第2次安倍改造内閣発足
―正しい歴史認識で船出する健全な国家建設のはじまり―

 
理事・政治評論家  屋山太郎 

 第2次安倍改造内閣の支持率が5〜10%跳ね上がった。改造前も支持率は50%前後で、小泉政権時代以来の高さだった。政権の支持率が常時20%前後という時代に比べると、どうしてこうも違うのか。また、時が経つと落ちるはずの支持率が回復したのはなぜだろう。
 国民がアベノミクスによる景気回復に期待しているのは、調査を見れば明らかだが、安倍内閣の外交政策が明るい展望をもたらしたからではないか。戦後の日本は皆が下を向いて歩く趣だった。拉致問題についても官房長官や幹事長を務めた野中広務氏や河野洋平氏は、「こちらが賠償金を払わないのに向こうが拉致者を返すわけがないだろう」などと言っていた。「拉致されたのも日本が悪かったからだ」という言い分に一般国民は反論もせずに耐えていた。日本人の常識からみれば、まず「さらった人を返す」のが先で、その後に「払うべきものがあれば払う」というものだ。
 日本国民はこの逆転の発想を何十年も無理強いされてきたが、安倍氏の考え方は国民の常識の同一線上にある。「返すまではビタ一文払わないぞ」というものである。
 慰安婦問題で、吉田清治氏が“女狩り”の嘘の本を出版したのは1982年だが、10年後の1992年頃には「嘘」がバレていた。また強制連行した証拠が全く出ていないのに、政府が「強制連行」を認める姿勢を続けてきた。靖国神社への参拝は通常の国家リーダーの務めるべき役割である。戦後70年経っても日本に対して「許さない」という資格が中国にあるのか。
 日本人は理不尽な縛りに息がつまる思いで生きてきたのだ。安倍首相は拉致問題で国民の想いと共に強気の攻めを見せている。「河野談話」は取り消さないと言いつつ、談話形成の事情や手順を“検証”して発表した。「河野談話」は相手の顔を立てるために、偽(ニセ)とわかった借用証に判を押したような話である。朴槿恵大統領がそのニセ借用証どおりに金を払えと言っている図式もはっきりした。今まで遠慮を重ねてきたが、隣人がとんでもない嘘つきだと国民は認識した。日本人は自分が悪いことをしていないという自意識が必要なのだ。慰安婦問題で韓国や左翼政党と歩調を合わせてきた朝日新聞が“吉田証言”は誤りで16本書いた記事を取り消すと書いた。
 昨年末の安倍首相の靖国神社参拝については中国、韓国も米国務省までが文句をつけた。しかし、5月30日シンガポールのアジア安全保障会議は、日本人が自信を持つために中継して貰いたいような内容だった。
 安倍首相は南シナ海・東シナ海について「法の支配を強調し、積極的平和主義を唱え、集団的自衛権を行使できるよう国内体制を整える」との基調講演をし満場の拍手を浴びた。このあと一人の軍服を着た中国人が「安倍総理は靖国を参拝したが中韓をはじめ日本軍に殺害された人にどんな態度を示すのか」と問うた。安倍首相が「国のために戦った方々に手を合わせ冥福を祈るのは世界共通のリーダーの姿勢だ」と答えると万雷の拍手が轟いたという。

(平成26年9月10日付静岡新聞『論壇』より転載)

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