永続する日米同盟:「希望の同盟」
―共通の価値観追求が不可欠―

 
理事・政治評論家  屋山太郎 

 維新の党が政府の安全保障関連法案の対案をまとめることで一致した。一方、政府、与党もこれを討議の対象とすると決めたことは、国会審議のあり方に新しい風を吹き入れたばかりか、将来の野党再編の主軸が維新になる可能性をも示した。
 民主党が瓦解した最大の理由に、日米関係を破綻させたことが挙げられる。その原因は民主党内に「非武装」の勢力と「社会主義国との友好」を優先する思想があったからだろう。
 新しい代表の岡田克也氏はそういう勢力も含めて、心を一新して党をまとめようとしているようだ。維新の松野頼久代表も同様の考えで維新・民主の“連合体”ないしは合併を夢想した。民主党の失敗の轍を踏もうとしていた。
 橋下徹氏(大阪市長)は維新の最高顧問の地位にあり、本人は「政治はやめた」と言っているが、所詮、維新は橋下氏によって成り立っている。防衛について考えない、考えたくない層がいるが、“橋下切り”はできない。切った時点で維新が消滅することを誰もが知っている。
 その橋下氏が大阪府知事として登場し、直ちに成敗に乗り出したのが、教員と府の職員の“行儀”である。橋下氏は大阪府が離婚、窃盗、学力などすべての悪い指標のワースト5に入っているのは「教育が悪いからだ」と断じて厳しい「教育行政基本条例」を制定した。また職員の規律が悪いのに対して「職員基本条例」を制定した。橋下氏の人気が高いのは、政治の正しい方向を真っしぐらに走ったからだ。当然、連合を土台とする民主党は敵方の存在だ。橋下氏は自国防衛についても強い意志を示している。「やられたら反撃する」程度が良いと考えているようだ。
 岡田民主党は「あらゆる非自民勢力」を集めて、大野党を結集しようとしている。しかし労働運動が主役であるはずの組合が、政治に直接加わる、強い影響を与えるのを許容する限り、全野党を集めるのは不可能だ。かつてイタリアで50にわたる多党制の時代、選挙の際、各組合の支持は各党に分散した。日本の連合もかつての社会党系と民社党系の同盟と分離していた。それが合同してこぞって旧社会党系を利しているのは一般組合員から見て、偏向そのものに感じるだろう。組合員の数だけ票が入らないのがその証拠だ。
 米・中の間に新しい冷戦状態が出現している。当初、オバマ大統領は日本を外して米中の間に友好関係を築こうと考えた。中国の「新大陸間関係」という誘いに乗りかけた。歴史の浅いアメリカは中国についての認識が浅い。中国が勢いに乗って、あっという間に南シナ海の南沙諸島に基地を造るのを見て、怒っている。中国2200年の歴史上、6つの民族の違った国が交代したが、いずれも独裁国である。独裁国と対抗するには相手を抑止するだけの軍備を持つしかない。
 安倍首相は米国で、「自由、基本的人権の確保、民主主義」を共に追求する関係を「希望の同盟」と定義した。永続する同盟関係には共通の価値(観)が不可欠なのである。


(平成27年6月24日付静岡新聞『論壇』より転載)

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