安倍首相の真っ直ぐな外交
―史実捏造・内政干渉に翻弄された中韓派政治家の罪―

 
理事・政治評論家  屋山太郎 

 安倍政権が誕生した時、会談の条件として中国は「閣僚が靖国神社を参拝しない」、韓国は「慰安婦への謝罪と補償を求める」と申し入れてきた。これに対して安倍首相は「条件を付けられる会談はしない」と断った。
 靖国については中曽根内閣時代、後藤田正晴官房長官が「参拝しない」と約束し、のちに福田康夫首相が「首相、官房長官、外相の三人は参拝しない」と密約を交わした。安倍氏が首相になった時「条件なし」を主張したため、福田時代に日本の大使だった王毅外相が、その密約をぶちまけた。しかし安倍氏は「そもそもそういう約束をしたこと自体がおかしい」と無視した。
 中国は靖国神社が戦犯を合祀したことを捉えて、靖国神社は戦争の象徴だとみる。アメリカも「戦争神社」(シュライン・オブ・ウォー)と呼んでいるが3つの点で間違いだ。1つは明治以来の近代日本の樹立に貢献があった人が祀られていること。2つは日本では刑期を終えれば人は皆、無実になること。その証拠にA級戦犯で6年の刑を終えた重光葵氏はのちに外相となり、国連演説も行っている。3つは死刑を執行された時点でその人達も祀られて当然ということだ。妥当かどうかは神社が決めるべきことだ。
 昨年11月北京で開かれたG20、APEC首脳会議で習主席はニコリともせず、安倍首相と握手した。自民党内の“中韓派”は安倍氏の強気をたしなめる雰囲気だった。
 この安倍・習会談で窮地に立ったのは朴槿恵韓国大統領である。朴氏はかねて日韓首脳会談の最小の条件として「慰安婦問題」に固執していたからだ。朴氏はこの問題を「歴史問題」と称しているが、歴史問題なら竹島問題もある。古くは中曽根時代の藤尾正行文相罷免事件もある。1986年、藤尾文相は月刊・文芸春秋誌のインタビューで「日韓併合問題は韓国にも責任がある」と語り、辞任を勧められたが「事実は事実」と突っ撥ねて、中曽根首相は罷免を余儀なくされた。“歴史的事実”を述べても日韓関係がおかしくなるきっかけとなった。
 1965年の日韓基本条約、財産、請求権条約で、両国が主張していた財産、請求権は互いにチャラにすることになった。当時は両国とも問題にしていなかったが、慰安婦問題が出たら、これに含まれるのは当然だった。慰安婦に限らず、請求のある人は、各自の政府に求め、国内で解決するのが条約の主旨である。韓国の慰安婦が補償しろというなら、それは韓国政府に対して行うべきもので、この道理は世界に通用する原理だ。
 しかし宮沢喜一政権になって親中・韓派の河野洋平、加藤紘一両氏らが、条約上の根拠もなく、お愛想に“慰謝料”を払ってしまった。根拠がないから「もっと寄越せ」と際限なく続くことになった。政府は「条約上の根拠がない」と強く道理を説くべきだ。言うべきことを言わないから、韓国民は得心せず、日本は払うべきものを払わないと思っている。



(平成27年2月18日付静岡新聞『論壇』より転載)

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