地方の独自性阻む中央集権官僚制
―「維新」第2極としての役割担うか―

 
理事・政治評論家  屋山太郎 
 
 みんなの党と袂を分かった「結いの党」は維新の会との合併交渉を急いでいる。代表の江田憲司氏は政界第2極の形成の中心に橋下徹氏(大阪市長)を担ごうという認識だ。これに対してみんなの党は代表の浅尾慶一郎氏が与党に是々非々の立場で協力するとの考え方だ。与党との“協力関係”を保って、「みんな」の政策を実現させられると考えている。
 江田憲司氏は維新共同代表の橋下氏とはかつて「みんな」と衆院選の選挙協力をやって以来、ウマが合う関係だが、合併交渉は目下、石原慎太郎共同代表と行っている。
 石原氏が固執しているのは党是として「自主憲法の制定」を打ち出すことだ。江田氏を護憲派だと決めつけて合併に反対している。石原氏のいう「自主憲法」論は米軍の占領が終わったのだから、現憲法を廃止して、真っさらな憲法を創るべしという論である。東西に分割されたドイツは憲法は統合の暁に創る。それまでは「基本法」で行くとの方針だった。ベルリンの壁が崩れてのち、晴れて憲法を創った。石原氏はこれに倣って現憲法を破棄せよと言う。現憲法が占領軍の手の下で1週間程度で創られた事実は誰でも知っている。内容に不備が多いことも知られている。しかし帝国議会で新憲法が制定され、これを基本に50年以上もの間に、関連法案が何千も可決され、執行されているのである。
 憲法改正論者でも「一旦廃止しろ」との議論にはついて行けない論者が多い。石原氏は一党くらい、これを主張する党があってもいいだろうと考えているようだが無理筋ではないか。
 憲法上の喫緊の課題は「集団的自衛権の行使」問題だろう。もともと権利があって行使できないという内閣法制局の解釈は明白に間違っている。「行使できる」とすることで、当面の危機には対応できるだろう。
 橋下氏が大阪府、市の自治体経営に当って痛感したのは「中央集権体制」がいかに地方の自主性、特異性、独立性を損っているかだった。この一点で「中央集権打破」を唱える石原慎太郎氏と意気投合し、維新に石原氏率いる太陽の党を迎え入れたのである。
 橋下氏の不動の考え方は(1)憲法改正(2)統治機構の改革―の2点のようだ。究極的には9条改正を目指す一方、統治機構も“廃県置藩”ともいうべき形にもっていく。明治維新以前、日本は270の藩があり、それぞれの地域が“自活”していた。上杉鷹山は米沢藩に独自の産業を興し藩政を建て直した。
 道州制が良いという地方は道州単位でいいが、小藩がいいという地方は“米沢方式”で良い。地方を画一的に統制しようという発想こそが地方の活力を削いでいる。道州制についてこの30年間議論されてきたが、議論止まり。理由は官僚が中央集権制を手放したくないからだ。中央官僚30万人のうち、22万人が地方にへばりついている。この支配体制の中で地方が独自性を発揮できるわけがない。
 維新はいずれ第2極として浮上するだろう。
(平成26年5月7日付静岡新聞『論壇』より転載)

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