与野党に残存する現実が見えない「親中派」
―安倍・オバマ会談の成功がアジアを救う―

 
理事・政治評論家  屋山太郎 

 安倍政権の中国政策を見て、「すっかり日中関係を悪化させた」と不満を言う親中派がまだ党内に残存している。親中派の間違いは @官民交流を手厚くしていけば、国民同士が将来仲良くなる A見守っていけば、やがて中国に民主主義が芽生える――という点だ。
 民主党政権が尖閣諸島を国有化(私有地を国が買い上げた)した時から、中国の尖閣攻勢が強化された。仙谷由人官房長官(当時)は中国漁船の巡視艇体当たり事件をもみ消そうとしたが、これは宥和政策で日中関係を親密にしていこうと思ったのだろう。このような政治家は野党民主党の大半と自民党の中にも相当数存在する。
 先日、二階俊博総務会長が3000人を引き連れて北京を訪れた。それ以前、民主党が政権を執った直後に小沢一郎氏が600人を連れて訪中し、胡錦濤主席と議員のペアの写真を撮らせたものだ。中国のトップと日本の議員の友好を深めるつもりだったのだろうか。胡主席はすでに無力化し、議員間交流の実は全くなくなった。
 中国(韓国も)は日本を攻撃する時、必ず「歴史認識」を使う。「日本は悪い国だ」と世界中に言って廻る。日本人は「これまでの歴史も含めて両国関係を見てみよう」と呼びかけるが、中韓両国は易姓革命の国だ。過去の歴史はすべて自分の都合が良いように書き改めるか、創作するのが常だ。慰安婦事件、南京事件が好例だが、これらは創作だということが世界に相当に広まってきた。慰安婦事件は朝日新聞が32年ぶりに記事を取り消した。このネタでクマラスワミ報告書が出され、米下院決議が行われた。日本外務省は元がないのだから全部取り消して貰いたいと今頃言っている。南京事件も日本の南京学会で「大虐殺はなかった」ことが証明されている。日本を貶(おとし)めて中国は何をしようとしているのか。
 安倍政権が誕生して、中国に毅然として構え、昨年5月のシンガポールのシャングリラ会議では「国際法のルールを守れ」と訴えた。
 中国は胡錦濤時代の2010年頃から、オバマ政権に「新型大国関係を築こう」と呼びかけ始めた。オバマ氏は「新しい大国が戦争になるようなことはやめよう」との趣旨だと認識したふしがある。米側からも「新大国間関係」という言語が出るようになった。ところが中国のいう大国間関係というのは、「太平洋を半分ずつ分けよう」との意味だと分かってきた。当初、大歓迎して習近平氏を迎えたオバマ氏は今は安倍首相を下にも置かぬおもてなしをしている。オバマ氏は日本への「歴史認識」と「新大国間関係」で騙されたのだ。
 この間、中国は南シナ海の岩礁を埋め立て、あっという間に東京ドームの17倍の島を造成してしまった。中国が今繰り返し強調しているのは「核心的利益を相互尊重するのが大国間関係だ」という。そこには沖縄或いは日本も入るのか。
 安倍・オバマ会談の成功は、アジアの安定につながる。


(平成27年7月2日付静岡新聞『論壇』より転載)

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