中国の「一帯一路」イニシアティブと新国際秩序構築

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防衛大学校准教授 佐々木智弘

 2013年、習近平が「シルクロード経済ベルト」(帯)と「21世紀経済シルクロード」(路)を指す「一帯一路」イニシアティブを提起してから5年が経った。米国中心の国際秩序に楔を打ち込むべく、中国中心の新たな国際秩序の構築を目論む習近平政権だが、昨今関連プロジェクトの頓挫などが報じられ、「一帯一路」イニシアティブの失敗や挫折が指摘されている。現状をどのように捉えるか。ひとつの見方を提示してみたい。

「一帯一路」イニシアティブ提起の経緯
 最初にもう一度「一帯一路」イニシアティブが提起された背景を確認しておきたい。
 シルクロード経済ベルトについては、習近平が2013年9月にカザフスタンで提唱した。2001年に創設された中国、ロシア、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタン、インド、パキスタンが加盟する上海協力機構(SCO)と2000年に創設されたロシア、ベラルーシ、カザフスタン、ウズベキスタン、タジキスタン、キルギスが加盟するユーラシア経済共同体との協力強化を進め、大輸送ルートとしての鉄道の連係強化、中国とロシアなどが自国通貨によって決済を行うなどの通貨の流通強化などでの協力を目的とするとした。更に習近平は2014年4月に中国・欧州連合(EU)間の協力とシルクロード経済ベルトの整備を結びつけ、世界経済成長の「ツイン・エンジン」となること掲げ、シルクロード経済ベルトの欧州までの延伸を謳い上げた。
 21世紀海上シルクロードについては、2013年10月にインドネシアで提唱し、2012年10月に中国が30億円を拠出して設立した中国・アセアン海上協力基金を活用して、海洋協力のパートナーシップを発展させるとした。

インフラの相互アクセスと金融協力
 「一帯一路」イニシアティブを構成するのが個別のインフラの相互アクセスプロジェクトと地域金融協力である。前者については、「バングラディシュ=中国=インド=ミャンマー経済回廊」が2013年5月に提唱された。「中国=パキスタン経済回廊」は2015年4月の首脳会談でグワダル港、エネルギー、交通インフラ、産業協力の4つを重点分野とする460億ドル規模のインフラ投資協力協定を締結した。「中国=モンゴル=ロシア経済回廊」は2015年7月合意され、ロシアの「ユーラシア横断大通路」、モンゴルの「草原の道」とリンクされた。
 後者については、2016年1月に世界銀行などと同様の国際機関としてアジアインフラ投資銀行(AIIB)を設立した。