「おおさか維新の会」と「新民主党」の連合との決別
―保守思想の新しい政治の模索はじまる―

 
理事・政治評論家  屋山太郎 

 維新の会の分裂協議は浅ましい限りだ。執行部を握る松野頼久氏、江田憲司氏らは「維新」という名前も政党助成金も持って行くと言う。小沢一郎氏が自由党時代、出て行く人達(保守党)にビタ一文渡さなかったのに等しい所業だ。
 政党は分裂する。反作用が起こって再び集合、復縁する。今回の分裂劇は民主党と手を結ぶか否かで争われた。橋下氏を擁する「おおさか維新の会」は連合と結ぶ民主党とは同席できないと言う。一方の松野氏の側は民主と連合し、候補者を調整しなければ当選できないと考える。当選第一主義は結構だが、「橋下」というカリスマが抜けたら、大衆を牽引する力はないだろう。小沢一郎氏のカリスマが消えて生活の党は一気に消滅した。今回の維新の分裂劇を裏で指導しているのは小沢氏だというウワサもある。
 民主党内では前原誠司、細野豪志、長島昭久氏らが、イデオロギーの強い連合と手を切れば、党は一段と活性化すると主張している。「連合と手を切る」という意味は旧社会党系と縁を切ることを意味する。もし、そうなれば“新民主党”は維新とも組めるし、保守思想でも自民党にいかない層を捕えることができる。
 岡田氏の考え方は反自民の諸党を糾合して政権をとるとの考えだ。そういう考えで民主党は政権をとった。ところが対米外交、対中外交のスタンスが定まらず、政権は3年3ヵ月で潰れた。また同じ路線を歩んで、政権をとるのは自民党政権が余程、失敗しない限り不可能だろう。
 一方の自民党は安倍晋三政権で落ち着いている。この落ち着きは長く続くだろう。というのも戦後、これほど外交の方針が定まったことはない。日米同盟で中国に対峙する。そのためにこそ、新安保法を成立させた。中国に対して、政府はあくまでも政経分離を保たねばならない。小泉純一郎政権の頃、財界の首脳は小泉首相に「靖国に行かないでくれ」と頼んだ。「中国で儲けることが難しくなる」と言うのである。経済が政治を振り廻して恥じなかった。等距離外交という言葉もあった。その結果、日本外交は今の韓国の朴槿恵大統領のような米中に二股かける外交になっていたのだ。
 岡田氏の“容共”的態度を見た共産党の志位和夫委員長が「自党の候補を降ろして反自民候補を当選させる」と持ちかけた。その旗じるしは「新安保法の廃止」だという。それだけでは連立政権はできないし、共産党が加勢した以上に票が減ることもあるだろう。
 集団的自衛権の行使は「憲法違反だ」と憲法学者の殆どが言う。憲法を守って国が潰れたらどうするか。潰されない責任を負うのは政治家であって憲法学者ではない。安保法をほじくる前に、どうやれば国を守れるのか語るべきだ。一連の国際情勢の変化で一国平和主義が成り立たないのはわかったろう。民主党は、がむしゃらに反安保を叫ぶ人達と離れるのが民主党再生への近道だろう。

(平成27年10月7日付静岡新聞『論壇』より転載)

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