大阪府知事・市長ダブル選挙、「橋下後継圧勝」
―「都構想」そして「道州制」への第一歩か―

 
理事・政治評論家  屋山太郎 

 大阪府知事に松井一郎氏が再選され、大阪市長には橋下氏のあとを継ぐ吉村洋文氏が当選した。両氏は今後とも「大阪都構想」の実現を目指した府・市合併を進めていくだろう。何しろ大阪市の公務員は人口比にして横浜の2倍。かつて共産党の黒田知事やタレント知事が続いて好き勝手にやっていた府政の結果だ。修理、修繕、廃棄しなければならない点はいくらでもある。橋下時代の14年2月時点で天下り団体は70から18に、天下り団体への随意契約も320件から20件に、金額も350億円から50億円に激減した。管理職の天下りは70%減となった。府・市合併は他の地方団体を強く刺激するに違いない。
 都構想には地方自治体法の改正が必要だし、いずれ道州制へと動くだろう。その方向に国政を動かす人物が必要だ。そのために橋下氏は次の衆院選に出るだろう。その強いカリスマによって再び一党を率いることは間違いない。
 今回の府・市のダブル選挙は先の住民投票に比べて、投票率がガタ減りした。半年前に、負けた住民投票なのに今回、圧勝したのはなぜだろう。その原因は自・公候補者を共産党も大応援したことに違いない。シールズの学生達が敢て目立って応援していたが、共産党は堅い保守層の心情をわかっていないようだ。
 住民投票のあと「よく考えてみたら、府・市合併がいい」と考え直した人が多かったとは思えない。むしろ「共産党と組む」こと自体に嫌悪感を持った人達が投票に行かなかったケースが多いのではないか。そう見ないと投票率のガタ減り具合と橋下サイドの圧勝の説明がつかない。これは民主党と共産党の関係でも全く同じだ。
 共産党の志位委員長は民主党の岡田代表に「安倍法制の廃案一点に絞って共闘しよう。我が方の候補者を下してもいい」と呼びかけた。岡田氏は1万票でも2万票でもタダでくる分には損はないと思ったのだろう。しかし多数派をとるには政権構想を作ることは不可欠である。志位氏は「国民連合構想」を持ち出したが民主党から異常な反発である。
 松本剛明元外相は「とっても一緒にやっていられない」とばかりに離党届を出した。前原誠司元外相は民主党の「解党」を提案したが、岡田氏は猛反発した。この一連の動きから見えることは、共産党が1万票くれたら民主党の保守派の票は棄権か自民党に行くと皆が考えていることだ。
 大阪のケースでわかるように、自・公に共産党が加わると保守層の投票行動が逆転するか、棄権するということだ。
 前原氏の解党提言は「もはや民主党の名前では政権政党として期待されない」との思いがあるからだろう。保守派は日米安保条約を危うくするほど党が転回したのは「連合の急進分子に引っ張られたせいだ」と認識している。橋下氏が「民主党は悪い政党です」と公言しているのは党内に極左分子を抱えているとの認識からだ。前原氏も橋下氏も反共の点では一致しているのである。


(平成27年11月25日付静岡新聞『論壇』より転載)

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