内政問題で「反日」を唱える中韓のお国事情
―中韓派政治家の勘違いを正せ―

 
理事・政治評論家  屋山太郎 

 自民党の二階俊博総務会長は2月に韓国を訪問し、朴槿恵大統領と会談のあと記者に対し「(朴氏の発言は)全くその通りだ。日本にも言い分はあるが理屈を並べるだけでは解決しない」と述べた。二階氏は3月には3000人を集めて訪中するという。
 安倍首相が突っ張っているから、中・韓派の自分が出向いて、かつての宮沢時代のような状況に、日本を落ち着かせようとしているかの如くだ。しかしこの日中友好策は時代遅れ。新たな外交戦略の芽を摘むことになりかねない。
 古来、中国には周辺国に朝貢させることで優位を保持してきた。朝鮮もその中華圏内に1000年もとどまってきたため、最近は日本に朝貢させようという立場だ。
 1965年の日韓基本条約締結後、1972年の日中共同声明(平和条約締結は78年)が出されたあとは日本を中国・韓国とは表向き平等関係が構築されていた。その“平等”“対等”関係が破壊されたきっかけは、中・韓共に内政がうまくいかなくなってからだ。
 65年の基本条約は現に有効で、よく出来上がった条約だ。それが30年経つと慰安婦の賠償問題が持ち上がってくる。韓国にあった日本企業の従業員たちは退職金を貰っていないと文句を言い出した。日韓基本条約は財産・請求権協定が含まれ、この協定は「これで双方ともすべての財産・請求権をチャラにする。文句がある人は自分の政府に請求せよ」という内容のものだ。慰安婦の賠償金でも、工場労働者でも“未払い金”があるというなら、自国の政府に請求すべきものだ。ところが韓国の最高裁判所は「日本に払わせろ」と判決した。
 日本は、相手がこういう理不尽、条約の主旨を違えたことを言った場合、国際的な場で怒るべきだった。相手の面子もあるだろうと哀れみをかけた。相手の言い募る声ばかりが場外に響いて、あたかも一方的に日本が悪いかのように思われている。ウソをウソだと明言しなかったばかりに「軍が関与して慰安婦を強制連行し性奴隷にした」と全世界に思われてしまったのだ。
 靖国神社問題も同じだ。戦後30年間も歴代首相が靖国神社を参拝しているのに、中国に文句をつけられて、中曽根内閣時代に後藤田正晴官房長官が「首相、外相、官房長官は参拝しない」と内緒で約束してしまった。その時の理由は胡耀邦主席が対日宥和策で下部から突き上げられているというものだった。
 安倍首相は韓国、中国の条件付き会談に対して「条件をつけるなら会わない」と宣言した。これこそが真っ当な外交だろう。
 中国が対日強硬策をとるのは、共産党独裁を正当化するためだ。「日本にファシズムが芽生えつつある。それに勝てるのは共産党だけだ」という理屈だ。韓国は日本の上に立っている自覚を得たい。その証拠の第1が竹島占拠であり、第2が日本の謝罪なのだ。



(平成27年3月4日付静岡新聞『論壇』より転載)

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