NHK新会長 籾井勝人氏就任会見に思う
―偏向報道に対する考えを率直に表現する度胸を持つ見事な常識人―

理事・政治評論家  屋山太郎 
 
 NHKの新会長になった籾井勝人氏の就任会見を清々しく聞いた。というより紙面で繰り返し読んだ。私の知る限り、自らの見解を就任会見でこれほど淡々と語った会長はいなかったのではないか。
 「会長の職はさておき」と断って持論を語ったが、追求したい記者から、これは「公式の会見だ」と言われて「では全部取り消します」と述べた。件の記者は「取り消せない」と食い下がったようだが、「会長としては答えられないが、それだとノーコメントばかりになるから『さておき』と断った」と言う。
 籾井氏の放送に対する姿勢は不偏不党を定めた「放送法の順守」だという。籾井氏は経済界で生きてきた人で、政治の世界には出入りしたことはないようだ。“安倍人事”だと騒がれたことがあったが、安倍首相も菅官房長官とも全く交遊がなかった。籾井氏はNHKは「尖閣や竹島の領土問題の発信が少ない」と強調した。また総理の靖国参拝について「信念で行かれたことでそれはそれでよろしい。いいの悪いのという立場にない」―と歯切れがいい。「報道姿勢としてどうか」と突っ込まれると「ただ淡々と総理は靖国に参拝しましたでピリオドだろう」と言う。
 これまでのNHKというより全放送がさも事件のように取り上げる様を見て、一局ぐらい淡々と扱う局があってもよかろうと思っていたが、NHKの立場なら「淡々と」で結構だ。世論調査では約半数の人が首相の参拝を肯定的に見ている。批判的に見ている人の心情は、これで中・韓との間に波風を立てない方がよいという遠慮があるからだろう。かつて朝日新聞は靖国、教科書、慰安婦問題など、自らの社論と反対の言論や行動に必ず「アジア諸国が反発している」と報じたものだが、いま騒いでいるのは「中・韓」の2国だけ。言い換えれば朝日と中・韓の間だけで一致する意見が社論なのだ。「中・韓が怒っている」と言えば福田康夫元首相などは「人の嫌がることはしないのが外交常識。人と人の関係も同じでしょ」と言っていた。この外交常識がそもそもの非常識なのである。中・韓がなぜ靖国、慰安婦を問題にするかと言えば、日本のマスコミが針小棒大に中・韓の意見を取り上げて、日本の政府を叩いてくれるからだ。
 現在、中・韓を嫌う人が世論調査では実に8〜9割を占めている。朝日、毎日など大新聞が急速に部数を減らしているのは“日本叩き”が不愉快だからではないか。
 慰安婦問題について質問された籾井氏は「韓国だけにあったと思っているのか。戦争地域にはどこでもあったと思っている。ドイツやフランスにはなかったと言えるのか」と反問している。見事な常識を備えた人物だ。
 歴代会長も同様の認識をもっていたと思うが、籾井氏は率直に表現する度胸をもっている。NHKが視聴料を徴収しながら民放同様の馬鹿げたバラエティ番組を作り、韓流ドラマを放映するのはふざけている。
(平成26年1月29日付静岡新聞『論壇』より転載)
 
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