は非武装・中立を標榜していた時とは様変わりだ。かつては3分の1の議席を持っていたのに支持が減って、社民党になった今、衆参で4議席。支持率は2%を下回る。新しい国際環境を読めない政党が支持を失うのは必至なのだ。
 社会党・社民党の後を迫っているのが共産党である。現在の共産党の姿勢は野党候補の乱立を防いで、自民党に得をさせないというものである。参院で1人区の選挙区は31あるが、共産党は13年の参院選挙で自党候補者を立候補させたばかりに、自民党に31のうち29議席を奪われてしまった。そこで16年の参院選では候補者を絞ったところ21議席にとどめた。これが勝ったということなのか。打って出ることなしに政党は勢力を伸ばし得ない。志位和夫氏は喧嘩のコツを知らないタダのオジサンだ。私の若い頃は周りは民青ばかりだった。今、共産党は学生に頼んで民青の代わりにSEALSを結成したが、あとから歩いているのは年寄りばかりだ。候補者調整だけで発言力を維持しようという“技術政党”になり下がったのである。
(平成30年12月5日付静岡新聞『論壇』より転載)