教育基本法改定による教育界の様変わり
―「道徳」の教科化で愛国心を育てよ―

 
理事・政治評論家  屋山太郎 

 教育界は安倍政権になってから、様変わりに良くなった。第一次安倍内閣の時、60年変わらなかった教育基本法を改定し、「国を愛する」ことを盛り込んだ。これに先立って安倍氏はイギリスの教育事情を視察している。60年代のイギリスは落ち目で、サッチャー時代に再興するのだが、なぜ立ち直ったのかヒントを得た。サッチャー氏ら関係者が一様に指摘したのは教育の低下だったという。
 教育基本法の改正に基いて学習指導要領も改められた。これまでの教育方針は旧社会党の方針に則って作られたようなもの。当時、中立の教師は「自由と民主主義」という言葉さえ、憚(はばか)られたという。石橋政嗣委員長などは「革命家を教室で育てろ」と公言していた。「それは教育基本法違反ですよ」と嗜(たしな)めたことがあるが、まともな言論が憚られた時代だった。
 日教組に睨まれたら、教頭試験も受けさせて貰えなかった。教育委員会は素人の5人を選んで、教育全般を見張らせるのだが、所詮、素人の集団である。首長が教育に口を出してはいけない建て前になっているのを「おかしい」と猛然と反発したのは橋下徹大阪府知事(現大阪市長)だった。「バカ文科省」「クソ教育委員会」と罵倒した。
 首長が「教育に口をきいてはいけない」という建て前の裏側で、何十年間も革新政党が教育界を我が物顔にしてきた。橋下府知事が敢然と「教育基本条例」を制定したのは、時代を画する事業だった。
 日教組はかつて86%を占めていたが、今は25%前後である。4分の1しかない勢力が全教育界を牛耳るような制度を安倍内閣は下村博文・文科相の下であらかた整理した。
 下村改革の最大の成果は教科書採択の責任を新教育委員会に背負わせたことだろう。実はこれまでも同じ責任を背負っていたのだが、日教組推薦の教科書しか採択しなかった。推薦の前に組合から「絞り込み」なるものが各教育委員会に答申される。特に「日本史」や「社会」について推薦されると教育委員は他の十種類近くの本を読み比べて、推薦書に反問することは困難だ。教科書会社も日教組に気に入られるような本を作る。朝日新聞自身がいう「角度のついた」方針が全編、貫かれている。これを読んで「愛国心」が養われるはずがない。
 日教組は「道徳」の時間を自由時間にするのが常だ。このため中教審は「道徳」を格上げして教科化するよう答申した。朝日新聞は「『改革』次々強まる国の影響力」と反対しているが、「従軍慰安婦」の強制連行を32年間も取り消さなかったのは道徳の欠落ではないか。教育基本法の改正を契機に、日本に「日本人らしい」道徳が戻るのを期待したい。
 日教組の側は最近の流れを「軍国主義化への道」と述べている。吉田茂元首相は米国と組んだ日米安保で「国賊」と呼ばれたが、死んでのち国を挙げて「国葬」が行われた。


(平成27年7月22日付静岡新聞『論壇』より転載)

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