左翼終焉の時代到来
―「積極的平和外交」に日本の在るべき姿が見えてくる―

理事・政治評論家  屋山太郎 
 
 安倍政権が誕生して以来、日本は“右傾化”したと言われる。米国のマスコミや国務省でも右傾化の懸念が語られ、日本の政界でも右傾化がさも悪いことのように言われるのは何故か。
 安倍氏は自らを保守本流と位置付けているが、その意味は古来から続く日本の伝統、文化を取り戻そうというに過ぎない。日本の文化を極端にねじ曲げたのは米国による占領政策だろう。7年間の占領政策によって日本の文化は根底から変えられた。悪いものが修正されたとか、変えられたのなら、それでいい。しかし占領軍が最も勘違いしたのは「皇国神道」だろう。神道は古来、日本に根付いて天変地異の多い日本人の魂を支え続けてきた。その神道が悪とされたのは、軍部が神道を軍国主義と結びつけ、「皇国神道」を道具として使ったからだ。米国では「State Shinto」と訳され、神道自体が軍国主義のイデオロギーと見做された。あらかたの宗教学者は、皇国神道は軍部が咲かせたあだ花という認識である。青春時代に大正民主主義を体験した私の父の世代はあからさまに「軍部が神道を利用している」と非難していた。
 いずれにせよ米国の日本の悪の病巣は「皇国神道」であるとの断定で、敗戦の年の12月、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)が「神道指令」を発して、神道にかかわる祭りや学級単位の神社参拝など公がかかわることを一切合財禁じたのである。剣道などのスポーツまで禁じるなど、誠に違和感のある指令だった。
 教科書も一斉に書き替えられ、若者は古来の文化伝統から遠ざけられた。古い世代からみると日本人特有の謙譲の美徳などと縁遠く「アプレ・ゲール」(戦後派)と呼ばれた。占領は7年間で終わったから神道指令も当然、廃止して然るべきものだったが、混沌の中で育った左翼思想がこの“脱日本人思想”を利用し続けたのである。
 中国やソ連(現ロシア)、北朝鮮と手を結び、その外圧で日本に革命を起こそうというのが左翼思想の狙いだった。米国は日本が共産化しないために、日米安保条約を結んだ。日米安保の効力はオバマ大統領の出現までは盤石だった。しかし中国が20年間の軍拡で強敵になってくると、米国は力で押える政策ではなく、話し合い路線を模索するようになった。日本の危機である。
 安倍外交は「積極的平和外交」を掲げて、中国を取り巻く国々と友好関係を構築しつつある。一方では、国内の親中派は極端に少なくなっている。「中国が嫌い」が9割、「韓国が嫌い」が8割という世論調査がある。自民党内の左派、中国派は「安倍は中国ともっと話し合うべきだ」(野中広務元幹事長)などと言うが、断わっているのは中・韓の側なのである。安倍氏が膝を屈して、何かを乞う立場ではない。
 安倍氏にとっては憲法改正、集団的自衛権の行使、教育全体を蝕んできた教育委員会制度の改革、靖国参拝の機が転がり込んできたのである。神道指令などはとっくに終わるべきものだった。左翼終焉の時代がきたのである。

(平成26年2月19日付静岡新聞『論壇』より転載)
 
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