民主党の立て直しどうする
―最早、親中路線での党運営では立ち行かない―
理事・政治評論家  屋山太郎 
 

 民主党は瓦解した党をどう立て直すか四苦八苦している。総選挙惨敗時の当事者だった前原誠司氏、野田佳彦氏、玄葉光一郎氏らはまだ「口を出す時期ではない」と沈黙しているため、海江田万里代表は相談役として自ずと輿石参院議員会長(前幹事長)に接近しているらしい。輿石氏は小沢一郎氏を引き込むかも知れない。こうなると党再建が左寄りに傾く危険性がある。
 昨年12月の民主党代表選を通じて、海江田氏は「日本社会の右傾化」を指摘し「寛容な中道」を唱えていた。海江田氏は漢籍や唐文に強いせいか、根っからの親中派と見做していいだろう。親中派の欠点は当然ながら中国の悪意を見抜けないことだ。一方で旧社会党出身者らはイデオロギー上の親中派だ。輿石氏などは山梨県日教組の委員長で、左派偏向教育の責任者と言われた人だ。
 民主党を政権に導いた功労者は鳩山由紀夫、菅直人、小沢一郎のトロイカと言われた人達だが3人に共通するのは強烈な親中派ということである。鳩山氏などは1月17日「南京虐殺記念館」を訪問して謝罪の言葉を述べている。同館の陳列物や記録がウソ満ちていることは予て指摘されており、それを実証する本まで出版されている。小沢氏も含めてこういうのを盲目的親中派というのだろう。
 昨年末、内閣府がまとめた外交に関する世論調査によると中国を「嫌い」という日本人が8割もいた。因みに韓国嫌いは6割である。この「嫌い」傾向は尖閣問題の勃発以前から続いており、鳩山氏が普天間の移転先は「少なくとも県外」といって、日米関係を破壊してから強まった。
 民主党が政権を獲ったおかげで得られた教訓は「日米同盟以外に外交の基軸はない」ということだ。ベトナムはカムラン湾に巨大な港を造って米海軍に使用させるという。インドネシアは潜水艦を11隻(現2隻)建造(ロシアに発注)するという。こうした動きは全て対中戦略に由来する。安倍政権が東南アジア各国との協力や援助に乗り出したのも米国と共に中国を封じ込めようという外交路線からだ。
 今後、自民党に代わって政権を執る党ができても「日米基軸外交」の路線は変わらないだろう。逆に言えば、民主党没落の最大の原因は「親中路線を取った」ということに他ならない。よく「中国と友好関係を築けば日中親善が成る」という人がいるが、中国は「水に落ちた犬は打て」という国である。日本が米国離れを起こした瞬間に中国は日本叩きを始めた国だ。古来、中国は周囲の国に朝貢を求め、次いで冊封国家とし、次に併呑した。いま中国の中心に位置する万里の長城の北側は、かつて匈奴(北方民族)の国だった。
 日本人の中国観は聖徳太子の時代から変わっていない。いないからこそ日本は中国の属国にならなかった。民主党はこの日本人の歴史観を共有しない限り、政権政党に返り咲くことはできないだろう。
                                                                                                                        (平成25年1月23日付静岡新聞『論壇』より転載)
 
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