安倍政権に期待する「教育委員会改革」
―日教組組織率は激減したが実態変わらず―

 
理事・政治評論家  屋山太郎 

 安倍政権に期待した一つに教育委員会の改革がある。教育界の偏向はひどいもので、昭和期には石橋政嗣社会党委員長などは「革命は教室から生まれる」と豪語していたものだ。日教組の組織率は発足当初86%で組合が学校を覆うが如くだった。それが昨年度には24.7%にまで下落している。時代錯誤の“政治教育”に、若い先生がついていかなくなったようだ。しかし学校のあり様、教科書の内容は相変わらずの様相だった。
 この偏向教育を正すためには日教組退治しかないと思って、私は月刊「文芸春秋」の73年6月号に「日教組解体論」を書いた。日教組から凄まじい反撃を受けたが、教室は変わらなかった。組合数は激減したが、教室も教科書も変らなかった。
 奈良教育大付属中学校(奈良市)の入学、卒業式ではいまだに国歌斉唱が行われておらず、国歌は生徒らが着席したまま「君が代」の曲のみを流すという。この「君が代」拒否は、日教組の運動の一つだが、奈良の中学校では「卒業・入学」の形式は生徒が自主的に行っているという。
 教育改革で安倍晋三氏に期待すること大だったが、安倍氏は第1次内閣で60年振りに、教育基本法を改正し、それに伴って学習指導要領も変った。奈良方式は完全なる指導要領違反だが、首長や議会は最高の責任を持っている教育委員長を更迭することもできなかった。
 こういう膠着状態を一気に変えたのは大阪府知事に就任した橋下徹氏(現大阪市長)だった。離婚率や犯罪率などマイナス項目で、大阪は常にワースト5に入っている。橋下氏は「大阪が悪いのは教育が悪いからだ」と断じ、教育基本条例を作って、悪質教師を処罰できるようにした。
 教育改革の根っ子が日教組にあることは間違いないが、なぜ24.7%の組合員だけで、教育全体を引っ張ることができるのか。これが教育委員会制度を抜本から改革することになった理由だ。旧教育委員会は普通5人から成っているが、1人は専門の教育職、他はいわゆる名士ばかり。最高責任者は委員の互選によって教育の“素人”が教育委員長として選ばれるのが常だった。
 今回の安倍改革で@「新教育長」は首長が決めて議会の承認を得る A首長は教育委員長と学校経営や予算について相談できる――ことになった。これまでの教育委員長は実権がないため、組合の操り人形になっていた面がある。本来、教科書は教育委員会が会議で決めることになっていたが、日教組の側から“下調べ”と称して特定の教科書が推薦される。10もある歴史や公民の教科書のうち、一つを推薦されると拒否するのは難しい。この結果、日教組推薦教科書がまかり通った。「地方財政の3分の1を占める教育予算に首長が口をはさめないのはおかしい」という橋下徹氏の意見も通った。組合が見えないところで糸を引く隠微な風潮は成敗されるだろう。



(平成27年4月8日付静岡新聞『論壇』より転載)

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