聖徳太子・福沢諭吉の中韓観に学べ
―日韓関係改善を急ぐことはない―

 
理事・政治評論家  屋山太郎 

 森喜朗元首相が韓国を訪問し、朴槿恵大統領と会談した。来年の日韓国交正常化50周年に向け「未来志向の関係に発展することを期待する」と挨拶したという。朴大統領の側も対日外交の強硬姿勢を軟化させており、関係改善に向けた動きに一歩進みそうだという。
 隣国と仲良くすることは平和構築の基礎だが、仲良くしない、距離を置くというのも外交の重要な手段だ。1885年、福沢諭吉は「今の支那朝鮮は我が日本にとって髪一筋ほどの助けにもならぬ」「これを同一視し、(西欧が)支朝の評価によってわが日本を判断することもあり得る」「悪友と親しく交わる者もまた、悪名を免れない」「我は心において東アジアの悪友を謝絶するものである」―と書いた。
 これより1700年前にも聖徳太子が隋の煬帝に「対等外交だよ」という旨の書を送っている。
 日本人は日韓併合によって隣人が相変わらず“悪友”レベルの人だとは思っていなかった。現在の台湾の人のように日台で共有した50年間の絆は容易に崩れず、共有したモラルも続いていると思っていた。しかしセウォル号沈没事故の顛末や大統領のウワサをコラムに書いた産経新聞の記者が当局の取り調べを受けるなどは普通の国とは全く違う。
 慰安婦問題は65年の「日韓基本条約で解決済み」というのは国際司法裁に持っていけば、その日のうちに片が付く話だ。ところが韓国の最高裁は政府に「日本と交渉せよ」と判決する。行政府と司法府が未分化という点で隣の中国と同じだ。慰安婦は20万人と言い張ってアメリカの市に慰安婦の銅像を建てて歩いており、朴大統領は「恨みは1000年忘れない」という。米欧の議会で日本が「歴史問題に取り組んでいない」と告げ口外交をして歩いている。
 その根拠が朝日新聞が権威付けた吉田清治氏の「済州島における“女狩り”」の作り話である。出版は1983年だが、92年には専門家による実地調査によって“事実無根”と断じられた。吉田本を根拠に国連人権委員会が「慰安婦が20万人で性奴隷として扱われていた」というクワラスワミ報告書が書かれた。これに基づいて米議会などが日本非難決議を次々に可決した。
 日本人は「存在したこと」を「ない」とは言わない潔い民族だ。しかも慰安婦問題については否定する側に根拠があると日本人は知っていた。そういう公正な世論に逆らって朝日新聞だけが頑張った。なぜ頑張ったのか。現政権を痛めつける狙いがあったのだろう。朝日の「安倍叩き」は「社是だ」と幹部連中はうそぶいていた。
 慰安婦を性奴隷にまで“昇格”させた物語は、8月5、6日の紙面で朝日が“吉田証言”を「全部取り消す」と発表したことで根拠のない論争となった。
 朴大統領は全く根拠の無い問題で各国に“告げ口”をして歩いたのである。少なくとも日本は先方が謝るとか、代が代わるまで付き合わない方がいい。時間の無駄だ。


(平成26年9月24日付静岡新聞『論壇』より転載)

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