参院選を半年後に控えて
―岡田「民主」凋落?沈没?―

   
理事・政治評論家  屋山太郎 
 参院選挙を半年後に控えて、民主党の姿勢が定まらない。安倍首相の側は甘利明経済再生担当相がスキャンダルに発展しそうな事件を抱えている。下手をすると内閣支持率に重大な影響を及ぼしそうである。民主党はしめたとばかりに敵矢に乗ずる構えだが、敵矢だけで党勢を挽回できると考えない方が良い。
 民主党の状況は1993年のカナダの進歩保守党の零落に匹敵する。マルルーニー氏はそれまで首相・総裁として9年間政権を引っ張ってきたが、消費税問題を契機として支持率が下向。初の女性首相キャンベルに変えて93年に総選挙を打った。ところが169議席から一気に2議席に転落した。キャンベル首相も大蔵大臣も落選した。カナダは純粋小選挙区制で比例制がないから、敗北の打撃が大きいが、日本でも比例制がなければ12年の総選挙では民主党は480議席のうち27議席しか取れないところだった。実際は比例(30)を加えて57議席を取ったが政権を握っていた時の230から比べると4分の1への凋落である。次の14年の総選挙でも総勢73議席に過ぎなかった。民主党が政権を獲得した際の308に比べれば見る影もない。
 落ち目が定着した主な理由は橋下徹氏(前大阪市長)率いる「維新」に54議席を取られた結果だ。その後「維新」は橋下氏の「おおさか維新の会」と「維新」に分裂し、目下、民主党は「維新」と合併の道を探っている。
 産経新聞の世論調査によると「維新」の支持率は1.1(前回3.3)で、おおさか維新の会は4.4を示している。おおさか維新の会はさながらローカル政党のネーミングだが「維新」の4倍もの支持がある。これは橋下氏のカリスマ性に由来するのだろう。一方、「維新」は民主党との合併に当たって、維新の名を捨てた方が得策。与党寄りの橋下氏と一線を画したいだろう。
 民主党の岡田克也代表は当初、前原誠司氏や維新の「解党」提案に強い拒否反応を示していた。「次の選挙で民主党が政権を獲る」と頑張っている。しかし党が4分の1に沈んだということは同じ名前の再建はないということではないか。党員の多くはそれをひしひしと感じている。
 カナダの進歩保守党は2議席ながら次回の97年の選挙では一気に挽回を狙ったが、20議席止まり。次の00年には12議席と減り、結局、カナダ同盟と合併して「新保守党」を結成、06年には政権に復帰するのである。
 マルルーニーの進歩保守党の失敗の原因は消費税の導入とアメリカとのFTAの締結にあったと言われている。FTAのため失業率は11%に達していた。日本の民主党の没落は偏に外交・国防政策の破綻と言えるだろう。安倍氏は消費税の3%引き上げを行った上にTPPを合意まで引っ張ってきた。それでも失業率は減少し、内閣支持率は45〜50%を示している。岡田氏がやるべきことは何よりも安保反対勢力と手を切ることではないのか。そのためには「解党」が相応しい。

(平成28年1月27日付静岡新聞『論壇』より転載)
 
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