片山虎之助氏の旧態依然の「韓国観」
―韓国の中国属国DNAは今も抜けない―

 
理事・政治評論家  屋山太郎 

 片山虎之助・維新の党国会議員団政調会長は日中韓が角突き合せている現状がどうにも理解できないようだ。先日の記者会見で、「日本も韓国も組んだ方が絶対得だ。そのためには歴史認識が大切だ。これを乗り越える知恵が必要だが、韓国の方がよくない」。
 この発言は極めて妥当のようだが、国際情勢の捉え方が旧態依然すぎる。アジアの情勢を片山氏は韓国の仮想敵国は北朝鮮。そのために米韓条約がある。日韓が仲良くして初めて米韓条約が強化される―と解釈している。
 こういう状況だから韓国が歴史認識を理解さえすれば日韓関係はよくなるはず、と片山氏は見る。しかし韓国のいう「歴史認識」は「慰安婦問題」に他ならず、これを棚上げするとか、吉田清治証言を朝日が取り消したのだから“帳消し”にするなどと言ったら、韓国では政界・言論界・学会の誰でも政治生命を失う。片山氏のような日韓併合の時代をよく知る人は「歴史問題」というと併合時代のことかと思うようだ。この時代を検証すると「朝鮮人にも日本臣民と同等の地位を与える」のを原則としたから、西洋諸国のアジア植民地化とは全く異なる。文字通りの合邦化(アネクゼイション)というのが相応しく、韓国ではその時代の経済成長や教育水準の向上を評価する文献が数多く出たほどだ。ところが今はそういう言説を吐く人間は“国賊”と見做される。何が何でも「反日」を叫ばないと国への忠誠心は否定されてしまう。
 片山氏が想定している韓国を取り巻く情勢は様変わりしているのだ。韓国にとっての最大の敵は日本だから「反日」に繋がることなら何でも正しい。日本人には朝鮮戦争が焼きついているから韓国の敵は北朝鮮と義勇軍の名で参戦してきた中国軍である。共に敵が共産主義国だからこそ米韓同盟も成り立った。
 しかしそれ以前、韓国が安住していたのは中華圏である。1500年の冊封国家を経て、明から李朝を名乗ることを許された。李朝は500年に亘って両班(ヤンバン)と言われた貴族が支配した社会で、最後は清国が進駐するようになった。それに反発した日本が清軍を追い出すために日清戦争を起こした。日清講和の下関条約の第1条は「これにて朝鮮の独立を確認する」旨を謳ったが、結局併合された。
 韓国の目下の関心は中国と北朝鮮といかに融和するかであって、その合言葉は「反日」である。伊藤博文を暗殺した安重根の記念館を旧ハルピンの駅に建設して中・韓の親密さをアピールした。かと思えばアメリカで慰安婦の碑を建設する運動をしている「挺身隊問題協議会」は北朝鮮の別働隊とも言われている。韓国は何かにつけ日帝36年間の支配を持ち出すが、その期間は500年の中国の属国よりよほど良かった。そうは思えないから、片山氏のように「日韓で組んだ方が得だ」という言い分になるのだが、韓国は中国に5千年支配されたDNAが抜き難いのだ。福沢諭吉が“脱亜論”を書いたわけだ。中国を敬して遠ざけよ。



(平成26年11月5日付静岡新聞『論壇』より転載)

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