Key Note Chat 坂町

第136回
「台湾問題と今後の日米韓関係」

長野禮子 

 今回は台湾訪問を終え東京に着いたばかりのエルドリッヂ氏を約1年ぶりにお迎えしての「Chat」である。氏の台湾訪問の目玉は、台湾総統府訪問と官房長代理クラスとの意見交換だった。意見交換ができたのは有意義だったが、結局は「アメリカはあまり行動しない」「日本は絶対に行動しない」ということで、忸怩たる思いを拭うことはできなかったようである
 そこで期待するのが日本版台湾関係法であると氏は言う。既に昨年の「正論」9月号で発表した「日本版台湾関係法を制定すべき」という氏の記事を取り上げ、今年1月、米国の台湾関係法成立から40年が経たことを踏まえ、日本も台湾関係法を制定すべきであると説く。安全保障における日台関係は正に「運命共同体」であり、JFSSもその立場に立って制定を急ぐべきとの意見は今に始まったことではない。しかし、この期に及んでも親中政治家の影響が強く、台湾重視の政治家の育成が成されていない事を氏は鋭く指摘する。総統府の懸念は、安倍政権で日台関係はより親密になったと感じているかもしれないが、10年前と比較すると全ての面で希薄になっているという点である。聞いた我々も驚いた。
 エルドリッヂ氏は、このほか米国の大統領選の行方や米軍駐留費の問題、韓国問題に触れ、出席者との活発な質疑応答が行われた。

テーマ: 「台湾問題と今後の日米韓関係」
講 師: ロバート D・エルドリッヂ 氏(JFSS上席研究員・元在沖縄海兵隊政務外交部次長)
日 時: 令和元年11月20日(水)14:00~16:00

第135回
『令和元年度版防衛白書』の説明を聞く

テーマ: 『令和元年度版防衛白書』説明会
講 師: 川嶋 貴樹 氏(防衛省官房審議官兼情報本部副本部長)
日 時: 令和元年10月31日(木)14:00~16:00

第134回
「トランプ政権は、今」

テーマ: 「トランプ政権は、今」
講 師: ルイス・リビー 氏(ハドソン研究所上席副所長)
通 訳: 古森義久 氏(JFSS顧問・産経新聞ワシントン駐在客員特派員)
日 時: 令和元年10月28日(月)14:00~16:00

第133回
「防衛行政の課題」

長野禮子 

 今回の「Chat」は、2019年7月に退官した前防衛装備庁長官の深山延暁氏をお招きし、日本を取り巻く安全保障環境の変化と日本が直面する安全保障上の課題について、特に防衛装備行政の観点からお伺いした。

1、防衛大綱・中期防衛力整備計画(31中期防)の概要
 現在、日本を取り巻く安全保障環境は主要国の影響力の相対的な変化に伴い、中国・ロシアの影響力の拡大等、パワーバランスの変化が加速化・複雑化している。また、尖閣諸島周辺で活動する中国漁船や2014年のクリミア危機のように、グレーゾーンの事態が長期継続する可能性が生じている。更に、各国は戦争のありようを根底から変える最先端技術を活用した「ゲームチェンジャー」となり得る兵器の開発を推進しており、将来の戦闘様相は予見困難になりつつある。
 このような状況の中で日本は、領域横断的に有効に機能する防衛力として、「多次元統合防衛力」の構築を防衛計画の大綱において定めている。陸海空の既存の領域に加え、宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域が焦点になる。これらの領域における日本の防衛力の整備は諸外国より遅れており、一層の強化が求められる。

2、日本の防衛装備政策
 日本は、①技術的優越の確保、②防衛装備品の効率的な取得、③防衛産業の競争力強化が必要である。技術的優越の確保では、民生技術の取り込みや諸外国との防衛装備・技術協力の推進が挙げられる。
 防衛省は、日本の防衛に必要な技術に関する考え方を研究開発ビジョンとして公表しており、民間企業の予見可能性を向上させ、先行投資が可能になるようにしている。また、防衛分野での将来における研究開発に資する基礎研究を公募する安全保障技術研究推進制度を進めているが、公募に応じる研究機関が限定的で大学からの応募は少ない。
 防衛装備品の効率的な取得では、防衛装備品の高額化に伴い、装備調達を最適化するためライフサイクル(構想-研究開発-量産配備-運用維持-廃棄)を通じて管理している。構想段階からニーズを詰めて代替案を分析し、当初のコストから変動があれば見直す。
 防衛産業の競争力強化では、2014年に制定された防衛装備移転三原則により、平和貢献・国際協力の推進や日本の安全保障に資する場合は防衛装備品の移転を認め得ることになっており、「官民防衛産業フォーラム」のような官民一体で防衛装備・技術協力を促進する取組を進めている。防衛装備品の技術基盤の他国への依存はリスクがある。また、防衛装備品の国際共同開発・生産等では情報保全の問題も重要になる。

3、対外有償軍事援助(FMS)
 米国からの防衛装備品の購入は、米国政府が窓口になる対外有償軍事援助の方式を採る。対外有償軍事援助は分割して支払いを行うが、購入費は当初予算から増加する傾向があり、その予算上の圧迫が国内の防衛産業からの調達にも影響を与える。
 日本では、米国国内での調達時期に合わせてまとめて発注したり、大幅な価格の高騰が生じれば購入対象を見直したりするなど、購入費を下げる工夫をしている。

4、おわりに
 諸外国が「ゲームチェンジャー」となり得る新兵器の開発に力を入れ、日本周辺の安全保障環境が変化する中、日本は民生技術を含めた新たな技術を防衛装備品の研究開発に取り込み、厳しい予算の中で如何に国内の防衛産業を強化・維持するかが今後の課題である。日本は防衛装備品の取得を海外の防衛産業の生産のみに頼らず、自主性をもって生産できる体制を維持することが、日本の安全と繁栄を維持するために必要である。

テーマ: 「防衛行政の課題」
講 師: 深山 延暁 氏(前防衛装備庁長官)
日 時: 令和元年9月26日(木)15:00~17:00

第132回
「日米同盟」 ―挑戦と機会―

長野禮子 

 半年ぶりにケビン・メア氏をお招きしての「Chat」である。以下メア氏の主な話を記す。

中国:我が国周辺には中国・ロシア・北朝鮮の脅威が付き纏う。特に尖閣周辺の接続水域を航行する中国海警局の船は連日のように目撃されている。中国は、2030年から35年には、少なくとも350機の第5世代戦闘機を配備する可能性がある。仮にその時点で中国との戦闘を考えた場合、米国だけで対処することは困難であり、日米による共同対処が必要となる。中国の脅威が軍事的、戦略的、経済的にも台頭してきているということの証左である。

香港:6月からの「逃亡犯条例」制定に激しく反対する大規模な抗議活動は、「一国二制度」を揺るがす大問題となっている。10月1日の国慶節(建国記念日)までは、暴力的制圧は控えるが、その後は状況によっては強圧的手段に出る可能性がある。仮に、中国本土の武装警察がデモ参加者に対する暴力的制圧を行った場合、台湾の独立意識が高まることは間違いない。

台湾:香港の大規模デモが「台湾独立運動」に影響し、台湾海峡有事に発展した場合、日米同盟が有効に機能することになる。中国は日米同盟に亀裂を入れたいと常に考えている。米国が台湾有事に対して関与することは、たとえトランプ大統領が躊躇しても、議会が関与を強く求めることになろう。

イラン:辞任したボルトン前大統領補佐官による対イラン政策は正しいやり方であった。米国の核合意離脱は好ましくない。安倍総理がイラン訪問中の6月13日、ホルムズ海峡付近において日本船籍のタンカーが攻撃された。今後、このような出来事に対して日本はどのように対処していくのかはChallenge(難題)であり、日本は中東に石油を依存していることからも大変重要な問題である。日本はこの中東地域における平和と安全に貢献する必要がある。今回の出来事に対しても安倍総理の下では何かしらの貢献が行われるものと信じている。6月20日、イランはホルムズ海峡上空において米軍のグローバルホーク(無人航空機)を撃墜した。これに対してトランプ大統領は何ら反撃をしなかった。この対応は適切ではなく、残念であった。

北朝鮮:今年に入ってから飛翔体(短距離弾道ミサイル等)の発射を繰り返している。これらは国連決議に違反するが、トランプ大統領は問題視していない。その理由は、発射された飛翔体が米国に到達する飛距離を有していないことや来年の大統領選挙に向けた外交成果として、北朝鮮との非核化の合意を達成したいとの意図があるためだ。ボルトン氏の後任は外交安全保障の分野では聞いたことがない人物である。ホワイトハウスは健全な状況ではなく、北朝鮮に対する圧力も低下している。

F-2戦闘機の後継機について:米国の提案は可能な限り日米の最先端技術を用い、最新鋭の第5世代戦闘機を共同開発することである。日米が中国に対して共通の脅威認識(中国は2030年には戦闘機の数量が米国を超える)を持ち、有効に対処する必要がある。F-2後継機は日本のプログラムであるため、その装備は日本が決めることができる。

最後に:以上のことを踏まえ、米国では、安保法制の下で日本の集団的自衛権が認められたため、真の同盟になったと考える人が多くなっている。憲法9条の制約はあるが、従来の盾(防御は自衛隊)と矛(攻撃は米軍)という考え方は変わってきている。これからは何が防衛で何が攻撃かの議論は意味がない。日米同盟はうまく機能しており、米国は超党派で支持している。

テーマ: 「日米同盟」 ―挑戦と機会―
講 師: ケビン・メア 氏(JFSS特別顧問・元米国務省日本部長)
日 時: 令和元年9月24日(火)15:00~17:00

第131回
「日韓関係 ー打開策はあるのか―」
―日本の国家目標、米国の国家目標、韓国の国家目標―

長野禮子 

 今回は有史以来最悪と言われる日韓関係について、統一日報主幹の洪熒氏をお招きし、日本では報道されていない事柄などについて詳しくお話いただいた。
 統一日報は、文在寅大統領と韓国国民が戦う全世界で唯一の新聞である。今の韓国は内戦中で、戦況は最悪の複雑骨折、反日イデオロギーの主体が韓国の操縦室を乗っ取っている。

「反日感情」という誤診と「反日種族主義」の克服:反日感情という言葉は昔からあったが、今は反日イデオロギーである。日米韓の関係を破壊するのが、文大統領の目標である。それを金正恩と習近平が支援している。真実と嘘の戦争が、3年の内戦で次第にその輪郭が明らかになってきた。文在寅、金正恩と習近平による全体主義トライアングルがあり、それに対抗して、その体制では絶対生きたくないという多数の韓国国民による内戦という構図である。日韓関係の診断が間違っていることを理解しなければならない

ロウソク政変(反乱)の結果:法と裁判制度を革命の手段とする法専門家グループが職業革命家たちに服務し、代議制民主政治と三権分立が消滅し、韓国のレジームチェンジが現実化することとなった。文大統領は、反日種族主義を憲法の上に置き、板門店宣言を憲法の上に置く。憲法が禁じる政治的宣言を憲法の上に位置付けるから、法律が機能しない。歴代政権にもよく見られた。

文在寅・金正恩・習近平の全体主義独裁体制 vs 自由主義右派・韓米同盟派の内戦:朝鮮労働党に南北統一の司令塔が出来たのは1966年。彼らの政治的目標は、①韓国の国家保安法の撤廃、②国家情報院の廃止、③駐韓米軍の撤退――である。これを無くせば、韓国は共産主義と戦う術はない。その熾烈な最後の攻勢が行われている。即ち、反日種族主義にエネルギーが注がれ、拡大再生産されるのを如何に抑えて断つかが、戦略戦術的な結論となる。

米中戦争:米中戦争がいかに深刻化しているか。文明の戦争、第3次世界大戦と位置付けることができる。「一つの中国」の否定は、韓半島の「1953年体制」の変更を意味する。韓半島は米中戦争の戦略要衝である。「社会主義を否定」する米国と「社会主義の固守」を宣言する中・朝、それと連帯する文在寅・主思派政権という対立構図である。

日本のメディアは全部フェイクニュース:毎週土曜日に、数万人が韓国で「日本と同盟を結んで、中国と戦おう」とデモをしても、日本ではニュースにならない。香港のデモは報道するが、韓国は反日でなければならないというのが日本メディアの姿勢だ。文大統領は、敵と組んで自国を攻撃する與敵罪で訴えられ続けられている。このことを日本はなぜ報道しないのか。

日韓関係へのビジョン:日韓関係へのエネルギーを未来に向けて発散させる。共産全体主義との文明の戦争を共同で戦い、対中戦争後はアジア大陸の建設で両国が協力。米中戦争は、日韓関係改善のための弥生時代以来の同盟化のチャンスだと信じている。


テーマ: 「日韓関係 ー打開策はあるのか―」
―日本の国家目標、米国の国家目標、韓国の国家目標―
講 師: 洪 熒 氏(元駐日韓国大使館公使・統一日報論説主幹)
日 時: 令和元年7月29日(月)14:00~16:00

第130回
「上海からみた日中関係」

長野禮子 

 今回お招きした片山氏は、世間でいうところのチャイナスクールで、過去35年間に5回の中国勤務を経験、長年に亘って中国を観測してきた人物である。
 尖閣問題、南シナ海における軍拡、米中の貿易摩擦など中国脅威論が叫ばれている中、日中は政治的価値観の共有は難しいが、隣国として付き合っていかなくてはならないというのが基本的認識である。その関係性は歴史上においても深い。実際、日中間の経済関係は緊密になり、留学や観光目的で来日する中国人も年々増加している。共産党政府を信頼していない中国国民はあらゆるコネを通じて海外に資産の分配を図っている。日本にもその波が押し寄せて久しい。そこに中国人の悲哀と強さがあるのも事実である。
 米中が戦略的な対立構造に入っていく中、中国から見た日本の価値が高まっているとも言えるが、尖閣諸島周辺の接続水域では連続数十日に亘る中国海警局の船舶が航行しているのも現実である。
 今回は、片山氏の長年の経験に基づいた中国観、更に、滞在する日本人の人口がイギリスに次いで5番目となった上海から見た日中関係が説得力を持って展開された。高杉晋作や五代友厚などが上海を訪れ、アヘン戦争後に清が欧米の植民地となりつつある現状を見て危機感を募らせ、それが明治維新の原動力となった。
 孫子曰く「彼を知り己を知れば百戦殆ふからず」。日本は等身大の中国を理解した上で、中国に一目置かれる存在であり続け、中国を凌ぐ日本独自の強み活かし、中国との差別化を図ることによって世界に貢献していくことが重要である、と氏は語る。

テーマ: 「上海からみた日中関係」
講 師: 片山 和之 氏(外務省研究所長・前上海総領事)
日 時: 令和元年7月11日(木)15:00~17:00

第129回
「日本の安全保障と自衛隊」

長野禮子 

 今回の「Chat」は、この春退官したばかりの前統合幕僚長、現在は防衛省顧問の河野克俊氏をお招きした。河野氏のお話は、対中国、対北朝鮮、日韓関係、憲法と多岐に亘った。
 対中国について:米国の対中姿勢硬化は、ベトナムなどの周辺諸国の中国に対する恐怖感を強めている。日中関係は現在、政治レベルでは改善に向かっていると言われるものの、中国海警局の公船は64日間連続して領海侵入や接続水域での航行を繰り返し、現場では依然厳しい状況が続いている。この海域での中国公船による活動が増大したのは野田政権による国有化後だが、当時の民主党政権は中国への刺激を怖れ周辺海域を航行するのはもっぱら海上保安庁の艦船のみ。安倍政権に変わってからその方針は変更され、海上自衛隊の艦船も積極的に巡回している。
 対北朝鮮について:北朝鮮は、核兵器及び弾道ミサイルの開発を継続しており、これらの問題は何も解決には至っていない。2017年に大陸間弾道ミサイルの発射を連続して行い、グアム島周辺海域に向けて弾道ミサイルの発射を表明。日本は、我が国上空を通過する軌道線上に位置する場所(島根、広島、愛媛及び高知)に地対空ミサイルPAC‐3を配置。更にイージス・アショアの配備が秋田県及び山口県において進められている。これにより、弾道ミサイルの攻撃に対し切れ目のない防衛体制を構築することが可能となる。
 トランプ大統領は、米国及び同盟国を攻撃すれば、北朝鮮を完全に破壊すると発言した。ハリー・ハリス太平洋軍司令官(当時)も同様の発言をし、北朝鮮への圧力を強化した。朝鮮半島及び周辺海域には戦略爆撃機や空母等が展開され、米国は北朝鮮の出方次第によっては全てのオプションを排除しないことを強調。
 日韓関係について:在任中、国際観艦式での旭日旗掲揚問題やレーダー照射などの問題が発生した。これらの問題に対して、韓国は居丈高。誠意ある対応は見られなかった。レーダー照射については、事実を明らかにする必要性から映像を公開することにした。
 憲法問題について:自衛官の中でも様々な立場があると前置きした上で、自衛隊が活動する為には、憲法との整合性を取ることは不可欠であり、自衛隊の根拠規定が明確になるべきとの意見に賛成であるとの見解を示した。憲法は時代の変遷によって適切な内容に改正すべきであり、実際に諸外国では憲法改正が繰り返されている。現状のままでは解釈論議は永久にくすぶり続ける。この議論に終止符を打つべきであると強調。
 河野氏は防大時代を含め46年間、自衛官としてその身を捧げ、国防のために尽力してこられた。安倍首相の信頼厚く、統幕長としては4年半、海幕長時代を合わせると7年という長きに亘り日本の安全保障のトップとしてその任務を担ってきた将軍である。今回はその経験に裏打ちされた説得力のある議論が展開された。
 海外でも「ドラえもん」の愛称で親しまれた河野氏は、これまでそのポケットから数々の解決策を講じ、日米同盟の深化と日本の防衛を担ってきた。今後も防衛省顧問としてその力を存分に発揮して下さることだろう。

テーマ: 「日本の安全保障と自衛隊」
講 師: 河野 克俊 氏(前統合幕僚長)
日 時: 令和元年6月19日(水)14:00~16:00

第128回
「現在の東アジア情勢」

長野禮子 

 令和の御代に入り1ヵ月が過ぎようとしているこの日、米国からJFSS特別顧問のアワー氏をお招きしての「Chat」である。主な内容を下記に記す。

1.パワー・ポリティクス(武力による外交政治)における安定性と不安定性
 安定性は、力のバランスが良いときに生じる。ソ連崩壊に伴い、米ソ間における冷戦構造も崩れた。その後ロシア連邦が創設されたが、国内は混乱し、経済力は弱まり、ソ連に属していた国々は次々に独立した。東側諸国と呼ばれたソ連の衛星国もその支配から離れた。そのため軍事力は縮小し、超大国の地位を失った。冷戦の終結により、米国が世界の超大国として存在し、国際社会の安定が継続した。
 不安定性は、強力な軍事力を持っていなかった国が、国力が増すに従い軍事力を拡大し、世界覇権を画策することによって、国際社会に不安定な状況を引き起こす。冷戦期のソ連や今日の中国の台頭などがそれである。

2.中国への好意と経済的利益で生じた大きな間違い
 米国等は、中国が国際社会の一員として既存の国際ルールや国際秩序に従って発展するものと考え、責任あるステークホルダー(利害関係者)になることを期待した。特に米国は、中国のWTO(世界貿易機構)加盟を支持し、自由貿易、関税の低減等の国際通商ルールの枠組みの中で、中国の貿易を推進するために自国の市場を開放し、物品や情報の自由な取引を認めた。
 しかし、中国は国際ルール等を無視して、米国をはじめ先進国から技術や情報の移転を強要し、知的財産権を窃取することを繰り返した。特に、それにより取得したインターネットテクノロジーや最先端技術を利用して、米国等に頻繁にサイバー攻撃を仕掛けている。中国は、米国に比肩する大国になることを望み、パワー・ポリティクスにより覇権・拡張政策を進め、国際社会における支配力を推し進めている。更に、中国は、既存の国際秩序を弱体化させ、中国を中心とする国際社会の構築を目論んでいる。

3.中国は5つの「核心的利益」を決して諦めることはない
(1)台湾の平和的再統一:目的達成のためには軍事力を含むあらゆる選択肢を否定していない。
(2)チベット自治区:独立や反中を唱える多くのチベット人に対する民族弾圧を強行。中国・チベット間の鉄道敷設後からは、大量の中国人が流入、街の至る所に中国の警備員が立ち監視している。
(3)東トルクメニスタン:ウイグル人に対する激しい民族弾圧が行われ、収容所内では厳しい思想改造が行われている。
(4)南シナ海の実効支配:南沙諸島領域に人工島を建設し、軍事基地化した。その行為は、南沙諸島等の領有権を争う周辺諸国の脅威になっており、公海である南シナ海を航行する他国の船舶に対して不安を与えている。
(5)尖閣諸島:特に日本が尖閣諸島を国有化した後の接続水域及び領海侵入の頻度は高まる一方である。日米安保条約に基づく尖閣諸島防衛については、有事の対応には自衛隊が出撃し、米軍はそれを支援するのが好ましい。日本の無人島防衛のために米兵に犠牲を強いることについては、米国民の支持は得られ難い。

4.中国の政治戦
(1)台湾の孤立化:一つの中国という立場から、台湾は中国の不可分の領土であり、統一されるべきであると考えている。中国は、国際社会における台湾の孤立化を謀り、あらゆる政治工作を行っている。
(2)日米同盟の弱体化:日米間の強い絆に動揺を与え、両国の密接な関係を切り離すことを目的として、日米それぞれに対し政治的な働きかけを実施している。
(3)沖縄などでの政治的策動(核兵器に対する恐怖心の植え付け、日米同盟の信頼性を破壊):沖縄等において反米的な活動家を支援。沖縄の地元新聞が反米的な論調であるのに対し、辺野古の地元民がキャンプシュワブ(辺野古にある海兵隊基地)の米兵を友人であると言っている。そのほか、原子力の恐怖を煽ったり、米国の同盟国としての信頼を損ねたりすることも目的にしている。

5.日・米・台による中国の政治戦争に対抗するための4つの手段
(1)TTTST(transit the Taiwan Strait together)の共同訓練を実行する。海上自衛隊及び米海軍の艦艇が共同で台湾海峡を通過する(台湾海峡は公海であり、通過することに中国の許可は不要)。
(2)日米首脳は、台湾を国家として待遇する。
(3)米軍と自衛隊は合同司令部を設立する。
(4)石油、ガス、原子力に関するエネルギー戦略を打ち立てる。

テーマ: 「現在の東アジア情勢」
講 師: ジェームス E・アワー 氏(JFSS特別顧問・米ヴァンダービルト大学名誉教授)
日 時: 令和元年5月31日(金)14:00~16:00

第127回
「韓国と中国の宇宙戦略」

長野禮子 

 今回は、韓国から韓国航空宇宙政策法学会名誉会長の金斗煥氏をお招きし、韓国と中国の宇宙開発についてお話いただいた。
 本年2月の米朝首脳会談決裂後の5月4日、韓国軍合同参謀本部は、北朝鮮が北朝鮮東岸の元山に近い虎島から複数の飛翔体を発射したと報じた。米朝会談が行き詰り、制裁緩和が実現しない中での北朝鮮による米国への牽制と受け取る向きもあるようだ。
 そうした中で、日本の周辺諸国は宇宙開発に邁進している。特に中国は月ロケットの打ち上げや、電磁パルス攻撃システム(EMP)をはじめとする衛星攻撃兵器の開発をし、宇宙分野にさらなる進出を行っている。中国の動きは、平和利用という建前ではあるが、軍事的な要素を含んでいることは言うまでもない。
 韓国の宇宙法の権威であり、中国でも教鞭を取る金斗煥博士の話は、周辺諸国の宇宙開発に対する現状と問題点を鋭く指摘するものであった。先日発表された「防衛計画の大綱(防衛大綱)」や「中期防衛力整備計画(中期防)」は、宇宙、サイバー、電磁波などの新しい分野における多次元統合防衛力の構築を謳っており、周辺国の宇宙開発の現状は日本にとっても他人事ではない。
 質疑応答では今回のテーマとは別に、日韓に横たわる諸問題についても議論された。金氏は両国の未来志向的解決を望んでいるが、ボールは韓国にある。韓国の誠意が見られない今、最悪と言われる現在の状況を改善に導く妙策は見出せない。

テーマ: 「韓国と中国の宇宙戦略」
講 師: 金斗煥氏(韓国航空宇宙政策法学会名誉会長・法学博士)
日 時: 令和元年5月24日(金)14:00~16:00

第126回
「現状と挑戦」

長野禮子 

 平成最後の桜花を楽しみ、ゆく春を惜しむ・・・今年は5月からの新しい時代の始まりを前に、特別な想いで過ごす方も多いことだろう。今回は、特別顧問のケビン・メア氏をお招きし、お話を伺う。以下、要点を記し、報告とする。

現状
1、北朝鮮情勢
・ 北朝鮮と米国では、「非核化」の定義が異なっている。
・ 北朝鮮核問題で警戒しなくてはいけないのは、ミサイルの射程距離ではなく、ミサイル搭載可能な核弾頭の開発に成功するかどうか。
2、韓国情勢
・ 文政権になり、在韓米軍を韓国防衛にしか使えないように制限されつつある。
  ⇒そうなっては、韓国に駐留している意味はない。
・ 在韓米軍が撤退する可能性は低いが、ないとは言えない。
  ⇒米国としては、撤退後にどこに配置するのかを考える必要がある。
・ 文大統領は、北朝鮮との交渉の軸になりたいと同時に、平和政策の宣伝も望んでいる。
3、日米関係
・ 日米同盟の存在により、米軍の前方展開戦略が成り立っている。
・ 安倍首相はトランプ大統領を制御出来る存在である。それゆえ、米朝首脳会談が不調に終わった今、日本の役割の重要性が増している。

挑戦
1、トランプ政権
・ 同盟関係は外交・安全保障の実務家同士の関係が上手くいっているので、問題はない。
・ ロシアゲートについての特別検察官報告は出たが、民主党のトランプ大統領に対する追及は選挙まで続く。その間、トランプ政権は、新しいことにチャレンジ出来ないだろう。
2、日本
・ 日本には主権抑止(Sovereign Deterrence)が必要。
・ 自力で日本を守れるようにする必要がある。
・ スタンドオフ能力の獲得を打ち出した31中期防や30大綱の方向性は正しい。
・ 日本の防衛産業は、グローバル市場に打って出る必要がある。しかし、武器輸出には兵器の認証や輸出手続きなど、複雑な手続きがあるので、政府の後押しが欠かせない。
3、日米関係
・ 集団的自衛権行使容認によって、米国内では日本を真の同盟国と見なすようになった。
・ 米軍の前方展開戦略において、日本は重要だが、トランプ大統領自身はそれを理解していない。今後、責任分担(駐留米軍の費用負担)で摩擦が生じる可能性がある。
・ 中国に対抗するためには、統合性とネットワーク性が重要。武器の共同開発では、日本の企業もそれを提案する必要がある。

 2月末の2回目の米朝首脳会談は物別れに終わり、朝鮮半島の非核化は遠のき、文在寅大統領の親北政策の先にあった南北統一の思惑は崩れた。金正恩委員長は4月10日、制裁への対抗姿勢を強め経済の「自力更生」を表明。更に「敵対勢力に深刻な打撃を与えなければならない」と主張。民主主義国家の進める朝鮮半島の非核化、文大統領の進める南北統一は夢のまた夢となった。
 朝鮮半島情勢が再び不安定な状況になりつつある今、日米の連携の更なる強化はもとより、中露との駆け引きなど、我が国の果たすべき安全保障面での役割は益々重要なものとなる。


テーマ: 「現状と挑戦」
講 師: ケビン・メア 氏(JFSS特別顧問・元米国務省日本部長)
日 時: 平成31年3月28日(木)14:00~16:00

第125回
「米中朝とどう向き合うか」

長野禮子 

 今回は元駐米大使の藤崎一郎氏をお招きして、お話を伺う。以下要点を記す。尚、出席者の大使経験者からも多くの有益な発言をお聞きすることができ、充実した会となる。

第2回米朝首脳会談の4つのシナリオ
1、トランプ大統領が金正恩総書記に、昨年6月の米朝合意の履行を迫る。
2、北朝鮮の非核化の進展が見えないまま制裁を解除する。
3、核・ミサイル発射実験中止、国際社会の制裁を維持しながら協議する。
4、物別れに終わる。
 日本にとっては3番目がよいが、2番目のシナリオになる可能性が高いのではないかと懸念する。日本は拉致問題を抱えている。核・ミサイル問題は、1億2000万の日本人の命がかかっている。大きな問題である。

北朝鮮がアメリカを信用するとは考えにくい
1、北朝鮮(金正恩)がカダフィやサダムフセインの末路を意識していない訳はない。
2、米国が米朝合意を守るという保証はどこにもない。
3、北朝鮮は米国との平和条約や安全保障に期待している訳ではない。
4、北朝鮮は多額の経済支援と有利な取引がない限り、核廃棄するとは考えにくい。
 金日成・金正日も、時間稼ぎをしながら着々と核・ミサイル開発を進めてきた。 

制裁解除を焦る北朝鮮
 北朝鮮の本音は安全保障より経済協力。北の焦りが明らかである一方で、トランプ氏が成果を意識しすぎることが問題である。交渉はトランプ氏でカネを出すのは韓国と日本だと言っている。クリントンがやったKEDOと全く同じ。北も最終的に出て来るのは日本だと理解している。日本は待っていればいいのではないか。

 北朝鮮の開放経済路線には限度がある。一番のネックは、北朝鮮に韓国、中国、日本が入ると、その影響下で今の国家体制を維持することは困難だということ。金正恩の正統性の根拠は何かといえば、金日成の孫であり、金正日の息子であるということである。中国のリーダーとは全く違い正統性の根拠を失う。従って、開放せずに、このまま核に執着し、時間を費やしていくことになろう。

中国の問題
 今一番の問題の根源は、鄧小平にある。一党独裁と市場経済、全く相容れないものを2つ同時にやろうとした。その結果、「先富論」を導入したが、現実はそうはならず、共産党の一部の人だけが恵まれ、とんでもない格差社会を共産主義社会に作ってしまった。トップの人々は、それをよく理解しているため、ナショナリズムを高揚する必要がある。そこでアメリカや日本を叩いたり、南シナ海を核心的利益としたり、軍拡を進めたり、内部のハエやトラを叩いて反腐敗運動などで人気を集めようとする。内外に敵を作ることで、国民の不満を吸収するという従来のやり方は、危なっかしい積み木が小さな刺激でガラガラと崩れ落ちる様を彷彿させる。中国の時代が来るとは思えない。

日露交渉について
日露交渉をすること自体は正しい。それには4つの条件が必要。
1、プーチン大統領の任期は2024年までだが、まだ強い。
2、日本では安倍首相が強い。
3、安倍・プーチンの関係。
4、ロシアはクリミア、ウクライナ問題等で孤立している。
 以上であれば、日露交渉も少し動くかもしれず、この間に進展させたいという思いはある。しかし、日本国民が目指す成果に繋がらなければ、お互いが満足できる交渉ができるまで交渉を続けるか、サスペンドすればいいことである。

トランプ政権で変化する米国
1、アメリカは表現の自由、民主主義、人権等の伝道者であったが、チャンピオンではなくなってしまいつつある。
2、国際機関に対する態度として、国連やWTOも古臭くなっているのは事実だが、刷新されるまでは従来通りで行こうという姿勢が足りない。
3、同盟国に対する姿勢として、日本は安倍―トランプの人間関係で助かっているとはいえ、やはり同盟の関係が足りないのではないかという感じがする。「情けは人の為ならず」というところは折に触れて行っていく必要があるのではないか。
(平成31年2月25日)



テーマ: 「米中朝とどう向き合うか」
講 師: 藤崎 一郎 氏(JFSS顧問・元米国駐箚特命全権大使)
日 時: 平成31年2月18日(月)15:00~17:00

第124回
「レーダー照射問題」
―シギントとエリント情報の視点から詳細に分析―

長野禮子 

 日本と韓国の間には、これまで歴史問題、慰安婦問題、竹島の不法占拠、旭日旗の排斥、戦時労働者、所謂「徴用工」訴訟、そして昨年12月20日の日本のEEZ内(能登半島沖)で韓国の駆逐艦「広開土大王」(クヮンゲト・デワン)による海自P1哨戒機への火器管制レーダー照射と、重たい問題が横たわっている。「照射」に対する日韓の主張は真っ向から対立、日本側は映像や音を公開したが韓国側はこれを認めず、日本への抗議が続いている。今回の講師、西村氏は韓国駆逐艦が発したレーダーの種類やレーダー波の特徴を図で示し詳しく説明、後の質疑応答では出席者からの質問と経験による深い洞察や推測が多く出た。 
 そもそも何故あの場所に3隻(北朝鮮の木造船・韓国の駆逐艦と警備艇)が同時に存在したのか、安全保障上の協力関係にある韓国海軍が何故海自の哨戒機に照射したのか、日本側の低高度飛行が威嚇行為であるとする苦しい言い逃れをしなければならない理由は一体何なのか、未だ判然としない。明白なのは、韓国にとっての日本は日米韓の直接、間接の同盟国ではなく、最早「敵」なのではないかということ。俗っぽく言えば、政略結婚してみたが、やっぱり日本は嫌いということがこの「照射」事件で露わになったということか。
 親北政策を加速している文在寅大統領の思惑が現実となり、南北統一が成されれば、核・弾道ミサイルを保有した170万の兵を持つ世界第1位の軍事力となるそうだ。そしてその矛先は、日本である。対する日本の戦略はあるのかと、西村氏は危惧する。
 1月28日、韓国国防省報道官は2月に予定していた海軍幹部の訪日延期を発表。防衛省は4月末から韓国で始まるASEANの拡大国防会議(ADMMプラス)に合わせた海自護衛艦の派遣中止を検討している。先述した日韓間の諸問題は、年月をかけて真摯に向き合い理解と信頼を深めてきたはずだが、それはいたずらに不毛な時を費やしただけなのか。両国の防衛交流まで難しい状況にある今、未来志向型の関係とは最早言い難い。その根っこには「歴史問題があるからだ」としたり顔で話す韓国人ジャーナリストを報道番組で見たことがあるが、全く次元の違う事柄を「歴史問題」を持ち出し、現実を直視しようとしないのは、韓国の国民性なのだろうか。
 「照射」問題についての二国間協議を防衛省は2回で中止した。日韓間は過去最悪の状況にあると言われ、防衛省や政府内にも「韓国疲れ」が広がっているというが、私たち国民もまた、韓国とは「まともな話ができない国」との印象を一層強くしたのではあるまいか。

テーマ: 「レーダー照射問題」
―シギントとエリント情報の視点から詳細に分析―
講 師: 西村 金一 氏(JFSS政策提言委員・元陸自幹部学校戦略教官)
日 時: 平成31年1月29日(火)14:00~16:00

第123回
「沖縄県民投票についての考察
過去の国家権力への挑戦との比較と課題」

テーマ: 「沖縄県民投票についての考察
過去の国家権力への挑戦との比較と課題」
講 師: ロバート・D・エルドリッヂ 氏(JFSS上席研究員・政治学博士・元在沖縄海兵隊政務外交部次長)
日 時: 平成30年12月11日(火)15:30~17:00

第122回
「中国の対アメリカ政治闘争」

テーマ: 「中国の対アメリカ政治闘争」
講 師: トシヨシハラ 氏(米海軍大学教授)
通 訳: 古森義久 氏(JFSS顧問・麗澤大学特別教授)
日 時: 平成30年11月20日(火)14:00~16:00

第121回
「米中間選挙後の米国の行方を読み解く」

長野禮子 

11月6日に行われた米国の中間選挙の結果、上院は共和党が過半数を取り、下院は民主党が約30議席の差をつけて勝利した。共和党の敗因は、一言で言えばトランプ大統領に対する反発であり、特に無党派層による反発が多くの人を投票に向かわせたことにある。

・敗因理由1――トランプ政権が、オバマ・ケア(米国版医療保険制度)の廃止を目指していることである。

・敗因理由2――移民政策である。TV報道などで、国境警備員等による不法移民の家族に対する(親子を引き離して拘留するなどの)衝撃的な場面を目にし、多くの人々の反発を買った。

・敗因理由3――トランプ大統領の減税政策は、法人税の大幅カットと個人所得税の減税に向けた制度の簡素化が中心だが、これは、企業や富裕層には有利な反面、中間層や低所得者には直接の恩恵がない。

・敗因理由4――トランプ大統領の人種差別主義に対する対応、つまり白人至上主義団体(KKK:クー・クラックス・クラン)と反対者との衝突で、KKKを一方的に非難しない発言や、同団体やネオナチ集団がトランプ大統領の誕生を歓迎したり、一方、中南米やアフリカ諸国をシットホール(肥溜め)と発言した記事が影響した。

・下院の民主党勝利について――田舎対都会の戦いになっていた。結果、下院で民主党が多数を占めたため、下院の各委員会の委員長は民主党議員が任命されることになる。各委員会は、トランプ政権の閣僚、高官等を証人として呼び出し、各政策の是非を厳しく問い質すことになる可能性が高まる。トランプ大統領はこの状況を恐れている。

・上下両院の今後――議会はこれまで共和党が上下両院の多数を占めていたため、トランプ大統領の政策を表立って反対することはなかったが、民主主義の根幹である三権分立が機能していなかった。下院の民主党勝利により、今後はその機能が働くことになる。しかし、日本の野党のように「何でも反対」では国の機能が停滞し、無党派層を含め支持を失うことでもある。ここが民主党の頭痛のタネとなっている。

・トランプ大統領の弾劾について――手続き上、弾劾は困難。ロシア疑惑の捜査においても確証的な証拠が出ない限り、弾劾には積極的ではないと考えられる。

・日米同盟について――米国の東アジア政策の中で超党派的な支持を得ており、中間選挙の結果に関わらず、今後も十分に機能して行く。

・中朝露はどう見ているか――官僚制度は安定しており強力である。特に国防総省は時々の政権に影響されず安定的に機能している。軍、特に海兵隊の政治的影響力は強いものがある。他方、韓国の文大統領の北朝鮮政策について懸念している。最悪のシナリオは、駐韓米軍が十分に機能できない状況が生じることである。

・対中政策について――ペンス副大統領の講演に示されるように、貿易不均衡、知的財産の窃盗、南シナ海の軍事化等に対して厳しく対応している。日本や欧州に適用するのは正しくない。貿易問題では、米国の大豆農家などのようにその収益を輸出に依存している面もあることから、その点の配慮も必要である。

・日米同盟の課題――安倍政権による集団的自衛権の行使容認は米国で大変歓迎されている。日米は真の同盟関係に進展した。日本側の課題は、防衛予算の増加であり、3%の増額が理想的である。中朝の脅威に対する抑止には、陸上イージスやサードの早期導入が必要である。日本は、自衛の先制攻撃は憲法上問題ない。日本が独自に反撃能力を持てば抑止力が働き、北朝鮮からの攻撃のリスクは減る。中国に対する抑止力を高める観点からも、反撃能力は必要であり、特に地対艦の射程の延長や空対地の能力が重要である。

・F-2後継機について――F-2戦闘機は、2030年から耐用年数を超えるため、その後継機の導入方法が検討されてきたが、日本政府は共同開発も含めた新規開発を行うことに決定したとの報道があった。メア氏は、後継機の導入に当たって、次の点を強調した。
①高コストの抑制や防衛産業の技術力向上を考慮して、国内市場(防衛省)に限らず、戦略的に国際市場に出すことを考えるべき。中国は第5世代戦闘機の運用を開始した。中国の脅威に対処するためには早期導入が必要。更に、反撃能力、互換性等を考えれば、米国のF-22戦闘機とF-35戦闘機をベースにして日米による共同開発を行うべき。


テーマ: 「米中間選挙後の米国の行方を読み解く」
講 師: ケビン・メア 氏(JFSS特別顧問・元米国務省日本部長)
日 時: 平成30年11月15日(木)14:00~16:00

第120回
「トランプ政権と国家安全保障へのチャレンジ」

長野禮子 

 今回の「Chat」はJFSS顧問・産経新聞ワシントン駐在客員特派員の古森義久氏のご紹介で、ハドソン研究所上席副所長のルイス・リヴィ氏をお迎えした。
10月4日の、ハドソン研究所でのペンス副大統領の、所謂、米国の対中政策の大転換を宣言した演説について、本日はその貴重な講演の内容と共に、今後の米国の対中政策のより具体的なお話や、報道されていない事柄もお聞きした。
 日本政府もほぼ時を同じくして、10月26日、安倍首相の訪中による日中首脳会談で、40年にも及ぶ中国へのODAの終わりを、やっと宣言した。古森氏が2000年に出版した『北京報道700日』でも指摘しているように、「日中友好」とは何だったのか、「刺激をしない」日中外交とは何だったのか。これまでの多くの時間、大地にしっかりとした根を下ろすことなく、実体のない「友好」という虚構の世界を彷徨ってきたような気がする。気付いた時には、日本のあちこちに中国人村ができ、領土を盗られる危険に毎日曝されている。「友好」政策の大失敗がここに露呈し、認めたということか。日米の中国に対する共通認識を大きなテコとし、今後二度とこのような「罠」にかからない健全な国家運営をしてもらいたい。
 今回のルイス・リヴィ氏の講演内容はオフレコでということで、公表できないことをご了承いただきたい。

テーマ: 「トランプ政権と国家安全保障へのチャレンジ」
講 師: ルイス・リヴィ 氏(ハドソン研究所上席副所長)
通 訳: 古森義久 氏(JFSS顧問・産経新聞ワシントン駐在客員特派員)
日 時: 平成30年10月29日(月)14:30~16:30

第119回
「中間選挙を控えた米国の現状と課題」

長野禮子 

以下、今回のアワー氏の講演内容を簡単に記す。

・話題の『恐怖:ホワイトハウスのトランプ(Fear: Trump in the White House)』について――センセーショナル(扇情的)、完全なミスリーディング及びケイオス(混沌)と表現し、内容については極めて批判的であった。マティス国防長官・ケリー大統領首席補佐官の発言も引用され、トランプ大統領は小学生程度の理解力しかないなど、まるで馬鹿呼ばわりしていると。米国のマスメディアとトランプ氏の対立関係が本の内容を無意味に煽っていると指摘。

・トランプ大統領とオバマ前大統領との比較――オバマ氏については、2008年の大統領選挙において初の黒人大統領として大いに期待されたが、2期8年後の大統領選挙では、経済の停滞と軍事面における対策、兵員の減少や装備の老朽化に対する適切な対応が取れなかったための失望感がオバマ政権への信頼を失うことになった。このことがオバマ政権を引き継ぐクリントン候補の敗因となった。多くの米国民はトランプ大統領の誕生を喜び、特に、経済面と軍事面における政権運営は支持できるとの考えを示した。

・トランプ大統領の発言に対する「弾劾」について――弾劾訴追の権限は下院にあり、現在の下院は共和党が過半数を占めているため、弾劾訴追されることはない。しかし、今年(2018年11月6日)の中間選挙で、民主党が過半数を得れば、弾劾訴追が可能になる。上院はその訴追に基づき弾劾裁判を行い、3分の2以上の賛成により大統領を罷免できるが、上院も共和党が過半数を占めているので、今回の中間選挙では3分の1が改選となる。仮に大統領が罷免されれば、ペンス副大統領が大統領に就任することになるので、大きな状況の変化はない。

・トランプ政権の景気対策――経済成長率4%上昇。減税政策により労働者の賃金が上昇し、失業率も減少、軍事予算も増加している。2020年の大統領選挙は、共和党に対抗する民主党候補がいないことが問題。

・トランプ大統領の外交政策について――イランに対して相当厳しく対応している。イランとの核合意から離脱し対立を強めている。NATO諸国に対する防衛費の更なる拠出を求めており、現状に強い不満を示している。保護主義を進める観点から、WTOが米国を不公平に扱っているとし離脱を警告。中国の対米貿易黒字を激しく批判、過激な貿易戦争の真っ最中である。日本の安倍首相に対する信頼は篤いが、貿易政策ではヨーロッパ、カナダ、メキシコとの自由貿易協定の締結を求めており、日本に対しても2国間協定の締結を求めている。

・交戦規定(ROE)の緩和について――オバマ政権時代に設けられた交戦規定を緩和し、解除することで、現地司令官の裁量権が広がることは歓迎すべきことである。「軍事力」が弱いことは危険を招く。トランプ大統領が軍事力の強化を重視しているのは、米国を危険から回避させることである。トランプ政権は、対台湾政策を重視し、台湾を支持している。


テーマ: 「中間選挙を控えた米国の現状と課題」
講 師: ジェームスE・アワー 氏(JFSS特別顧問・米ヴァンダービルト大学名誉教授)
通 訳: 川村純彦氏(JFSS理事・元統幕学校副校長)
日 時: 平成30年9月21日(金)14:00~16:00

第118回
『平成30年版防衛白書』の説明会を聞く

長野禮子 

 今回初めての試みとして、「ネットCM」を作成し、「Kindle」、「楽天Kobo」、などの民間電子書籍市場にも配信され、誰でも無料で見ることができるようになった。また、AR動画を活用し、無料アプリをダウンロードして、ARのページに行くと、そのまま動画を見ることができるという試みも行っているということだ。

 巻頭特集の「防衛この1年」では、弾道ミサイル防衛、24時間365日の任務を自衛隊の各種任務、防衛力整備の主要事業、南西地域の防衛態勢の強化ということで、「スタンド・オフ・ミサイル」などを紹介した。また、陸上自衛隊創隊以来の大改革としての陸上総隊を新編したことにも触れている。本編では、「国際情勢」、「わが国の安全保障・防衛法制と日米同盟」、「様々な自衛隊の活動と取り組み」を三部構成で紹介している。
 
 我が国周辺国の動きとしては、
北朝鮮:米朝首脳会談や、南北首脳会談が継続的に模索され融和ムードが演出される中、依然として我が国のほぼ全域を射程に収めるミサイルを数百発保有・実戦配備していることや、核・ミサイル開発のこれまでの経緯を踏まえると、現在も北朝鮮の脅威に対する基本的認識に変化はない。
中国:2035年までに軍近代化を基本的に実現し、21世紀中葉までに中国軍を世界一流の軍隊にするという目標を掲げており、近代化に自信を持ちつつある。海警が国務院から中央軍事委員会の指揮下に編入され、より軍との繋がりが強くなるという組織改編があった。海警と海軍の連携による活動の一方的なエスカレーションに更に注目する必要があろう。
ロシア:大規模演習「ボストーク2018」を実施し、北方領土(択捉島、国後島)への地対艦ミサイル配備を公表するなど、我が国周辺を含め軍事活動を活発化させる傾向がある。
サイバー空間:他国部隊の妨害やインフラの破壊のため、軍としてサイバー攻撃能力を強化している。諸外国に対するサイバー攻撃が多発しており、ロシア、中国、北朝鮮などの関与が指摘されている。
宇宙空間:キラー衛星(対衛生攻撃のため)の打ち上げ実験を実施し、米国では宇宙軍を創設する動きがある。

 これらに対処するため、防衛省・自衛隊も平成30年度の防衛力整備として、「イージス・アショア」、「スタンド・オフ・ミサイル」、「F-35A」、「護衛艦(新型)・潜水艦」、「SM-3ブロックⅡA」を増強し、サイバー防衛隊も拡充した。

 以上、防衛白書を概観すると、台湾に関する記述が少ないことや、専守防衛という概念に未だ取りつかれていることに疑念を抱く。中国の戦闘機は、かつては南シナ海には出てこなかったが、現在は、自衛隊機の3倍程の最新鋭戦闘機を有し、10年後は自衛隊機の5~6倍になり、それにロシアや北朝鮮の脅威が加わることになる。この3ヵ国の脅威が1つになることも想定しなければならない。その脅威は計り知れない。
 これらの現実を踏まえながらも、未だ「専守防衛」という言葉が随所に散りばめられている。現状のままだと大きな矛盾を抱えながらの安全保障政策を続けることになる。我が国周辺の安全保障環境が厳しさを増している今こそ、好機と捉え見直しの議論を進めてもらいたいものである。
 一方、国民世論とどう向き合っていくかも、我が国の安全保障政策において重要な課題である。一例を挙げれば、イージス・アショア配備について反対世論が表面化したが、これは、北朝鮮だけでなく中国の弾道ミサイルも我が国に向けられていることを大多数の国民が知らないからである。防衛省が発信しない、マスコミも報道しない、結果、国民は知る由もないという構図があるからだ。反対世論が活発になる遠因が防衛白書にないとも言えなくはない。周辺諸国の脅威に対する国民の意識も変わりつつある。客観的事実を明確に伝え、理解を深めることが急務ではないだろうか。 
  
 巻末資料には、「平和を仕事にする―自衛隊員である誇りと使命を胸に―」とある。少子高齢化による自衛隊員の募集環境も厳しく、隊員の育児、介護の問題も大きな課題となっている一方で、厳しい現実に任務が増える傾向が続く中、今後の人的基盤をどうしていくか。我が国の安全保障をAIや外国人に依存する日も近いのかもしれない。

テーマ: 『平成30年版防衛白書』の説明会を聞く
講 師: 倉内 康治 氏(防衛省大臣官房審議官)
日 時: 平成30年9月20日(木)14:00~16:00

第117回
「日本の有事」
―国はどうする?あなたはどうする?だからこそ日本強靭化宣言―

長野禮子 

 今回は渡部氏の3作目の著書の紹介をかねた「Chat」である。本のタイトルが物語るように、正に「有事の時、国はどうするのか?」、「危機管理態勢は?」、「陸海空のグレーゾーン事態対処は完璧なのか?」、「国民はどう受け止め、どう行動するのか?」、「自分たちの国は自分たちで守る心構えはあるのか?」・・・
 「自衛隊頼み」だけでは国は救えないという現実を理解する上で必読の書となろう。

 *ここに本書の章立てを紹介する。
  第1章:日本の危機管理組織と国民保護
  第2章:北朝鮮――現実的脅威の正体
  第3章:韓国――揺れ動く不可解な“隣人”
  第4章:中国――戦わずして、世界最強国家を目指す
  第5章:グレーゾーン事態への対処――対応に苦慮する現実
  第6章:複合自体対処――2020東京オリンピックのケース
  第7章:あるべき危機管理態勢

 正に「国難」と言われている今、この山積する多くの問題にどうすればこの日本を守り、国家、国民の安寧を享受できるか、白熱した質疑応答が行われた。

テーマ: 「日本の有事」
―国はどうする?あなたはどうする?だからこそ日本強靭化宣言―
講 師: 渡部 悦和 氏(JFSS政策提言委員・元陸自東部方面総監)
日 時: 平成30年8月31日(金)15:00~17:00

第116回
「我が国の政策や安全保障を脅かすサイバー諜報活動の実態とその対処例」

長野禮子 

 我が国に対するサイバー攻撃のうち、標的型サイバー攻撃、特にサイバーエスピオナージ(サイバー諜報活動、サイバースパイ活動)については、攻撃・被害実態把握の困難さもあり、どのような攻撃がなされているか状況把握が困難である。一方で、海外セキュリティ会社などによるレポートによれば、日本へのサイバーエスピオナージは途切れることなく行われているとされ、日本に対するサイバーエスピオナージを行う攻撃者は「ステートスポンサード」と呼ばれる、国家を背景とした攻撃者によるものとされている。
 日本に対するサイバーエスピオナージにおける最古のものとしては、第三次小泉内閣の2005年10月に「小泉首相の靖国参拝を非難」というタイトルで実在の在米日本大使館員からのメールを装い、外務省職員数十名に送られたものらしい。それ以降も、2011年、2013年、2015年などピークをもちながら、継続的に我が国の政策や安全保障に対する諜報活動が継続されているとのことである。
 近年では、中国の第二期習近平政権発足の2017年秋以降、かつては台湾や南シナ海に関係するサイバーエスピオナージ活動を行っていた攻撃者が日本を攻撃するなど、攻撃者の活動自体にも変化が現れており、このような攻撃による被害低減や被害防止だけではなく、「どのような脅威が存在しているか」を把握するサイバードメインアウェアネス(サイバー状況把握)の重要性が増している。
 一方で、このようなステートスポンサードなサイバーエスピオナージに対しては、各被害組織による単独の対応だけではなく、攻撃の全体像を政府として把握し、我が国として攻撃国に対する対応も必要ではないか。本年6月7日に発表された内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)の「サイバーセキュリティ戦略(案)」に示されているように、「同盟国・有志国とも連携し、脅威に応じて、政治・経済・技術・法律・外交その他の取り得るすべての有効な手段と能力を活用し、断固たる対応をとる」ためにも、直近の攻撃状況だけではなく、いつから、どこへ、どのような攻撃が行われたか――を整理する必要があろう。また想定される攻撃者像の把握のために、国際情勢や地政学、対象国の体制などについてもサイバーセキュリティの文脈における重要な要素として理解を深めていく必要がある。
 このような攻撃の把握は、システムで発見することは困難で、各攻撃対象者自身による気づきや、攻撃痕跡情報による振り返りが必要である。またそこで確認された攻撃嫌疑情報を伝達するといった多大な手間を要するものであるが、我が国として「サイバー状況把握」を行うためにも、このような情報の利活用に各人が尽力するよう、サイバー諜報活動の実体と対処例を紹介していただいた。
 極東アジアにおける動性が活発な中、今後も周辺国からのサイバーエスピオナージは活発さを増すと予測される。安全保障や国際関係、政策のみならず、科学技術や知財に関わる情報窃取活動に対する対抗のためにも、不審メールがあった場合はJ-CRATのみならず警察、防衛省、公安調査庁など政府におけるサイバー状況把握のために情報提供することが重要であると、青木氏は語る。
 因みに、J-CRATでは「標的型サイバー攻撃特別相談窓口」が準備されている。まずは気軽に相談してみることをお勧めしたい。

テーマ: 「我が国の政策や安全保障を脅かすサイバー諜報活動の実態とその対処例」
講 師: 青木 眞夫 氏((独)情報処理推進機構(IPA)サイバーレスキュー隊長)
     伊東 宏明 氏(同上 副隊長)
日 時: 平成30年7月6日(金)14:00~16:00

第115回
「習近平主席の防衛戦略と人民解放軍について」

  長野禮子 

 第115回「Chat」は、JFSS顧問の古森義久氏のご紹介で、米国よりラリー・ウォーツェル氏をお招きし、5月25日に開催した。ひと月以上も経って、やっと報告を書いている次第である。この間、我が国でとりわけ注目されたのは、北朝鮮の「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」(CVID)に向けての米朝首脳会談の行方と、その仲介役を内外にアピールしている韓国の文在寅大統領、それに中国がどう絡んでくるかであった。
 これまで韓国は何度も南北融和実現を目指し首脳会談を行ってきたが、結局は北朝鮮への経済支援に利用されただけで、国際社会に対しても北朝鮮は「約束不履行する国、信用できない国」と認識させてしまうことになった。今回もその国柄を裏付けるかのように、金正恩委員長の訪中以降の北の主張や対応の変化が影響したのか、トランプ大統領は5月24日、6月に予定されていた米朝首脳会談の中止を発表した。ところが半日も経たないうちに「首脳会談を行う」となった。 
 朝鮮半島に関わる問題は、常にリスクが伴い確実性の低いものだという証左として、改めて国際社会も受け止めたことだろう。日本は安倍首相とトランプ大統領の信頼関係を軸に、それに絡む中国、ロシアの思惑を念頭に外交戦略をどう立て、どう乗り切るかが今後の課題として大きな問題となろう。
 斯くして、「米朝首脳会談」は6月12日、シンガポールで行われた。初会合に臨む両首脳は、これまでの敵対、制裁の顔を忘れ、実に融和的な表情で進められたように見受けられた。
 今回のゲストであるラリー・ウォーツェル氏は元米陸軍大佐。北京勤務は2回、アジア太平洋地域の事情にも精通していることから、次の5項目について詳しくお話いただいた。

①習氏は、台湾海峡危機、天安門事件時に重要な任務に携わる
②習氏の出発点と軍との絆構築 
③軍拡を背景としたアジアにおける覇権戦略(中国の秩序によって「中国の夢」実現を謀る) 
④中国の軍事力(特にミサイル) 
⑤日米協同で統合運用司令部を作る

 中国の核心的利益と言って憚らない南シナ海での暴挙は、最早後戻りできない状況にあり、着々とアジアの覇権を手に入れようとしている現実を改めて認識するものであった。米朝首脳会談後の米韓共同訓練の中止が決定されたが、このまま南北融和が進むことによる朝鮮戦争終結、在韓米軍の撤退等々が現実のものにならないとも限らない。その時、我が国はどういう戦略で臨むのか、最悪の状況を想定し、正に今「国難の時」であることを、我々国民は強く認識すべきであろう。

テーマ: 「習近平主席の防衛戦略と人民解放軍について」
講 師: ラリー・ウォーツェル 氏(米中経済・安全保障調査委員会(USCC)委員・元ヘリテージ財団外交政策防衛担当副総裁)
通訳・解説: 古森義久 氏(JFSS顧問・麗澤大学特別教授)
日 時: 平成30年5月25日(金)14:00~16:00

第114回
「日本の人口減少と自衛隊兵力の問題」

  長野禮子 

 安倍首相の憲法改正に向けての取り組みを阻止しようとする野党の攻撃は、森友・加計問題に見るように年を跨いでの追及が続いている。更に「文書改竄」「日報」問題と今後また何が出てくるのかと辟易する。
 中国の挑発や脅威、北朝鮮の核・ミサイル問題解決への日米、国際社会との足並みを揃えての戦略など、喫緊の安全保障問題を脇に置いて、連日口角泡を飛ばすが如くの安倍首相批判を繰り返す姿は、国政を担う政治家としての品格はなく、その使命を果たしているとは断じて言い難い。野党は何を目指しているのだろうか。安倍政権を倒閣に追い込めばこの国難ともいうべき事態を解決できるとでもいうのだろうか。

 今回はロバート・エルドリッヂ氏をお招きし、少子高齢社会に突入している我が国の人口減少と自衛隊兵力の問題についてお話いただいた。以下14の提案を紹介する。
1、 給料のアップ(予算の天井の存在)
2、 隊員、職員の仕事の効率化(限定的な効果しか期待できない)
3、 定年の引き下げ(能力の低下に繋がる)
4、 採用条件の引き下げ(能力の低下に繋がる)
5、 予備自衛官の拡大(即応対応性の維持が課題)
6、 技術の導入(予算の限界、運営する上での人材不足、民間企業との競争加熱)
7、 女性自衛官の倍増(子供を産めなくなる女性増の可能性)
8、 海外の任務を削減(国際安全保障の低下)
9、 米国による安全保障に一層依存(代わりに米のコミット増加に繋がる)
10、集団安全保障機構の構築(米のコミット増加に繋がる)
11、限定的核抑止力(核の拡散の問題発生、通常戦争の対応など)
12、徴兵制度(憲法第18条解釈疑義、士気・質の問題)
13、契約会社、外国人軍人の採用(忠誠の問題)
14、自衛隊内、日米の基地の整理縮小、統合運用、相互運用性、共同使用など

 氏は以上の提案を述べた上で、人口減少の速度は「想定外」のペースで進んでおり、その深刻さは津波のように押し寄せ、日本国内のみならず、世界に影響を及ぼすことを忘れてはならないと指摘した。安倍首相が唱える憲法9条における自衛隊を明記し、国際世論に通用する軍隊としての名誉と誇りを持ち活躍できる環境を作ることが、ひいては日本の国土防衛に繋がるということを、国民皆が認識する時ではないか。


テーマ: 「日本の人口減少と自衛隊兵力の問題」
講 師: ロバート・D・エルドリッヂ 氏(JFSS上席研究員・政治学博士・元在沖縄海兵隊政務外交部次長)
日 時: 平成30年3月8日(木)16:00~17:30

第113回
「平昌五輪後の米国の対北政策」

  長野禮子 

 2月9日開幕の平昌五輪、その開会式に際し、韓国の文在寅大統領は一貫して慇懃なまでの親北対応を見せつけた。一方、安倍首相とペンス副大統領の、淡々とした態度で臨んでいる姿は、実に対照的であった。金正恩の妹・金与正の「ほほ笑み外交」に満足げな文氏は、北の核・ミサイル問題で国際的制裁を科している日米を始めとする諸外国にとって、とても褒められた外交には見えなかったことだろう。更に驚くのは、文大統領が閉会式に北朝鮮の党副委員長(工作機関トップ)の金英哲の出席を許したことである。この金英哲は対韓国政策を取り仕切る党統一戦線部長も兼ねている“テロの元締め”と言われている人物である。しかし、文氏は韓国内での反発を無視し、親北姿勢を崩さなかった。
 ペンス副大統領は帰国後の2月22日、メリーランド州の保守派の集会で、金与正を「悪の一族だ」と強く非難し、北がアメリカや同盟国を脅かすのをやめて、核・ミサイルを放棄するまで断固とした態度を取り続けると述べた。
 韓国の北融和政策を利用する北朝鮮の思惑は、過去を振り返らずとも見え見えである。こうした中で、4月末に向けた南北対話の準備は進められ、場合によっては米国を加えた首脳会談になる可能性もあるようだ。米国はあくまでも北の核・ミサイル開発を止めさせ、核放棄を迫る。米韓軍事演習は4月に延期されたが、韓国がこれ以上渋るようなことになれば、米韓関係に亀裂が入るだろう。米朝対話がもし実現するとしても、米国の基本的立場は変わらず、今回の五輪開催が米朝の緊張緩和に繋がることは考えられない。もし北が核・ミサイル放棄を認めなければ、取り上げるしかなく、米国の先制攻撃の可能性は十分にある。6者協議のような偽善的政策は最早現実的ではない――とメア氏は語る。
 米国は今先制攻撃のタイミングを計っているという。これがもし現実のものになった時、日本はどのような対応をするのか、その準備はできているのか。東アジアの安全保障は保たれるのか。
 韓国でのオリンピック開催と言えば1988年のソウル五輪の前、北朝鮮が五輪開催妨害を目的としたと言われた大韓航空機爆破事件が思い出される。今回は「ほほ笑み外交」の正にその裏で、北は韓国政府、韓国大企業等へのサイバー攻撃を繰り返していたことが分かった。これまでの北の対米、対韓、対日戦略の実態を踏まえ、今後の動きを冷静に見届けることは勿論、同じ轍を踏まないよう今度こそ厳しい対応で朝鮮半島の非核化を実現してもらいたい。

テーマ: 「平昌五輪後の米国の対北政策」
講 師: ケビン・メア 氏(JFSS特別顧問・元米国務省日本部長)
日 時: 平成30年2月23日(金)15:30~17:30

第112回
「我が国の防衛産業とその課題」

  長野禮子 

 2014年4月、安倍内閣により「防衛装備移転三原則」が新しく制定された。これで長年の「鎖国」状態が解き放たれ、日本の防衛産業も一気に世界に羽ばたくことができると期待したものである。しかし、4年目を迎える今、その期待に応えている状況には決してない。
 今回は未来工学研究所の西山淳一氏をお招きし、現在の日本の防衛産業はどういう状況にあり、その課題は何かを詳しくお話いただく。
 日本の防衛産業の規模は我が国の工業生産額の僅か0.7%であり、非常に小さい。また、大手企業における位置付けは全体事業の一部であり、重工業で10%、電機企業で2~3%程度である。
 我が国は、戦後長く続いた「武器輸出三原則等」による武器輸出禁止の呪縛からまだ解き放されていないために、国際競争に晒されることもなく現在に至っている。つまり、武器輸出に関しては「思考停止」状態を続け、ある意味「鎖国の平和」を享受してきたのである。企業が防衛事業を「リスク」だと考え、「マイナスイメージ」だと思っているうちは発展は望めない。今こそ企業のマインドを変えていく必要がある。
 国内においては他の産業で産業再編は起きてきたが、航空宇宙・防衛産業では欧米において行われたような大規模な産業再編は行なわれなかった。今後、日本も防衛産業強化のためには再編を考えるべきではないか。
 従来、イノベーションは米国DARPA主導で行なわれ、軍事技術の民間への波及という形で進んで来たが、昨今は民間技術の発展のスピードが凄まじく、いかに民間の技術を軍事に取り込むかが大きな流れになっている。そのためには中小メーカーの技術を発掘する必要がある。米国ではDIUx(実験的・防衛イノベーションユニット)を開設し、シリコンバレーなどの民間技術を取り込もうとしている。日本もそのような活動を考えるべきである。
 一方、開発した先端技術を守るという意味で技術情報管理は避けて通れない。防衛省は防衛秘密に関しての管理を行っているが、政府横断的な管理が出来ていない。DSS(国防保全局)に相当する機関がない。また、秘密特許制度がないのも問題である。国家としての機密情報管理はファンダメンタルな機能だ。
 技術的にも技術情報流出防止の方策を考える必要がある。供与する技術の選定手法、基準の確立、そのためのブラックボックス化の手法を考える必要がある。ブラックボックス化に当たっては、その技術の確立と費用負担の明確化が必要である。民間会社ではエリーパワー(リチウムイオン電池の会社)のように自ら技術流出を防ぐため工場全体のブラックボックス化を行っている会社もある。
 日本が長らく行ってきたライセンス生産の時代は終わった。新しい事業形態を考える時に来ている。外国企業の買収や日米JV(ジョイントベンチャー)会社方式もあるだろう。国際競争の場に出て行くためにどうすべきかを考えるべきではないか。
 昨今、日本企業の信頼度を失うようなスキャンダルが続いているが、その信頼性を回復することが急務である。
 日本には「技術」がある。中小メーカーの幅広い技術を発掘し、新しい技術に挑戦すべきだ。技術者は新しいことに挑戦しなくなったらおしまいである。誇りをもって防衛事業に取り組んでいただきたい。

テーマ: 「我が国の防衛産業とその課題」
講 師: 西山 淳一 氏(JFSS監事・元三菱重工㈱航空宇宙事業本部副事業本部長)
日 時: 平成30年1月26日(金)14:00~16:00

第111回
「沖縄の基地政策―これでいいのか」

  長野禮子 

 沖縄は普天間基地の移転問題を始め、米軍のヘリコプター墜落や部品の落下など、様々な問題が山積している。基地政策を考える上で大事なことは、日本は『政策』、アメリカは『運用』、沖縄は『政治』の視点から、これらをどのように結びつけるかについて検討することである。米政府も基地と自治体と住民との交流を深め、普天間に駐留する米海兵隊がどのように活動し、沖縄や日本の安全保障に貢献しているかについて可能な限り開示して行くことを試みている。活動の透明性が進むことで、住民の基地への理解が深まり、不安が払拭されてくると期待したい。特に米国(ホワイトハウス)は事実論と感情論の乖離を理解し、基地政策に取り組んで行く必要があるだろう。
 また、住民との信頼関係を築くには長い時間がかかる。米軍の規則では5年以上の連続した海外勤務ができないことになっているが、この規則を在沖米軍に一律に適用することは妥当ではない。頻繁に担当者が交代するのではいつまで経っても基地の重要性を理解し合える日は来ない。
 日本には、海兵隊に相当する軍種がなく、現在陸上自衛隊が担当。在普天間基地海兵隊のカウンターパートは陸自西部方面隊である。このため、日米間で調整等を行う際の物理的障壁となることは否めない。因みに、陸海空軍については、いずれの司令部も関東地区に置かれスムーズな調整が可能である。
 止むことを知らない中国の挑発や北朝鮮の核・ミサイル問題を突き付けられている今、こうした指揮系統の問題は国家の根幹を揺るがしかねない大問題へと発展する可能性を秘めている。直ちに再考されるべきであろう、とエルドリッヂ氏は指摘する。

テーマ: 「沖縄の基地政策―これでいいのか」
講 師: ロバートD・エルドリッヂ 氏(JFSS上席研究員・政治学博士・元在沖縄海兵隊政務外交部次長)
日 時: 平成29年12月8日(金)15:30~17:00

第110回
「トランプ政権の対北朝鮮政策」

  長野禮子 

 11月のトランプ大統領のアジア歴訪で、日本にとって最も大きな成果は、北朝鮮の核・ミサイル問題についての認識を共有できたことであるが、一方、米中会談では南シナ海・東シナ海における中国の野望が浮き彫りになった。
 朝鮮半島の非核化については、これまで6者協議を始め様々な取り組みがなされてきたが、結局は北朝鮮の時間稼ぎに使われ「核保有国」として名乗りを上げる寸前まできてしまった。金正日時代から金正恩体制下の今、核実験、ミサイル発射回数は急増し、いつ何時日本海を隔てた我が国に、更に太平洋を越えた米国本土に撃ち込んでくるか、その切迫した脅威に対する戦略は、石油・食料の禁輸や海外資産の凍結などの制裁強化に中露の足並みが揃わない中ではあるが、徐々にそのレベルを上げている。トランプ大統領、マティス国防長官、ティラーソン国務長官など米国の主要メンバーの対北政策はどのような形で折り合いをつけ、どういう結論に至るのか。
 米国のアジア政策については超党派で協議し、共和党、民主党政権に拘わらず安定的な政策が望まれる。その観点では、安倍政権はアジアのみならず先進国の中で長期かつ最も安定した政権であることから、トランプ政権としてもアジアにおけるリーダーシップを日本に期待していると言える。
 確かに安倍政権では、集団的自衛権の一部容認など、日本の外交・安全保障政策については現状の国際情勢に適合する妥当なものとなり、装備面についても、陸上配備型イージス、新型早期警戒機E-2D及び第5世代戦闘機F-35の採用などにより、特に日米安全保障条約に基づくチーム・ディフェンスはより一層深化して来ていると思われるが、日米統合運用に関しては未だ発展段階にあると、メア氏は語る。

テーマ: 「トランプ政権の対北朝鮮政策」
講 師: ケビン・メア 氏(JFSS特別顧問・元米国務省日本部長)
日 時: 平成29年12月5日(火)14:00~16:00

第109回
「新しいアジア情勢の下での日台関係」

  長野禮子 

 今年(2017年)1月1日、「交流協会」を「日本台湾交流協会」と改め、「更なる関係を発展させていく」ことになった。安倍政権によって日台関係が大きく進展した証左である。
 台湾は今、日本と同様社会保障や少子高齢化の問題が散見され、国民の政府に対する眼も厳しく、蔡政権の支持率は低下している。
 日台関係を考えるに当たり、台中関係を無視することは不可欠であり、台湾人の意識も時代と共に変化して来ている。1972年のニクソンショックから45年。特に天安門事件以降の台湾人の帰属調査では、①中国人 ②台湾人 ③台湾人であると同時に中国人である―の3択では、1992年の段階では5割の台湾人が③を選択した。しかし、2015年の段階では6割の台湾人が②を選択した。更に、中国人か台湾人かの2択では、9割が台湾人であると回答した。「台湾人」としてのアイデンティティが語られる時代となったのかも知れない。
 1988年、台湾初の民撰総統である李登輝氏から、陳水扁氏、馬英九氏の3総統が登場した。李総統は、台湾海峡危機や司馬遼太郎氏との対談(台湾独立に関しても議論)などから中国から極めて危険視された人物でもある。
 李氏は司馬氏との対談で『出エジプト記』の話をされたが、恐らく台湾人は流浪の民であることを示唆したものと推察される。陳氏は「独立派」、馬氏は「統一派」である。しかし二人とも政権に就くと現実路線に転換し、陳氏は「4つのNO」(①中国からの武力行使が無い限り独立を宣言しない ②国号を変更しない ③両国論を加える憲法を改正しない ④統一か独立かの国民投票を行わない)を、馬氏は「3つの不」(①統一しない ②独立しない ③武力を使わない)、つまり現状維持を前面に出していた。 
 現在の蔡政権は、党綱領に「独立」を謳った民進党政権であり、正に中国と民進党の両方から注視され苦しい立場にあるが、所謂「一中各評」の台中コンセンサスの中で、どのように政権運営をして行くかである。中国は、蔡政権の対中政策を「不完全答案」と評し、牽制している。政権支持率が下がる中で、民進党内でも対中問題は重大なイシューであり、「事実上の独立ならば中国のレッドラインを超えない」という意見と、「事実上の独立は危険水域である」という意見で割れている。
 こうした中、蔡政権は新南向政策を打ち出し、過度の中国依存から脱するため東南アジア諸国やインドへの転向を試みており、日本との連携に期待を寄せている。新南向政策の目標となるASEAN諸国については、影響力の強い国家と対峙するため、どの国と組むかについては国内外情勢に大きく左右されるところである。
 以上、台湾や中国を始めとするアジア諸国が国力をつけてきている「新しいアジア情勢」下で日台関係を構築して行く場合、最早2国間のみの関係に留まらず、複雑な力関係を考慮し戦略的な検討が必要となろう。

テーマ: 新しいアジア情勢の下での日台関係
講 師: 谷崎 泰明 氏(日本台湾交流協会理事長・前インドネシア駐箚特命全権大使)
日 時: 平成29年11月28日(火)15:00~17:00

第108回
「トランプ大統領のアジア歴訪の成果と意義」

  長野禮子 

 2017年11月のトランプ大統領の初のアジア歴訪によって、トランプ政権のアジア政策と矛盾点が明らかになったと、以下の7点を古森氏は指摘した。
 ① 伝統的な同盟(日米同盟・米韓同盟)を重視。
 ② 経済政策(貿易など)については二国間協議を重視。
 ③ 北朝鮮にはより強固な態度で臨む。
 ④ 対中政策については硬軟使い分けるが、妥協はしない。
 ⑤ 南シナ海、東シナ海における中国の活動に対し、有志連合に基づく対中政策を講じる。
 ⑥ 民主主義、人権、法の統治といった普遍的価値観に基づく政策を貫く。
 ⑦ アジア政策の様々な施策においての矛盾、排反、不一致が散見される。
 注目すべきは、トランプ政権の対中政策の強化である。習近平主席との会談では直接中国を批判することはなかったものの、隣には北朝鮮問題を抱える同盟国、日・韓がある。北問題では中国の手腕に期待を寄せている米国だが、その対応如何では中国抜きで行動することを示唆した。また、南シナ海の「航行の自由作戦」は、オバマ政権時代よりもはるかに強化され、更に安倍首相の提唱する「インド太平洋戦略」を共有し、民主主義、自由、人権についてAPECで講演。アジアにおけるトランプ政権の安全保障政策はオバマ政権とは明らかに異なる。
 こうしたトランプ政権の外交に関する基本的理念は、9月の国連演説でも示された。北朝鮮による日本人拉致事件に触れる一方で、『原則に基づくリアリズム』を大事にすると発言した。これは、国際社会の前提は国民国家の自立であり、それらの連携こそが国際平和の基礎となるということである。
 来日前トランプ氏は、「日本は戦士(ウォーリアー)の国だから、北朝鮮から米国にミサイルが発射されたら必ず打ち落としてくれるだろう」と発言。これは、米国議会で、9.11事件の際に共に戦うと立ち上がったNATO諸国に比べ、戦おうとしなかった日本と同盟を組むことに意味があるのかとの問題提起がなされていることから、トランプ大統領の日本に対する具体的な期待と要求と見るべきであろう。
 日本はそうした状況を踏まえ、より具体的なアジア・太平洋戦略を外交・安全保障のみならず、経済面でも展開して行く必要があろう。

テーマ: トランプ大統領のアジア歴訪の成果と意義
講 師: 古森 義久 氏(JFSS顧問・麗澤大学特別教授)
日 時: 平成29年11月22日(水)15:00~17:00

第107回
「トランプ政権の対北朝鮮政策」

  長野禮子 

 10月10日、衆院選が公示され12日間の選挙戦が始まった。安倍首相は今回の解散の最大の理由を「北朝鮮危機による国難」と位置付け、併せて憲法改正の是非を問う選挙に打って出た。北朝鮮の脅威をよそに、国会での野党の追及は安倍首相に対する「モリ・カケ問題」に終始し、国家の安全保障問題を真剣に語ることはなかった。これにより確かに安倍政権の支持率は一気に10%落ち込んだが、野党の支持率が上がった訳ではない。解散風が吹き始めると野党は「疑惑隠し解散」と批判し、安倍一強政治を打倒すると息巻いているが、「モリ・カケ問題」が政権を転覆させるほどの問題ではないことを、国民は十分に理解している。政権批判を繰り返す野党が政権を奪取した暗黒の3年3ヵ月を国民は忘れてはいない。正にこの国難にあって真剣に取り組むべき問題のプライオリティを何と心得ているのか、看板を何度も架け替え立候補する“政治家”に「国民の命を守る責任」を託せるのか。具体的な裏付けもなく有権者に心地よいことを叫べば投票してくれると本気で思っているのか、強く問いたい。特に今回の総選挙は、戦後最大の危機と言われる北朝鮮の脅威に対して、誰に、どの政党に任せるかを決める重要な選挙であることを有権者は自覚しなければならない。
 さて、今回アワー氏は、主に米国民主党の左傾化が益々進んでいること、トランプ政権の北戦略、ミサイル防衛――以上3点についてお話下さった。何れも喫緊の問題として重要である。特に北の核攻撃が日韓に及んだ場合、米国は即、核による反撃を実行するかどうかであるが、それは必ずしも核攻撃ではなく通常兵器であろうとアワー氏は語る。 
 一方、トランプ大統領は10日、陸軍で話をし、「いつでも北を攻撃する準備をする」と言った。それに対しハリス太平洋軍司令官はこれを重く受け止めたということだが、マティス国防長官、ティラーソン国務長官などは米国の先制攻撃はないとしている。
 9月18日、マティス国防長官は「ソウルを危険に晒すことなく北朝鮮の核・ミサイルを無力化する軍事オプションがある」と記者団に語った。これは米軍が既にこのことにおける軍事シミュレーションの完了を意味することだと受け止めるべきだろう。米国もこれまで長きに亘り、北朝鮮に対してアメとムチを使い分けながら非核化を導いてきたことの失敗を認めたのか、日本も「対話のための対話」は無意味だとし、日米の認識のズレはない。
 米国は日本を含む同盟国と様々な軍事訓練を展開している。もし米韓軍による対北軍事行動が起こった場合、その元になるのは2015年に策定された「作戦計画5015」というものだ(10月12日付、産経新聞)。
 例えば、北の核施設を空爆する「5026」、北の体制を転覆させ、全土を占領する「5027」、北の体制動揺を受けて軍事介入する「5029」、北の経済を疲弊させる「5030」、金正恩や指導部の暗殺計画を実行する「斬首作戦」などがそれである。また、従来は北の韓国侵攻があった場合の反撃を前提としていたものが、5015では北が核・弾道ミサイルによる軍事攻撃の兆候が確認できた場合、核兵器を含む北の核・ミサイル基地への一斉先制攻撃に出る――となった。あらゆる作戦を実行し、その上で5027計画の全面戦争へと移行するということである。
 21世紀を生きる我々は、極東アジアの安全保障におけるパワーバランスが大きく揺れ動いている“現実”をしっかり受け止め、最悪のシナリオを想定しつつ、リスクを最小限に抑える戦略を立てることであるが、これが大問題である。
 北制裁に足並みを揃えつつあるかに見える中国の動向も、決して認識を共有しているとは言い難い。22日の総選挙の結果、更に、11月のトランプ大統領の訪日、続く韓国、中国訪問はどのような結果をもたらすのか注目される。


テーマ: トランプ政権の対北朝鮮政策
講 師: ジェームスE・アワー 氏(JFSS特別顧問・米ヴァンダービルト大学名誉教授)
日 時: 平成29年10月11日(火)14:00~16:00

第106回
「平成29年版『防衛白書』説明会」

  長野禮子 

 「防衛庁」から「防衛省」となって10年、我が国周辺の安全保障環境は年々厳しさを増し、殊に中国の挑発が続く尖閣諸島、北朝鮮の核・ミサイルの脅威に対する政府の取り組みに国民の関心は高まるばかりである。
 白書ではこうした現状を新たな段階の脅威と位置付け、内容も表現も昨年に比べ更に「強い表現」になっていると、青柳審議官は説明する。
 巻頭特集1では、省移行後の10年間の歩みとして、安全保障、災害派遣、PKO派遣、国際緊急援助活動などが紹介され、特集2では、防衛この1年として、中国の領海侵入に対する警戒監視や領空侵犯措置、米国トランプ政権との日米同盟の強化、南スーダンのPKO活動終了、そして特集3では、女性自衛官の活躍、特集4では、「平和を仕事にする」自衛隊の多岐に亘る活動が紹介されている。(巻頭資料は下記の通り)
 戦後70年余、実現しなかった憲法改正(9条、自衛隊明記等)への機運は高まりつつあるかに見えたが、それを阻止する反対派の「闇雲」なまでの安倍政権攻撃によって、また決断の時が遠のいた。マスコミは真実を伝え、政治家はそれを吟味し、現実に沿う安保体制を実現してこそ、「国家、国民の命と財産、名誉を守る」ことではないのか。
 現在日本が置かれている状況は、公的には「平時であるとの認識」と青柳審議官は言う。これは防衛省の「必要以上に国民を混乱させてはいけない」という配慮なのかも知れないが、目に見えない化学兵器や生物兵器への対応が日本はどこまで進んでいるのか。日本攻撃の手を緩めることなく、益々拡大し続ける中国、北朝鮮の暴挙に振り回されている国家で居続けることは最早できないとする国民の苛立ちも聞こえてくる。
 年々踏み込んだ言葉とその実践に期待するものの、人類の軍事、科学技術の発展により、「20世紀の戦争」の域をはるかに超えた21世紀の軍事力に対するプロ集団による総合的な戦略、備えなしに国民の安寧はない。
 戦後のアレルギーから覚醒するチャンスは正に「今」だと捉えるべきではなかろうか。

《巻頭資料》
1、わが国を取り巻く安全保障環境
2、わが国の安全保障・防衛政策と日米同盟
3、国民の生命・財産と領土・領海・領空を守り抜くための取組
テーマ: 平成29年版『防衛白書』説明会
講 師: 青柳 肇 氏(防衛省大臣官房報道官兼大臣官房審議官)
日 時: 平成29年9月7日(木)14:00~16:00

第105回
「インドの『アクト・イースト政策』の中の日本」
「ドグラム高地での印中対立―日本にとっての意味―」

  長野禮子 

 今回は、大きく2つの発表が行われた。まず最初は、ルーパクジョティ・ボラ氏による「インドの『アクト・イースト・ポリシー』とは何か」というものである。ボラ氏によると、インドの「アクト・イースト・ポリシー」の目的は、過去停滞してしまった東南アジアと東アジアの歴史的なつながりに、再びエネルギーを与えようとするものである。特にインドの「アクト・イースト・ポリシー」にとって日本は決定的な部分を占めており、その理由として、第1に、戦略的、経済的国益が日本とインドを接近させており、インドは日本の政府開発援助(ODA)の最大の受領国であること。第2に、インドと日本は、中国への懸念を共有していること。第3に、冷戦後のインドとアメリカとの関係強化が、日本のようなアメリカの同盟国との関係を緊密化させていること。第4に、インドのナレンドラ・モディ首相と日本の安倍晋三首相の個人的関係が日印関係を後押ししていること。第5に、政党に捉われない支持があること、を挙げている。そのため、結論として、今後、インドにとって日本の重要性は増すことはあっても減少することはないとの指摘があった。
 次に、長尾氏が「ドグラム高地での印中対立:日本にとっての意味」を発表。これは6月半ばから8月28日まで、印中両軍がブータンと中国の両方が領有権を主張するドクラム高地で睨み合ったことについて取り上げ、日本の安全保障政策について分析した発表である。まず何が起こったのか、事実関係を整理した後、実際戦争が起きるとしたら、中国側はどのようなシナリオを考えているか、インド側はどのような戦略をもって対応するかについての分析である。
 長尾氏は、この地域での中国側の軍事行動は過去1962年、1967年、1986-87年の3回あり、それぞれ第三世界でのリーダーシップや、中ソ対立、ソ連のアフガニスタン侵攻への対応といった外交的な目的があったと分析している。そのため、中国は「勝利」を演出することに関心があり、「勝利」さえできれば軍事作戦は限定したい思惑があるとの分析であった。それに対してインド側の対応は、限定させずにエスカレートさせる可能性がある。何故なら、例えば、エスカレートさせる方法として、空軍の投入、米露の外交的介入、別の領土を確保して交換を狙う方法などがあるが、どれもインドが有利になる可能性があるからだ。しかも、過去にインドが実際採用したこともあり、発想として持っているとの分析であった。このような傾向から、日本はどうするべきかについての政策提言があった。
 ドグラム地区について日本大使が出した声明は明確なインド支持を意味しており、その点では成功であったこと。平時については、日本は印中国境地域でのインドの防衛力増強に協力して、日本正面の中国軍をインド正面へ分散させる政策をとるべきであり、同時に実際危機が起きたときは、インド支援のため米軍と共にインド洋へのヘリ空母派遣を行ったり、尖閣への自衛隊配備によってインド方面の中国軍をこちらへ引き付ける――などの方法があることが政策として提案された。
 質疑応答では、ドグラム高地から中国軍が撤退した理由は、中国で開かれるBRICS会議にモディ首相に参加して欲しい中国側の思惑があると指摘されているが、その一方で対立の継続は経済的な利益の面から中国にとって損失であることなどから、他の理由についての議論や、中国の行動を懸念する一方で、インドに依存し過ぎることを不安視するブータンの思惑について意見交換が行われた。
(今回は長尾賢博士執筆の「会の概要」原稿を参考に掲載する)
テーマ: 「インドの『アクト・イースト政策』の中の日本」
「ドグラム高地での印中対立―日本にとっての意味―」
講 師: ルーパクジョティ・ボラ 氏(国立シンガポール大学南アジア研究センター客員研究員)
                      長尾 賢 氏(JFSS研究員・学習院大学非常勤
日 時: 平成29年8月30日(水)14:00~16:00

第104回
「朝鮮半島情勢と日韓関係」

  長野禮子 

 北朝鮮は8月29日5時58分、平壌の順安区域付近から弾道ミサイル1発を発射した。今回は日本海側ではなく、日本列島を越え北海道の襟裳岬上空を通過し、6時12分、襟裳岬東方約1180キロの太平洋上に落下。このミサイルは中距離弾道ミサイル「火星12」と判明した。安倍首相はトランプ米大統領との2回の電話会談で、「レッドライン」を超えたこの現実に更なる制裁を加えるべく共通の認識を確認するとともに、国連安保理も緊急会議を開きミサイル発射を強く非難、発射の即時停止を求める議長声明を全会一致で採択した。今回のミサイル発射は「米国の行動を見守る」とした金正恩委員長が、米韓合同軍事演習で応えたと米国を非難、今後も太平洋に向けた弾道ミサイル発射を継続する方針を示したようだ。
 北朝鮮という国は金日成、金正日、金正恩と政権が代わっても常に悩ましい国である。第二次世界大戦終結後の1948年9月9日、朝鮮民主主義人民共和国を建国、その後の朝鮮戦争、休戦。金日成は荒れ果てた国土復興のために在日朝鮮人の「地上の楽園」帰国事業を進め、日本人妻を含む約9万人が北朝鮮に帰国した。帰国した人々の悲惨な生活ぶりは『凍土の共和国』『どん底の共和国』『暗愚の共和国』(亜紀書房)に詳しい。
 国名に掲げた「民主主義」とは正反対の独裁政治は国際社会に憚ることなく、金正日は先軍政治を唱え、朝鮮人民軍最高司令官となった。日本人拉致を認めたものの無事に帰国したのは5家族のみ。数百人ともいわれる拉致被害者の帰国は未だ目途は立っていない。 
 2003年に始まった朝鮮半島の非核化を目的とした6者協議も2007年を最後に既に10年が過ぎた。その間、皮肉にも目的を達成しつつあるのは故金正日、金正恩であり、一度手にした核・ミサイルは決して手放さない。今年も建国記念日が近い。昨年同様、核実験、或いはより高度なミサイル発射を実行する可能性は高い。
 韓国との関係もまた悩ましい。文在寅大統領は北朝鮮のこの現実にあって日米韓の連携の重要さを理解しつつも、制裁より対話を優先している。が、当の北朝鮮は一蹴した。また、中国の牽制に遭いながらもTHAAD配備を決定したものの今年中の配備は延期。当然ながら、米韓関係にいい影響を与えるとは思えない。
 日韓関係に横たわる歴史認識や慰安婦問題、徴用工問題等々は、1965年の日韓基本条約で解決済だが、その履行について日本は韓国の政権が交代する度に蒸し返され、とても未来志向の良好な関係構築とは言い難く、早期の解決は望めない。
 今後の日本の対応について、武藤大使はこう締め括る。北朝鮮への軍事的手段はリスクが大き過ぎるとともに、制裁による解決には限界があり、冷静に圧力を加えるのが最善である。韓国については、様々な問題への抗議を毅然とした姿勢で示し、国際的なスタンダードで関係増進を図ることが望ましいと。

テーマ: 朝鮮半島情勢と日韓関係
講 師: 武藤 正敏 氏(JFSS顧問・元大韓民国駐箚特命全権大使)
日 時: 平成29年8月28日(月)15:00~17:00

第103回
「米国人法律家が語る戦後日本の歩み、そして将来」

  長野禮子 

 安倍政権の支持率が、森友、加計、日報問題で急落した。ワイドショーよろしく連日報道されるこれらの問題は、国政を左右する核心となり得る問題でないことは恐らく解っていながら、一強多弱を批判する野党の反安倍政権姿勢を露呈した。7月27日、その筆頭に立ち自らの二重国籍問題を棚に上げ、政権追及の手を緩めなかった民進党代表の蓮舫氏は、先の都議選の敗北、党の求心力低下を理由に辞任を表明した。
 しかし、この一連の流れの本質を見抜いていた国民は冷静だった。日本国憲法施行から70年を迎えた今年、安倍政権の本丸「憲法改正」への国民の理解は5割を超えている。この現象に焦燥感を募らせたGHQの占領政策(WGIP)墨守勢力は何が何でもこの動きを阻止するために、「問題」や「事件」を探し拡大させ、文科省の悪しき伝統まで国民の知るところとなった。国会の場で議論すべきプライオリティをはき違えた「政治家」に対する嫌悪さえ感じた人も少なくない。今語られるべきは、喫緊に迫った中国、北朝鮮の脅威に対する国防政策について与野党がともに協議し、国家、国民を守ることが最重要課題であることを、国民は承知している。その証拠に、この騒ぎの間、野党の支持率が上がらなかったことを真摯に受け止めるべきではないか。
 自民党は年内に憲法改正草案の取りまとめを目指す方針である。5月3日、2020年の新憲法施行を表明した安倍首相は、「自衛隊が違憲かどうかの議論に終止符を打つのは私たちの世代の責任だ」とした。
 我々国民は今、現憲法が占領下におかれ施行された当時の国際情勢と著しく変貌していることを正しく認識し、益々複雑化する国際社会にあって正々堂々と主権国家としての有るべき姿となすべき役割に対し、正面から向き合える国家を目指すことこそが、「強靭な国家」足り得ることを知らねばならない。
 「アメリカ追随を許してはならない」「自衛隊は違憲だ」という矛盾を唱え続け、憲法改正を阻む諸兄は、ではどうしたらこの国を守れるのか、守り切れるのかをしっかり説明して貰いたい。
 ケント・ギルバート氏の米国人法律家だからこその数々の指摘と提案は、出席者に憲法改正に向けての新たな視点を導くものとなった。

テーマ: 「米国人法律家が語る戦後日本の歩み、そして将来」
講 師: ケント・ギルバート 氏(米カリフォルニア州弁護士・タレント)
日 時: 平成29年7月28日(金)15:00~17:00

第102回
「尖閣問題、日本は無策」

  長野禮子 

 中国の東シナ海への挑発行為が年々過激になっている。中国が「核心的利益」と主張する尖閣諸島の領有権について日本政府はこれまで、あくまでも「日本固有の領土」との認識の下、「領土問題」としての扱いを避け、領海侵入、領空侵犯に対する抗議や懸念を表明してきたものの、受け身に徹する日本の対応は果たして現実を見据えた十分な対応であったのかとの疑念が付き纏う。 
 中国のこの地域における横暴な振る舞いに記憶される、2010年9月の中国漁船衝突事件(中国漁船による海上保安庁の巡視船「よなくに」と「みずき」への体当たり事件)で、中国人船長を公務執行妨害で逮捕したものの、時の菅政権は中国の圧力に屈し処分保留のまま中国へ送還、釈放したことは、いかに日本が中国の無秩序な行動に怯み、醜いまでの友好を続けてきたかをいやが上にも確認させられた。その後、海上保安官が事の顛末をYouTubeに掲載、全国各地で時の政権への怒りや不満が噴出した。
 しかし、中国の尖閣を自国領土とする執着は今に始まったことではない。1972年の沖縄返還直後の12月、中国がその領有を主張し始め、04年3月、「釣魚臺列嶼中国領土」(尖閣は中国の領土)と刻まれた石碑20個が制作され、この海域に投入する目的であることが廈門報道で報じられている(JFSS『季報』Vol.47  P.7山本晧一氏)。海中に沈んだ石碑は100年後には中国領土であることの立派な証拠品となるのである。
 緊迫する中国の脅威に、27年度の空自機によるスクランブル回数は873回、そのうち中国機は571回と前年度と比べ107回増加(平成28年度版防衛白書)している。
 日本政府は同盟国アメリカの大統領が代わるごとに、日米同盟5条の適用を確認するが、まずは、自国の安全保障は自ら守るという強い意志とそれに沿った法整備を実現し、実行しなければ国民の安寧はない。
 「サラミ・スライス戦術」で南シナ海を奪ってきた中国の策略を教訓とし、その対応策が急がれるが、キメの一手が見い出せない日本。「日本固有の領土」に日本人が上陸できない不思議・・・近い将来、東シナ海も南シナ海と同じ運命を辿るかも知れない。
 エルドリッジ氏は言う。日本政府の東シナ海対策は「無策」だと。
 
テーマ: 「尖閣問題、日本は無策」
講 師: ロバートD・エルドリッヂ 氏(JFSS上席研究員・政治学博士)
日 時: 平成29年7月5日(水)14:00~16:00

第101回
「技術的優越の確保と優れた防衛装備品の創製を目指して」
―防衛装備庁の取り組み―

  長野禮子 

 近年の国際情勢の変化に伴う我が国の安全保障環境は益々厳しく複雑さを増している。目前の脅威から我が国を守り、大きな抑止力を生むには、精強に訓練された部隊育成と、我が国の高い技術力を一層強化すると共に、それを活用した装備品の研究開発を押し進め、技術的優越を確保しなければ強靭な国家建設は実現しない。
 今回は2015年10月1日に発足した防衛装備庁の渡辺秀明長官をお招きし、以下のことについて詳しくお話いただいた。


1、防衛装備品等の研究開発について
 ア、防衛装備庁における4つの方針
 イ、予算から見る研究開発を取り巻く環境
 ウ、研究開発関連の部署と業務

2、防衛技術戦略について

テーマ: 「技術的優越の確保と優れた防衛装備品の創製を目指して」 ―防衛装備庁の取り組み―
講 師: 渡辺 秀明 氏(防衛省防衛装備庁長官)
日 時: 平成29年5月10日(水)14:00~15:30

第100回
「蔡英文政権の一年と今後の課題」

  長野禮子 

 台湾は2016年5月20日、それまで8年間、一貫して親中路線を進め、政権末期には1949年の中台分断後初の「両岸の指導者」同士として、中国の習近平主席と歴史的な首脳会談を実現した国民党・馬英九政権から、民進党・蔡英文政権に交代した。そしてそろそろ一年が経つ。
 日本は日台が共有する歴史的経緯や、地政学的安全保障の上からも最重要地域であり、謂わば「運命共同体」としての認識の下、72年の断交以降も深い交流が続いている。「一つの中国」を唱える中国と一線を画す蔡政権の誕生は、同時に我々日本国民にとって政治的にも心情的にも歓迎するものであった。
 しかし、親中路線を加速し続けた馬政権の政治的経済的残滓はそこかしこにあり、蔡総統の政権運営は決して容易ではないようだ。トランプ米大統領は就任直後、中国の習主席に先立ち蔡総統との電話会談を実現した。が、米国は「台湾は中国の一部ではないが、国際社会での主権国家としての立場は認めない」との位置付けである。また、「中華人民共和国」は“チャイナ”、「中華民国」は“チャイニーズ”と実に紛らわしく、中国と中華民国との線引きが出来ていない。2007年、当時の陳水扁総統は国連の潘基文国連事務総長(当時)に「台湾」名での国連加盟を求める親書を送ったが、「台湾は中国の一部」との理由でこれを受け入れなかった。1971年、国連は「台湾は中国の一部」であるとの決議はしていない。 
 一方、台湾政府も「中華民国」と「台湾」のどちらかという明確な立場を主張していない。台湾はこれまで一刻たりとも中国共産党の支配を受けたことはないのだが、これも謂わば「台湾の悲哀」の一面なのか。 
 国民党、民進党と政権交代しても中台関係は時には微妙に、時には激しい緊張関係を伴いながら現在に至る。しかし実態としては「台湾=事実上の国家」として生き続けていると許氏は語る。台湾人としてのアイデンティティを確立した今、未だ独立国家としての主権を有することが許されない現実は、実に哀しい。国際社会の理解を得るための具体的努力を、我々日本人が躊躇わずに堂々と進める時代はいつ来るのだろうか。
テーマ: 「蔡英文政権の一年と今後の課題」
講 師: 許 世楷 氏(JFSS特別顧問・元台北駐日經濟文化代表處代表)
日 時: 平成29年4月12日(水)14:00~17:00

第99回
「弾道ミサイル防衛の迅速かつ抜本的な評価に関する提言」

  長野禮子 

 今春は彼岸を過ぎても行きつ戻りつの天気で、なかなか予報通りの開花とはならなかったが、ここにきて窓外もやっと薄桃色の景色を楽しめるようになった。満開の日も近い。
 3月末、自民党安全保障調査会は「敵基地攻撃能力」の保有に関する提言書をまとめ、政府に提言した。この「敵基地攻撃能力」(政府は自民党案を受け、「敵基地反撃能力」とした)の保有に関しては、これまで「憲法9条」「専守防衛」の原則に反しないとなっていたが、何も進展はなかった。
 このことは皮肉にも北朝鮮の核実験やミサイル発射等の挑発行為が特に最近頻度を増し、我が国のEEZに落下したこと等による航空機や船舶への脅威と、移動式発射台や潜水艦からの発射、固形燃料による弾道ミサイル発射やロフテッド軌道による発射等々の技術を持ちつつあるとみられる新たな段階の脅威に突入したとの認識の下、自民党がやっと重い腰を上げたということだろう。
 北朝鮮は、米中首脳による北朝鮮問題についての会談を前日に控えた今日(5日)もミサイルを飛ばし、日本海に着弾した。国内メディアやイデオロギーによる反発や抵抗があったにせよ、遅きに失した観は否めない。が、「新たな段階の脅威」を日米共有の認識として、北朝鮮の暴挙を挫き、国家国民の安全を確たるものとするための一歩となったことに期待したい。
 民進党の蓮舫代表のように、「平和国家の礎が、ガラガラと音を立てて崩れるように思えて非常に懸念している」などと呑気なことを言っている場合ではない。抑止力強化に伴う防衛予算の増額も、今や多くの国民の理解の範囲にあるのではないか。
テーマ: 「弾道ミサイル防衛の迅速かつ抜本的な評価に関する提言」
講 師: 田村 重信 氏(JFSS政策提言委員・自由民主党政務調査会審議役)
日 時: 平成29年4月3日(月)13:00~14:00

第98回
「トランプ政権の東アジア安全保障政策」

  長野禮子 

 トランプ政権発足から2ヵ月が経過した。徐々に新政権の政策やトランプ氏の人物像が浮かび上がる中、世界は経済界出身の大統領がどういう国家運営をするのか、予測の難しい新たな時代の始まりを注視している。さしずめ日本にとっては、対中宥和政策をとり続けた前政権の政策転換を表明した新政権と、日米両首脳を始め外交・安全保障のトップとの価値観の共有が確認できたことは喜ばしいことである。が、同時に、中国・北朝鮮からの脅威に対する盤石な体制づくりが喫緊の課題となっている我が国の状況、南シナ海における中国の横暴な振る舞いを阻止し、「航行の自由」を守るための具体的戦略と行動を完遂するためには、周辺国との協調を促進させ、日米同盟の強化と深化が更に重要になるのは理の当然。 
 建前ではなく本音を前面に出すトランプ政権がスタートした今こそ、従来の同盟関係に甘んずることなく、我が国も「普通の国」になる好機と捉え、その果たすべき役割について国民世論と共に真剣に考え、行動する時が来たのではないか。そのためには、米国からの日本に対する厳しい要求にも応える努力を怠ってはならず、それが実行され成し得た時に、初めて同盟国としての「価値観の共有」が実を結んだと言えるのではないか。
 今回は、元米海兵隊大佐であり外交官も歴任したグラント F・ニューシャム氏に、トランプ政権の安全保障政策について幅広い視野でお話いただいた。
テーマ: 「トランプ政権の東アジア安全保障政策」
講 師: グラントF・ニューシャム 氏(JFSS上席研究員・元米海兵隊大佐)
日 時: 平成29年3月21日(火)14:00~16:00

第97回
「南西諸島防衛を強固にするために」

  長野禮子 

 トランプ氏が米国大統領に就任して1ヵ月半。政権幹部の人事は難航しているようだが、2月に来日したマティス国防長官、更に3月15日来日予定のティラーソン国務長官は我が国にとっても歓迎すべき人事だと言われている。
 トランプ大統領は2月末、国防予算の10%(約6兆900億円)増を予算案に取り込むと発表。実現すれば「歴史的な拡大」となるそうだが、日本はどうか。常態化している中国・北朝鮮の脅威に対する備えは十分と言えるのか。
 北が日本と韓国を攻撃すれば米国は100%応戦する。しかし、中国がもし南西諸島を攻撃してきても、日本はそれを防ぐための訓練すらしていないのが現状だ。早く米海兵隊並みの力をつけると共に、統合部隊をつくり、そこに米海兵隊司令部を置けば「中国への抑止」が機能する――と、今回のゲスト、アワー氏は言う。更に、米海軍と海上自衛隊の関係は良好だが、陸海空の統合運用は不十分だと指摘。「自分の国は自分で守る」姿勢を示さなければ、同盟国米国は出て来ない。 
 6日、北朝鮮は4発のミサイルを発射し、うち3発が日本のEEZ内に落下。また南西諸島における中国の脅威も続いている現状にありながら、国会では野党が責め立てる大阪の小学校の問題ばかりが喧しい。もっと冷静になって我が国の正面にある安全保障問題を真剣に議論してほしいものである。

テーマ: 「南西諸島防衛を強固にするために」
講 師: ジェームスE・アワー 氏(JFSS特別顧問・ヴァンダービルト大学名誉教授)
日 時: 平成29年3月7日(火)14:00~16:00

第96回
「トランプ政権に期待すること、懸念すること」

  長野禮子 

 トランプ大統領は就任した1月20日から1月末までに18の「大統領令」に署名し、60の公約のうち既に15に着手している。スピード感をもって政治をしている。日本人には馴染みのない「大統領令」だが、過去最高はF・ルーズベルトの3728、最近ではクリントンの364、ブッシュの291、オバマの276となっている。平均すれば739,5 というから、トランプ氏の大統領令もこれからどんどん出ることだろう。
 日本は米国の大統領が代わるたびに日米関係はどう変化するだろうかと心配し、ああでもない、こうでもないと専門家等々のコメントが報道されてきたが、2月3日来日したマティス国防長官は「尖閣諸島は日米同盟第5条の適応範囲に含まれ、それを損なおうとするいかなる一方的な行動にも反対する」と、中国を念頭にした共通認識を表明。北朝鮮の核・ミサイル問題、更に「核の傘」を含む拡大抑止にも言及し、従来の日米同盟の堅持と更なる深化に対する認識も確認された。
 ケビン・メア氏は、トランプ政権の安定までには時間がかかり、国内の混乱も暫く続くだろうが、2月10日、安定した政権運営をしている安倍首相とトランプ大統領との会談は双方の信頼関係構築に不可欠であり、外交・安全保障に加え経済面での問題も克服できるだろうと話す。
テーマ: 「トランプ政権に期待すること、懸念すること」
講 師: ケビン・メア 氏(JFSS特別顧問・元米国務省日本部長)
日 時: 平成29年2月7日(火)14:00~16:00

第95回
「報道されない半島情勢」

  長野禮子 

 北朝鮮の金正恩総書記は2017年の「新年の辞」で自らの能力不足を国民に詫びるなど、かつての金日成や金正日には考えられなかった謙虚な態度を見せた。と同時に、大陸間弾道ミサイル(ICBM)が最終段階に入ったとし、核・ミサイルの高度化を誇示した。
 元商社の法務を担当していた本日の講師、宇田川氏が入手した情報によれば、金正恩は今、金正日が考案した「三権力鼎立」を使いきれていないため、国民がクーデターを起こす可能性も否定できない。故に、三権力(朝鮮労働党・人民解放軍・行政機構)が融合しながら国家運営をしている。金正恩は傀儡ではないか――との仮説を立てる。 
 一方、韓国の現状と今後の展望、そして韓国国民の考えていること――についても、氏ならではの情報とそれによる氏の分析は、報道では決して知り得ないこととして参加者の 興味を惹いた。

テーマ: 「報道されない半島情勢」
講 師: 宇田川 敬介 氏(作家・ジャーナリスト)
日 時: 平成29年1月24日(火)14:00~16:00

第94回
「Global Trend・トランプ政権の安全保障政策・日米同盟への影響」

  長野禮子 

 11月8日の米大統領選挙でのトランプ氏の勝利は世界中を驚嘆させた。この結果を受けて米国はもとより日本でも様々な視点から、次期政権への取組に対する推測(期待や懸念)が語られている。日にちが経つにつれ閣僚人事や政権中枢に入るメンバーの名前が挙げられ、これについての評価も喧しい。
 JFSSでもこの選挙結果を受けて専門家をお招きし話を聞く機会を設けてきたが、今回も渡部悦和氏の米国からの帰国の機会を調整いただき、以下の点について詳しくお話いただいた。

1、「多極構造の世界」と「G-Zeroの世界」
2、トランプ次期大統領の対外政策
3、トランプ政権の安全保障政策
4、日米同盟への影響と日本の対応

 奇しくもこの日(11月15日)は、プーチン露大統領が9人の閣僚と共に来日し、安倍首相の故郷である山口県長門市で首脳会談が行われた。来日前からプーチン大統領の強気な発言が伝えられていた中、北方四島での共同経済活動実現に向けての協議に対する合意はなされたものの、「領土問題」解決への進展はなかった。
 ビジネスマンのトランプ氏は選挙中も米露関係を立て直す発言を自信満々に語っていた。もしそれが現実になれば日本の新たな懸念も生まれる。が、欧米諸国の政治的混迷と厳しい対露姿勢が続く中で、我が国は安倍首相の「地球儀を俯瞰する外交」による国際社会の信頼を背景に、是々非々、且つ強かに取組んでもらいたいものである。
 
テーマ: 「Global Trend・トランプ政権の安全保障政策・日米同盟への影響」
講 師: 渡部 悦和 氏(JFSS政策提言委員・元陸自東部方面総監・ハーバード大学アジアセンターシニアフェロー)
日 時: 平成28年12月15日(木)14:00~16:00

第93回
「米国新政権と我が国の安全保障政策」

  長野禮子 

 11月8日の米国大統領選の結果を受けて、国内外のメディアは今回の「番狂わせ」と言われる結果を見て、今後の米国の行方と新政権の下で執り得るだろう政治・経済・軍事政策などを想定しながら様々な視点からの議論を続けている。
 今回はワシントンDC在住で米国の要人や研究者など幅広い人脈を持つ廣中雅之氏をお迎えし、主に以下の5点についてお話いただいた。
 
・大統領選挙の結果をどう読むか。
・当面の国防政策・戦略、如何?
・政権移行準備の状況、如何?
・米国の中長期的な国防政策・戦略をどう読むか?
・米国新政権の我が国の安全保障への影響、如何?

テーマ: 「米国新政権と我が国の安全保障政策」
講 師: 廣中 雅之 氏(JFSS政策提言委員・前空自航空教育集団司令官・CNAS上席研究員)
日 時: 平成28年11月28日(月)16:00~17:30

第92回
「米大統領選の結果と予想される今後の日米関係」

 長野禮子 

 11月8日に行われた大統領選挙で、米国民は共和党のドナルド・トランプ氏を選んだ。CNNを始め多くのマスコミは当初、ビジネスマン出身で政治経験のないトランプ氏を泡沫候補として扱った。政治家ではない氏故に、短絡かつ刺激的な発言が連日のように新聞の一面に踊り、世界中を飛び回った。顰蹙を買うことを承知で言えば、まるで「お祭り騒ぎ」のような1年余だった。そしてこの日、トランプ氏はヒラリー・クリントン氏との大激戦を制したのである。
 当選が確実になった途端、マスコミは「番狂わせ」だとし、これまでのヒラリー勝利報道への正当性を前面に出しつつ、一方でトランプ氏の選挙中の発言を挙げ、今後の、特に日米同盟と日米関係の行方、「アジアのリバランス」への取組、TPP、そして中露・中東政策など様々な観点からの分析が始まった。
 ともあれ、選挙から1週間が過ぎた今、トランプ氏の過激な発言は封印されたかのように静かになり、報道にも「落ち着き」が感じられるようになった。来年1月20日の就任を前にホワイトハウスの陣営も検討されている。
 今回の結果を受けて安倍首相は直ちにトランプ氏との電話会談に臨み、日米両国の関係強化、信頼関係構築に向け良いスタートを切った。17日の安倍首相の訪米で、安倍首相と次期大統領トランプ氏との会談が行われる。期待を持って見守りたい。
 今回はお馴染みのジェームス E・アワー氏をお迎えし、上下両院ともに制した共和党による今後の政権運営について、様々な視点からお話いただく。

テーマ: 「米大統領選の結果と予想される今後の日米関係」
講 師: ジェームス E・アワー 氏(JFSS特別顧問・ヴァンダービルト大学名誉教授)
日 時: 平成28年11月14日(月)14:00~16:00

第91回
「ドゥテルテ比大統領の来日と今後の日比関係を読む」

 長野禮子
 
 フィリピンのドゥテルテ大統領のあまりにも「歯に衣着せぬ」発言は、時として反感を呼び、時として痛快であり、時として氏の人生を垣間見るようである。
 レイテ南部に生れ、ダバオ市長から大統領へと上り詰めたドゥテルテ氏が、一国を担う大統領としての振る舞いに欠けるその姿に世界はハラハラしているだろうが、何か憎めない人物のようにも見える。
 2013年、中国が領有権を主張する南シナ海のスプラトリー諸島を巡る紛争について、フィリピン政府が提訴していたオランダ・ハーグの常設仲裁裁判所の裁定が、この7月12日出た。しかし中国はこれを事実上無視し強気な発言を繰り返し、現在もこの地域での軍事拠点化が進められている。
 ドゥテルテ大統領は当初、中国との二国間協議には否定的だったが、10月20日訪中、習近平氏との首脳会談に臨み、フィリピンへの巨額の援助を取り付けた。その席でも強い米国批判発言が繰り返されたとの報道があったが、果たして中国が巨額の援助を履行するのか、また米国批判は本音なのか、まだ言い切ることはできない。
 そして25日、来日。岸田外相、安倍首相との首脳会談は、多岐に亘り意見の一致を見たとの報道があった。
 今回は、前フィリピン大使の卜部敏直氏をお招きし、南シナ海問題に対する日比の共通した認識を踏まえ、今後の日比関係、更には関係悪化の兆しが懸念される米比関係はどうなっていくのかなど、参加者と共に議論を深める。

テーマ: 「ドゥテルテ比大統領の来日と今後の日比関係を読む」
講 師: 卜部 敏直 氏(前フィリピン国駐箚特命全権大使)
日 時: 平成28年11月11日(金)14:30~

第90回
「『紛争地域』化した沖縄・高江
―基地反対派『民兵』による道路封鎖・検問―」

 長野禮子 

 普天間の基地移設計画は1996年に決定され、2006年に日米政府間で合意された。これを巡り、仲井眞前沖縄県知事が承認した辺野古埋め立てを、翁長知事が取り消し、この効力を国に対し違法として提訴。一方国はその撤回を求める代執行訴訟。
 3月4日、双方が裁判所の和解案を受け入れ、それに沿って双方が協議することを表明。その後も国と県の歩み寄りは見えず膠着状態が続いている。
 福岡高裁那覇支部は9月17日、国の訴えを認め、翁長知事が承認を取り消したのは違法だとする判決を言い渡した。また判決では、国防や外交に関する知事の審査権限について「地域の利益に関わることに限られ、県は国の判断を尊重すべきだ」と指摘したとの報道があった。当然のことではないかと、今更ながら嘆息する人もいよう。
 今回は4月の第34回定例シンポジウム「沖縄を救わねばならない」でご登壇いただいた篠原章氏をお招きし、国頭村安波のヘリパッド工事を妨害する反対派グループの行き過ぎた行動の実態をお話いただいた。

テーマ: 「『紛争地域』化した沖縄・高江
―基地反対派「民兵」による道路封鎖・検問―」
講 師: 篠原 章 氏(経済学博士)
日 時: 平成28年10月7日(金)14:00~16:00

第89回
「平成28年版『防衛白書』の説明」

 長野禮子

 今、我が国の「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」とする日本国憲法前文が悉く裏切られている。この広い世界に「諸国民の公正と信義に信頼」する前文を書き込んでいる国家が他にあるのだろうか。
 今年の『防衛白書』は従来の内容に比べ、より踏み込んだ強い文言となっており、我が国が直面する切迫した脅威に対する認識のレベルが上がっていることを示している。
 今回は土本審議官をお招きし、第Ⅰ部「わが国を取り巻く安全保障環境」、第Ⅱ部、「わが国の安全保障・防衛政策と日米同盟」、第Ⅲ部「国民の生命、財産と領土・領海・領空を守り抜くための取組」、そして「平成29年度概算要求の概要」について詳しくご説明いただいた。

テーマ: 「平成28年版『防衛白書』の説明」
講 師: 土本 英樹 氏(大臣官房審議官)
日 時: 平成28年9月13日(火)14:00~16:00

第88回
「ナショナリズムのグロバール化」

長野禮子

 かつて、世界経済はG7が世界のGDPの約80%を占め、現在は約50%。  
 それに引き換え、1997年、アジア通貨危機がきっかけでスタートしたG20 は今や世界のGDPの約90%になった。  
 今回米国より一時帰国した渡部悦和氏は、イアン・ブレマー著『「Gゼロ後」の世界―主導者なき時代の勝者はだれか』を挙げ、その中で、世界は最早リーダーなき不寛容で利己的な世界へと傾きつつあり、G7(Group of seven)やG8(Group of eight)、G20(Group of twenty)といった グループを無くす傾向に向かっているとの指摘を紹介した。  
 一方、自由と民主主義を標榜し、広く世界平和を目指してきた時代から、民族や国境を越えて紛争が絶えないこの地球は、まさに「炎上する世界」と化し、強いリーダーの存在が期待される。  
 ロシアは軍事力を背景としてウクライナを併合し、シリアにまで手を伸ばす。中国が推し進める「海の長城」計画、中東諸国の不安定、ISIS等による国際テロ、英国のEU離脱、難民問題、債務危機・・・。  
 今世界に求められているのはプーチン露大統領のようなリアリストであり、決してきれい事だけのドリーマーでは乗り切れないと話す。米国の大統領選の行方も目が離せない。  
 多くの矛盾を抱えている複雑な現実を思い知らされる。 
テーマ: 「ナショナリズムのグロバール化」
講 師: 渡部 悦和 氏(JSFF政策提言委員・ハーバード大学アジアセンターシニアフェロー・元陸自東部方面総監)
日 時: 平成28年8月3日(水)14:00~16:00

第87回
「南シナ海情勢及び東シナ海情勢」

長野禮子

 前回に引き続き7月12日のオランダ・ハーグ仲裁裁判所の裁定結果についてである。
 フィリピンの主張をほぼ全面的に受け入れた今回の裁定について、中国の反応は相変わらず強気を通してはいるが、内心では国際社会からの信頼を失うことへの焦りが感じられる。
 しかし、現在進められている南シナ海の人工島建設や軍事拠点化は緩めることなく進められている。国連安保理の常任理事国という立場にありながら、国際法の遵守を拒否し続ける中国は、次なる手を打ちつつ東シナ海への挑発を抜かりなく続けることだろう。
 今回は元自衛艦隊司令官の香田洋二氏をお招きし、米国での発表も含め詳しくお話しいただいた。
テーマ: 「南シナ海情勢及び東シナ海情勢」
講 師: 香田 洋二 氏(JFSS政策提言委員・元海自自衛艦隊司令官)
日 時: 平成28年7月29日(金)15:00~17:00

第86回
「南シナ海仲裁裁定みる中国の侵略的海洋進出」

長野禮子 

 ハーグの仲裁裁判所は7月12日、南シナ海で次々と人工島を造成し、軍事拠点化を進めている中国の海洋進出は明らかに国際法違反であるとし、フィリピンの訴えをほぼ全面的に受け入れる裁定を発表した。
  これに対し中国は裁定発表の前からフィリピンに軍配が上がることを恐れていたのか、裁定結果は「紙くず」だとの発言を繰り返し、人工島の軍事化を更に進める構えである。 
  中国の主張する「九段線」については、ベトナムやフィリピンなどの周辺国や日米などの関係国も「航行の自由」を巡り様々な手を打ってきたが、国際的な司法判断が下されたのは今回が初めてである。 
  今回は国際法が専門の髙井晋氏をお招きし、詳しくお話しいただく。 
テーマ: 「南シナ海仲裁裁定みる中国の侵略的海洋進出」
講 師: 髙井 晉 氏(JFSS常任理事・防衛法学会理事長)
日 時: 平成28年7月22日(金)14:00~16:00

第85回
「大統領選挙を迎えるアメリカで何が起こっているのか」

長野禮子
 
 米国で展開されている次期大統領選。約1年をかけてのポスト・オバマをめぐる戦いは半年が経った今、当初泡沫候補と言われていたドナルド・トランプ氏が、共和党の候補指名を勝ち取り、一方、民主党は、ほぼヒラリー・クリントン氏になることが有力視されている。 
 我が国の新聞にも、この大統領選、殊にトランプ氏の発言をめぐっては様々は報道がなされてきた。もし、トランプ氏がこのまま勝ち続けたとしたら、従来の日米関係とは趣の違うお付き合いになるのではないかと懸念する意見、逆に、トランプ氏が大統領に就任すれば、平和ボケの日本人の目が覚めるのではないかという意見が聞かれる。 
 国際社会における米国の立ち位置が変化している中で、米国民の国益追及における価値観も従来とは異なってきつつあることも認識すべきであろう。 5月25日付の産経新聞には、「各国の駐留米軍に対する費用負担」が掲載されていた他、JFSS顧問のケビン・メア氏、上席研究員のロバート・エルドリッヂ氏のコメントも掲載されるなど、結果の出る11月までの選挙戦に目が離せない。 
 今回は「大統領選挙を迎える米国で何が起こっているのか」と題して、トランプ現象・サンダース現象の背景・米国民に鬱積する不満・オバマ外交の欠陥・世界の警察官にならないアメリカ・・・等々について、筑波学院大学名誉教授の浅川公紀氏をお迎えし、詳しくお話しいただく。 

テーマ: 「大統領選挙を迎えるアメリカで何が起こっているのか」
講 師: 浅川 公紀 氏(JFSS政策提言委員・筑波学院大学名誉教授)
日 時: 平成28年5月25日(水)14:00~16:00