何でもありの日本叩き
―中韓の愚かな「戦勝」認識と日本糾弾で自国の合理化を図る米韓の「人権問題」―

 
理事・政治評論家  屋山太郎 

 日米同盟にがっしりと重心を置いた安倍外交は従来の自民党内の風潮とはかなり異なる。いつの時代でも中国に傾く重鎮や個人がいたもので、外交は常にバランスをとって操られた。
 保守本流といわれた派閥でも常に親中派が存在した。中曽根康弘氏は中国の胡耀邦主席と親しく交わっていた。しかし中国の政体では個人的交わりは永続せず、その友情によって政局がうまく転がって行くというようなことはない。靖国神社参拝が典型で、それまで歴代首相が参拝していたのに、中国国内から胡主席に「なぜ参拝を許しているのか」と突き上げがあって、中曽根氏は胡氏の面子を立てるために参拝を見合わせてしまう。
 一度「歴史認識」を変えると、次の主席も同じ考え方を強要する。仮に親日派の要人が居ても、党の「歴史認識」を変えるわけにはいかない。韓国も慰安婦についての「歴史認識」に拘っているが、中・韓両国の狙いは「日本を屈伏させた」という“歴史”が欲しいのである。
 中国は70年戦勝記念日を派手に執り行うことにしているが、日本が負けたのは米国であって、中国に負けた戦線はどこにもない。中華人民共和国は八路軍が日本軍をこてんぱんにやっつける映画をつくってテレビで放映しているが、日本軍が八路軍と戦ったことは史上ない。
 ひどいのは韓国で、1910年、日本に併合されたあと日本並みのインフラ整備を施され、農業生産は倍、人口も倍に増えた。しかし韓国の“歴史認識”では日本と戦って勝ったことにしたい。勝った証拠が竹島の奪取、慰安婦に対する謝罪だというのである。
 世界周知のことだが、竹島(独島)は李承晩という米国帰りの独裁者が、勝手に李承晩ラインという領海線を引いて、竹島を取り込んだのである。韓国は古来、竹島を占有してきたと主張するが、日本のものだとする証拠は日本側にある。
 韓国は日本に併合されるまで500年中国の属国で、国民の3割は奴隷だった。奴隷だった人達は解放され、日本の市民権を与えられ、自由世界に属したことは幸せだったに違いない。ところが朴槿恵大統領は「歴史は1000年忘れない」と言って慰安婦に拘り、日韓首脳会談を拒んでいるのである。
 慰安婦は当時、世界中にはびこっていた“商売”である。これが商行為として行われていた証言や米軍の報告は存在する。米国は「人権上の問題」として日本を糾弾しているが、米国に連れて来られた黒人奴隷は家事手伝いや労働を強要されて、給料を貰っていたのか。奴隷の人権よりは慰安婦の方が余程ましだと思うのだが、米国は奴隷制度については口を拭っている。
 米国は原爆で広島で20万人、長崎で10万人、東京大空襲で10万人の市民を焼き殺した。「市民には危害を加えない」との日本の軍規は大方、守られていた。いま米国と仲良くしていられるのは、日本人が嫌なことでも水に流しているからだ。


(平成27年5月27日付静岡新聞『論壇』より転載)

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