韓国の思考停止は続く
―日本への「恨み1000年」から抜け出せない国―

 
理事・政治評論家  屋山太郎 

 日本が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関から登録勧告を受けた「明治日本の産業革命遺産」について韓国政府が猛反発している。遺産の対象となる「軍艦島」(端島炭鉱・長崎県)など7件は認められないというのである。「これらの工場ではかつて韓国人が強制徴用されていた」というのが韓国側の主張だが、日本側は遺産の対象は1850年〜1910年で韓国併合前の遺産であるという。坊主憎けりゃ袈裟まで憎いという式の言いがかりだが、この際、韓国の人に聞いてみたい。
 日本に申請を見合わせさせれば、些かの“勝利感”を味わえるというのだろうか。それを味わうことが、日韓両国のためになるのか。かつて朴槿恵大統領は米国や欧米諸国を歴訪して“告げ口外交”を展開した。告げ口の内容というのは「日本は慰安婦問題をまだ解決していない」と訴えるものだ。日本は日韓基本条約・請求権協定で解決済みという立場だ。朴以前の大統領で「これ以上要求しない」と約束してお金を持って行った大統領もいる。
 一方、安倍首相はこの4月末訪米して米議会で演説し、日米同盟の強化によるアジアの平和を訴えた。外交の格の違いを世界中に知らしめた。朴大統領は日本に対して「歴史問題」を追求し、「1000年経っても忘れない」と言うが、実際に何を根拠に何をしてくれと言うのだろうか。
 韓国が政治的にも経済的にも落ち目になっているのは、韓国の言う「歴史問題」のせいではない。韓国の儒教は日本にも存在したが、宗教ではない。社会秩序を維持する規範だ。階級制度を堅持し、家族内も格付けた。日本併合に当たって、日本は人口の3割いた奴隷を解放したといわれる。しかし漢字を学ぶ階級が至上とされ、職人の身分は蔑まれた。近年になるまで木を曲げる職人が育たず、車輪も造れなかったという。
 今でも就職時期には大会社の事務系に何十万人もが受験するという。私の大学受験の頃、社長を狙う者は「法学部」と決まっていたものだが、父は「そのうち理系の社長が続出するぞ」と言っていたものだ。社会の構造が今の韓国よりよほど柔軟だった。
 日本では棟梁や職人は目指して成る職業で、ヨーロッパでも殆どの職業にマイスター制度がある。親方やマイスターが社会的に“社長”より格が低いということはない。皆が満足するポストが多いということは、富が分配され社会の安定に役立つ。100年以上続いている工場の半分は日本に存在するそうだが、これは何千年も平和が続いた結果だろう。
 韓国の文化政策で決定的に間違えたのは、漢字交じりのハングル文から、漢字を排除したことだろう。民族意識が高揚したのだろうが、おかげで若い人は、自分の主任教授が書いた本さえ読むことができなくなった。歴史というのは自らの過ちをも気付かせてくれるものなのだ。


(平成27年5月13日付静岡新聞『論壇』より転載)

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