民主党代表選に見る党の体質
―“ご本尊”なき政党の患部治療はできるのか―

 
理事・政治評論家  屋山太郎 

 民主党代表選は岡田克也氏が細野豪志氏と決選投票を制して代表に就いた。今回の代表選を見る限り、民主党が抱える3つの問題点はそのまま残った。第1に選挙の回を重ねて行けば、いずれ政権政党になるとは誰も考えないだろう。
 岡田氏は生粋の民主党育成派で、民主党一体感を示して行けば、やがて政権政党に育っていくと思っているようだ。だからこそ細野氏の分割・合併の動きを鋭く追及した。第2に細野氏は政権党に飛躍するためには欠陥を振り払い、政権政党へのイメージを拡大しなければならないと考えていたようだ。はっきり言って民主党には、自民党のように結党以来の憲法改正といった“ご本尊”がない。岡田氏が分割や解党をそれほど惜しむなら、第3に誰もが尊重する民主党のご本尊を示してもらいたい。ご本尊を持たないからこそ、小沢一郎氏にかき廻され、党分裂を招いてしまったのである。
 昨年12月の衆院選は自民、民主、維新の三つ巴となった20選挙区は、自民の16勝4敗に終わった。仮に民主と維新が調整し「統一候補」で臨んでいれば、自民の4勝16敗に終っていた。平成24年の衆院選では自民、民主、維新の3党がそれぞれ候補を立てた選挙区が136を数えた。これに対し先の選挙では民主と維新の候補の一本化が進み、三つ巴の戦局を20まで減らした。これをもう一歩進めれば、少なくとも現状よりは有利になったろう。
 総選挙前、民主は3ケタはとるだろう。維新は半減するのではないかとの観測が強かった。フタを開けてみると民主はわずか11増の73、維新はマイナス1の41に踏み止まった。
 民主の姿は小沢氏がかき廻した時点に止まっている。維新は橋下徹氏が国政に進出してくる“伸びしろ”を十分に持っていると言っていいだろう。
 岡田、細野氏の悩みは長妻昭元厚生労働相の動きや処遇だろう。今回、長妻氏の出馬で改めて明らかになったのは、長妻氏を取り巻く旧社民党的体質だ。社会党、それを引き継いだ社民党が引き起こす問題の根底には常に安全保障問題がある。これを官公労組のイデオロギーとかつては切り捨ててきたが、選挙制度の改革と共に民間労組と合併し「連合」が誕生した。連合は“民間”の名前を貰って喜んだものだが、実質的にはかつての「総評」そのものである。総評と名乗るよりは「連合」の方が用心されないが、いま連合はかつての総評そのものである。
 鳩山由紀夫、菅直人両首相がいきなり“米国切り”をやって国が危くなった。米国中心に成り立っている“西側社会”で日本は居場所を無くした。民主党の再生はこの“反米”勘定を清算することだが、“民主党一体”路線の結果、民主党は患部を切除することはできまい。維新と民主が合併する事態がくれば、積年の野党の病根は失せるだろう。岡田氏は国政にかかわりつつ、患部を治療できるのか。



(平成27年1月21日付静岡新聞『論壇』より転載)

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