朝鮮労働党の機関紙「労働新聞」によると、北朝鮮人民軍最高司部は、3月11日、朝鮮戦争の休戦協定の白紙化を宣言したという。北朝鮮は、国連安保理が2月11日の北朝鮮の核実験に対する経済制裁を3月7日に満場一致で決議したこと、および米韓両軍が3月1日から朝鮮半島有事を想定した合同演習を行ったことに対して反発したと言われている。新聞報道によると、北朝鮮は、安保理による制裁決議と合同軍事演習を自国に対する宣戦布告とみなしているというのである。
米軍は、例年通り、2月21日に北朝鮮に対し合同演習の通告を行ったという。また、韓国統一省によると、3月11日に南北朝鮮のホットラインを通じて2回接触を試みたが、北朝鮮の応答はなかったという。北朝鮮による休戦協定の白紙化宣言により、朝鮮半島の情勢は、俄かにきな臭くなってきた。
国連安保理は、1950年6月25日、北朝鮮による南進が国際平和の破壊を校正すると決定し、27日に平和と安全の回復のために必要な援助を韓国に提供するよう国連加盟国に要請した。7月7日には、兵力その他の援助を米国の統一司令部に提供するよう要請し、国連旗の使用を認めた朝鮮国連軍を設置した。朝鮮国連軍および北朝鮮軍と中国義勇軍との戦闘は一進一退を繰り返した後、1953年7月27日に休戦協定が締結され、朝鮮戦争は停戦した。
独立達成後間もない韓国は、国連加盟国ではなかったが、朝鮮国連軍の一部として米軍指揮下で戦闘を行った。韓国軍は、休戦協定締結後も朝鮮国連軍の一部として、今日まで板門店等で任務を遂行してきた。米軍は、韓国が単独で北朝鮮に侵攻しないよう、いわゆる「ビンの蓋」の機能を果たしてきたが、韓国の強い要請により、2015年に北朝鮮に対する戦時作戦統制権が韓国軍に移行する予定である。3月1日から開始された米韓合同演習は、作戦統制権の移行をにらみ、韓国側が計画段階から主導し、朝鮮半島有事を想定したものであったことから、北朝鮮の反発を招いたともいえよう。
朝鮮戦争の休戦協定は、国連軍および北朝鮮軍と中国義勇軍の各司令官が休戦協定に調印し、北緯38戦軍事境界線の設定、双方の軍隊の軍事境界線外への撤退、捕虜の取扱い、軍事休戦委員会の設置、中立国監視委員会の設置等が規定された。軍事休戦委員会による講話の商議は、協定締結後暫く間行われていたがやがて中断され、今日、韓国と北朝鮮が同時に国連加盟国となり、講和の商議を再開する目途は立っていない。
休戦協定は、通常、兵力間の戦闘や作戦行動を停止するのみであって、海上捕獲その他敵国民財産権の侵害、敵国の封鎖、禁制品輸送の遮断は禁止されず、休戦期間における兵力の強化や武器弾薬の増強も禁止されなかった。換言すると、休戦協定に特別の定めがない限り、戦闘行為は休止されているが戦争状態は未だ継続中なのである。ハーグ陸戦法規(1907年)によれば、休戦協定の重大な違反があれば、他方当事者は休戦協定廃棄の権利を有しているのみならず、緊急の場合は、直ちに戦闘を開始することができる(40条)。
朝鮮戦争の休戦協定は、休戦期間、戦闘再開手続き等についての規定が見られない。したがって、北朝鮮による今回の休戦協定白紙化は、米韓合同軍事演習がハーグ陸戦法規に規定する「休戦協定の重大な違反」を構成すると判断していると思われる。米軍は、例年通り事前通告を行ったとはいえ、北朝鮮が国連安保理の決議採択と米韓合同軍事演習を「緊急の場合」と判断し、直ちに戦闘を開始する可能性は、これを否定できない。朝鮮半島の安全保障情勢は、「白紙化宣言」が単なる政治的なプロパガンダならともかく、「非常に深刻」な状況に入ったといえよう。
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