東京五輪招致に対する韓国の政治利用
―福沢諭吉「脱亜論」必読のとき―

理事・政治評論家  屋山太郎 
 
 2020年のオリンピック開催地が東京に決まった。安倍晋三首相の最後のスピーチで、福島原発の不安も解かれたようだ。安倍スピーチの良かった点はスポーツを通じて日本がこれまで3000人以上のスポーツインストラクターを世界に送っていることを紹介したことだ。日本人はスポーツを通じてフェアプレイの精神を学んでいる。私も武士道というものを自覚するようになったのは、学生時代に剣道に精進したからだと思う。日本人のことだから大会運営や施設の準備は怠りないだろう。些かも心配していない。最も願うのは日本の精神文化の発信である。昨年夏、フランスとスペインの国境に存在するバスクという田舎町に滞在したところ、本屋の店頭に日本のマンガ本が平積みになっているのを見てたまげた。日本のマンガ文化がどのくらい凄くて、面白いのか私にはまだわからない。しかし、これだけ世界でもてはやされているのは、日本人の精神風土、洒落っ気などが人々を引き付けるからだろう。最近、宮崎駿の「風立ちぬ」を見て感動した。
 それにしても隣国韓国が「東京はオリンピックに相応しくない」との宣伝を始めたのには驚いた。さらに驚いたのはIOCの開催地選考が7日に決まるという前日に「福島など8県からの水産物輸入を前面禁止する」という発表である。日本政府の方針は、産物は徹底して調べ、基準を超えたものは流通させないというものである。ヤミでも流通したことが判明すれば、無害なものまで風評被害を受ける。もともと日本の防疫態勢は優れたもので、世界で1、2を争う程のものだ。こういう隣国に対して、突如、水産物禁輸を発表するのは政治的目的を持った意図があったとしか思えない。
 これは勘繰りかも知れないが、慰安婦問題について、日本の返答がないから、一発かませてやれということだろう。日本政府は、慰安婦補償問題は日韓基本条約で決着済み。徴用工への補償は日韓請求権協定で解決済みとの立場である。韓国政府もこの解釈で解決済みと了承したことがある。ところが最近ソウル高裁などが決着を引っくり返した。韓国の司法は政府方針など平気で引っくり返す力を持っているらしい。韓国の国柄について福沢諭吉は「脱亜論」でこう書いている。(難解な文語文は渡部昇一氏の訳による)
 「不幸なるは近隣に二国あり。…この支那・朝鮮の二国の者たちは自分の身の上についても自分の国についても改進の道を知らない。
一から十まで外見の虚飾のみを事とし、…真理原則の知見なきのみか、道徳さえ地を払い、残酷破廉恥を極め、なお傲然として自省の念なき者のごとし。さればわが国は隣国の開明を待ちてアジアを興す猶予はあるべからず。…我は心に於いてアジア東方の悪友を謝絶するものなり」
 いま韓国は経済も政治も中国と一体化の道をたどりつつある。まるで日清戦争前夜の様相だ。経済界も脱亜論を読み直すべし。
(平成25年9月11日付静岡新聞『論壇』より転載)
 
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