朝日の大罪は「廃刊」で責任を取れ
―吉田発言「取り消し」だけでは済まされない日本国への侮辱―

 
理事・政治評論家  屋山太郎 

 吉田清治氏の済州島における“女狩り”事件は、日本にとてつもない恥と不名誉をもたらした。核心部分をおさらいしておく。(1)1983年に吉田氏が『私の戦争犯罪 朝鮮人強制連行』を出版した (2)舞台となった済州島で89年「事実無根」の報道がなされた (3)にもかかわらず朝日新聞は16回も紙面に登場させて吉田氏の権威付けを行なった (4)93年韓国から迫られて河野談話を発表 (5)96年には吉田記述を元に国連に慰安婦20万人とするクマラスワミ報告書が出され日本政府に謝罪を求めた (6)これを受け取って07年、米国下院、オランダ下院、カナダ下院、欧州連合も同調――要するに「虚偽の話」と朝日新聞が見極めたら、この事件はなかったのである。
 一人の詐話師(秦郁彦氏)が日本に大変な恥と害悪をもたらしたが、朝日新聞が持ち上げなければ、戦後の“自虐本”の一つとして消えてなくなった事件だったはずだ。いま思い起こしてもおぞましいが、戦後10年ほどは見るに耐えない自虐本が次々に出版された1983年の時点では、その種の“病気”は収まりかけていたはずだ。にもかかわらず“反日”の闇の中に突き進んで行ったのは、朝日の持つ“左翼偏向思想”だったのではないか。
 92年1月11日、朝日はトップに慰安所開設に「軍関与示す資料」を掲げた。政府の「関与していない」との見解を叩き潰す勢いの記事だった。が、よく読むと「軍の名を騙(かた)って婦女子を集める業者に注意せよ」といった良い意味の“関与”の証拠にすぎなかった。朝日が旧軍、現政府をへこましてやろうという熱望はわかったが、既にその頃、慰安婦問題を本気で信じているのは朝日程度だった。韓国、朝日はグルになって慰安婦問題を押しまくり、遂に河野洋平氏が騙されてしまう。いまやアジア各国で日本に反感を持っているのは中・韓・朝日だけだ。
 さすがに朝日新聞はこの32年間の記事を調査して、吉田詐話師の分だけ取り上げて小さく「取り消します」と通知した。新聞、雑誌、マスコミでこれだけ国家に損害を与えた大ヨタ記事を「取り消します」だけで済むと思っているのか。
 ジャーナリストの神髄は武士道だろう。武士道の魂は潔さである。ちなみに中国、韓国には「潔さ」という言葉はないそうだ。
 新聞、雑誌の間違いをただすのは「訂正とお詫び」に決まっている。重大事件の根本について度重なる過ちを重ねながら「取り消します」だけで事が済むと思っているのか。
 社長以下、幹部が並んで「申し訳なかった」と謝るのは当然。「訂正とお詫び」の極めつけは「廃刊」で、朝日の罰の程度は廃刊相当である。かつて文芸春秋社は「マルコポーロ」という雑誌にユダヤ系の誤った記事を載せた件について「謝罪」を明確にするために「廃刊」した。朝日の鉄面皮について俳優の津川雅彦氏がうってつけのコメントをした。「左翼は謝ったことがない」。なるほど。

(平成26年8月27日付静岡新聞『論壇』より転載)

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