理事・政治評論家
 屋山太郎



  

官民格差の是正を急げ
―労使の癒着と馴れ合いを許すな―

 橋下大阪市長が、市職員組合や教職員組合に対して「厳しすぎる」とか「対決を煽る小泉式やり方だ」と批判する向きがあるが、その批判は見当違いだ。
 これまで大阪市当局と組合は癒着し過ぎた。本来、議会が厳しく市政をチェックすれば、その癒着は糾されるのだが、押しなべて地方議会は与野党が馴れ合い、当局が組合とも馴れ合う。首長選で与野党が共同で推薦などというのは馴れ合いの最たるものだ。
 大阪の市バス運転手の給与は739万円で関西の同業5社(544万円)より3.5割も高い。橋下知事は現業職員給与を民間並みに引き下げるよう指示した。市交通局は市バス運転手の給与を450万円ほどにカットする給与改定を申し入れた。これは橋下氏の選挙公約だった。ところが昨年11月、橋下氏の市長当選3日後、大阪市交通局と大阪交通労働組合(大交)との間で「給与協定については1年間今まで通り」との協約を結んでしまっていた。橋下市長は給与引き下げを1年間見送ることを余儀なくされた。
 この一件を見てもわかる通り、交通局幹部と大交との癒着は常態化し、管理職人事や職員採用に当たっても組合が介入した事実が次々に暴かれている。この調査は庁内のメールを見ることで発見されたものだが、平松邦夫前市長を応援する選挙運動メールも多数発見された。組合はプライバシーの侵害などと言っているが、もともと庁内メールは私用に使う場合は届け出が必要とされている。
 もしこれで平松氏が再選された場合どうなるか。もちろん賃金引き下げなどできるものではなく、人事や採用についても組合の発言力は強まったろう。橋下氏はこの「組合天国」が状態化していた問題について「出直しが必要」と宣言している。組合事務所の庁舎からの退去も労使、癒着体制清算の第一歩だ。
 そもそも職員給与については条例で定めることができる。議会が人件費総額を示せば、首長はその枠内でしか給与を支給できない。労働協約権を組合に渡せば、国家公務員も含めて、給与は際限なく上がると自民党などは主張しているが、当局が腰を据えれば組合の突き上げで暴騰などはあり得ない。
 地方自治が活性化しないのは、まず補助金や交付税を国に握られ、行政がカネによってコントロールされるからだ。次に既存の配分形態を破ることは難しい。事業によって若干の差をつけるぐらいのことしかできない。
 こういう状態の中で首長と事務当局が鋭く対立することは起こりようもない。“仲良く”することがやがて癒着に繋がって行く。同様に議会も与野党で同一の首長候補を推薦するようになる。
 加えて国は30万人の国家公務員のうち、22万人を国の出先機関に配置しているのである。地方分権、地域主権を勝ち取るには革命的な政治力が必要だということがわかるだろう。
                                                                                                                                           (3月21日付静岡新聞『論壇』より転載)
 
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