進まない民主党再建
―依然イデオロギーの違いが党内結束を阻む―
理事・政治評論家  屋山太郎 
 

 民主党が参院選に向けて党再建に四苦八苦している。日本維新の会のように政策において賛同している同士の場合は、多少の齟齬があろうと話し合いで結着がつけられる。維新が全国制覇を展望できるのも、最大公約が受け入れ易いと自負しているからだろう。
 そこにいくと民主党の基本政策はもとから対立しているから、政権を失ったからといって総懺悔して一気に出直すわけにはいかない。先に社民党から民主党に移籍した女性議員は「尖閣に海上保安庁の船を持ってくるからトラブルを起こすのよ」と平然と言ってのけた。旧社会・社民党以来の非武装政策のイデオロギーから抜けられないのだ。こういう手合いが仲間にいる限りイデオロギー親中派は思想が改まることはない。国際情勢は様変わりしているのに、新しい情勢を受け入れて考え直すことができないのだ。
 安倍首相はせめて改憲を容易にする96条の改正を提唱している。議会の半分が賛成すれば改正条項を提出できるというのは世界の常識だ。民主党憲法調査会は平成16年にOKを出したが、17年になるとNOである。イデオロギーがからまっているから同一意見に集約できないのである。
 民主党憲法調査会は4日の役員会で安倍首相提案の96条改正について「改正不要」との結論を出した。しかし民主党は16年に発表した「創憲に向けて」96条改正を打ち出している。17年の「憲法提言」では明記してあったから、新時代に向けて党内民意が動いてきたものと思ったものである。
 こういう“イデオロギー”案件は国際情勢とも関係なく動く。動くに当って原則がない。周囲の国際状況とも関係がない。
 海江田代表は社会党系の輿石幹事長と連携し、“党外”の小沢一郎氏とも気脈を通じようとしている。しかし、岡田克也氏、野田佳彦氏、前原誠司氏といった“近代政治家”は政治資金で政治家を縛る手法を嫌悪しているから、小沢グループの脱党を喜んでいる風がある。このため海江田氏の行動を制肘している。
 かといって海江田氏が党内に向けば、守旧派代表との対決がある。補正予算には、前原誠司前経済財政相はコンクリートへのバラマキだとの理由で反対。加えて一括交付金が紐付き補助金を復活させているとの事情だ。
 前原氏は今のままで87人の現職を抱える参院選は10議席程度しか取れないと危機感を抱いている。
 その理由について前原氏や旧執行部は、信を失ったのは@天下り根絶 A公務員制度改革 B地域主権といった民主党本来の政策を捨て去ったからだと見ている。この点では維新ともみんなとも共通する要求であり、同じ目標に結集して行く余地がある。その場合、支持母体の連合と距離をとれるかが問題だ。前原旧執行部は党を割ってでも目標を実行するというより、本来の目標、旗印の下に今のところ民主党をまとめていく決意のようだ。

 
                                                                                                                        (平成25年2月6日付静岡新聞『論壇』より転載)
 
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