「河野談話」の検証結果
―“方便”談話を悪用し続ける韓国の弱み―

 
理事・政治評論家  屋山太郎 
 
 “河野談話”の検証結果について河野洋平氏は「報告書に足すべきものも、引くべきものもない」と評価した。第1次安倍内閣以来「河野談話の取り消し」を公約した安倍晋三首相は「取り消す」ことの外交的反感を危惧して談話作成に至った経緯を調査すると方針を変えた。作成過程が明らかになれば、談話の成否は自ずとわかってくると見たからだが、その目的は達せられた。
 たとえ話をすると、昔、公然と通用していたことが、禁止事項になった。韓国は「だから詫び状を書け」と日本に迫り、困った河野氏が「詫び状らしき文書」を書いた。「一筆書けば今後仲良くできる」と言われて、つい相手の言いなりになった経緯(いきさつ)がわかる。その心情はわからないでもないが、外交政策としては下策である。日韓間は1965年に日韓基本条約、財産、請求権協定を結び、過去のことはこれで全て結着させるとの約束を確立した。ところが韓国は慰安婦問題は当時、全く話し合われなかったと1980年代に話を蒸し返してきた。なぜ話し合われなかったかと言えば条約締結の時点でさえ、慰安婦は日韓両国とも公認の職業だったからだ。
 問題になるとすれば、公認の職業だった時代に対価としての金銭が支払われたかどうかである。強制的に連行して身柄を拘束したうえで乱暴だけされたなら「性奴隷」と非難されても当然だ。
 河野談話が出たあと、これから仲良くしようと“方便”で出された「談話」を根拠に、韓国は米国に「慰安婦問題ワシントン連合」という組織を誕生させた。連邦や各大学で「日本軍による20万人の性的奴隷」と大宣伝が始まった。慰安婦だったと主張する中国、韓国の女性15人が、2000年にワシントンの連邦地裁に訴えを起こした。日本政府に損害賠償と公式謝罪を求める訴訟だった。この訴訟は地裁、高裁、最高裁まで持ち込まれたが、いずれも完全に却下された。却下された理由は「対価は支払われている」と商業性が認められたからだ。日本政府の「この種の案件はサンフランシスコ条約で結着済み」との主張は06年2月の最高裁判決で認められた。
 従って米国の立場は、司法も行政も日韓の過去の“慰安婦”問題を取り上げる余地がない。そこで狙われたのは立法府であり、地方議会で韓国側は“慰安婦像”を建てる運動に転化したのである。
 日本占領直後の米国の調書では、慰安婦が基地司令官並みの高給取りだったのに驚いたという。当時の「慰安婦急募」の広告には「月収300円以上」とあった。大学出の給料が30円時代の話である。この広告一枚見ても強制連行などあり得ないことがわかるだろう。
 今回の報告書では官民で「アジア基金」を作って61人に500万円ずつ支給したことは伏せられている。左派系の慰安婦団体が「受取り拒否」を強要しているからだ。なのに朴槿恵大統領は55人のオバアさんを助けろ」と言っている。

(平成26年6月25日付静岡新聞『論壇』より転載)

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