自公連立、継続は無理
―安倍自民党の憲法・防衛・教育問題に抵抗する公明党―

 
理事・政治評論家  屋山太郎 
 
  集団的自衛権の行使をめぐる安倍首相と公明党の衝突はのっぴきならないところまできている。第1次安倍内閣以来、安倍晋三氏の目指す日本像ははっきりしている。憲法、防衛、教育を一直線上に並べて日本を再生させようとしている。どういう国を造りたいか筋道がはっきりしているから内閣は50〜60%の支持率を保っているのではないか。その中で公明党の山口那津男代表は「ブレーキ役」だと自ら任じ、憲法、防衛、教育問題のあらゆる分野で抵抗しているようである。
 公明党が政権に参加して以来、14年間、この間、野党になることもあったが、自公体制は落ち着きを見せていた。かつての政教分離問題は忘れられていたかの如くだが、今、起こっている自公対立はまさに政教の対立ではないのか。
 公明党議員に聞くと「選挙母体の婦人部が反戦、平和だから」と一様に言う。その反戦、平和は池田大作名誉会長の持論だから、婦人部に逆らうことは池田氏に逆らうことになるのだろう。池田氏の代表的著作である「人間革命」の冒頭の一節が「戦争ほど悲惨なものはない」とあるように、著作物は反戦と平和で彩られている。憲法については“加憲”の立場だが「9条は変えない」論だ。2001年9月に産経新聞に語ったところでは「現在の日米基軸の方向性は軍事関係に偏重しすぎている。…時代遅れになると信じている」とある。
 池田氏の恐れた“日米基軸”は中国と北朝鮮の動向によって強化せざるを得ない方向に流れている。オバマ大統領は「尖閣諸島は日本の施政権の範囲に入るから、安保条約が発動される」と明言した。日本にとっての予想外は米国と軍事条約を結んでいる韓国が、闇雲に日本叩きに転じていることだ。
 その中国と韓国について池田氏はこう言っている。平成11年、池田名誉会長は中国大使公邸に陳健駐日大使を表敬訪問してこう語った。(聖教新聞、4月13日付)
 「貴国に対する創価学会の姿勢は一貫して変わりません。文化の大恩の国であり、日本は心から尊敬し、侵略の大罪を誠心誠意謝罪し、償っていかなければならない。・・・」
 また韓国について平成12年に韓国にSGI(創価学会インターナショナル)の代表メンバーと会談した時、こう述べている。(聖教新聞、5月22日付)
 「韓国は、日本にとって『文化大恩』の『兄の国』である。『師匠の国』なのである。その大恩を踏みにじり、貴国を侵略したのが日本であった。ゆえに、私は、永遠に罪滅ぼしをしていく決心である」
 この“歴史認識”は昭和30年代に受けた日教組教育が、そのまま頭に染み込んだかの如くではないか。教科書問題では池田氏は「日本もアジア各国と共同作業で教科書を作成する時期にきている」と述べているが、安重根は愛国者なのかテロリストなのか。婦人部が崇めているのが池田氏なら、連立継続はもはや無理だ。

(平成26年5月14日付静岡新聞『論壇』より転載)

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