「領土を守るとは?」
― 尖閣問題から考える ―

研究員 大場一石

1. はじめに
今日は尖閣問題で世間の関心が高まっている領土について考えてみたい。私を含めて一般国民は、領土問題に関して、つい感情的になり冷静さを失いがちであるが、領土を守るということについて、きちんと整理する必要がある。


2. 国家
国家について必要な三要素というものがある。一般に国際法上で「国家」として認められるために必要な要件のことで、ドイツの法学者・国家学者であるゲオルク・イェリネックの学説に基づく以下の三要素を持つ場合、国際法上「国家」としている。
      国家の三要素
      ・ 一定に区画されている領域(領土、領水、領空)
      ・ 恒久的に属する国民
      ・ 正統な物理的実力であり、対外的・対内的に排他的に行使できる主権
我が国はこの三要素を満たしているため国家として存在し、国家である以上、三要素を守る義務が生じる。

3. 尖閣諸島は我が国の領土である。
現在問題となっているのは、我が国の領域である尖閣諸島に対して、領有権を主張する他国が直接間接の恣意行動および実力行使を行っているため、国家としてどのような対処をすべきか、ということである。
最近は紙面等で目にする機会もあるが、尖閣諸島の位置を確認しておきたい。


尖閣諸島は東経123度30分から124度35分、北緯25度44分から25度55分の間に分布する魚釣島、北小島、南小島、久場島、大正島の5島と、沖の北岩、沖の南岩、飛瀬岩の3岩礁からなる島々の総称である。沖縄県石垣市に属し、八重山列島からは北北西に約170Km、那覇からは410Km、中国大陸からは330Km、台湾からは東北東に約170Km離れている。総面積は約6.3平方キロで、富士の山中湖を少し小さくした程の面積で、一番大きい魚釣島で面積約3.8平方キロ、周囲約12Kmである。最も高いところは海抜362mで、この魚釣島は他の島と違い飲料水を確保する事ができる。
我が国は、尖閣諸島に対して、歴史的に一貫して我が国の領土たる南西諸島の一部を構成しており、サン・フランシスコ平和条約においても、同条約第2条に基づき我が国が放棄した領土のうちには含まれず、第3条に基づき南西諸島の一部としてアメリカ合衆国の施政下に置かれ、1971年6月17日署名の琉球諸島及び大東諸島に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定(沖縄返還協定)により我が国に施政権が返還された地域の中に含まれていることから、我が国の領土としての尖閣諸島の地位を何よりも明瞭に示すものであるとの見解を示している(注1)。
この我が国の主張に対して、中華人民共和国政府、台湾当局が尖閣諸島の領有権を問題とするに至ったのは以下の調査結果の出た後である。1968年10月12日から11月29日にかけて、日本、中華民国、韓国の海洋専門家が中心となり、国連のアジア極東経済委員会(ECAFE)の協力の基に、東シナ海一帯にわたって海底の学術調査を行った際に、東シナ海の大陸棚には、石油資源が埋蔵されている可能性があることが指摘された。これが契機になって、尖閣諸島がにわかに関係諸国の注目を集めることになり、1970年後半東シナ海大陸棚の石油開発の動きが表面化するにおよび初めて尖閣諸島の領有権を公式に主張することとなったのである。石油があるとの発表が無ければ、これほど問題がこじれたとは考えにくい。

4. 領土ならば、侵害されたときどうするべきか。
では、我が国の領土である尖閣諸島に対して他国が、他国が直接間接の恣意行動および実力行使を行った場合、我が国は、国家としてどのような対処をすべきなのだろうか。
領土判断は国際的に争いがある国家間で決定することであり、当事者国が同意すれば、国際司法裁判所で判断を仰ぐ事ができるが、我が国は古来より自国の領土として認めており、国際法的にもここに違法なものはないため、判断を仰ぐ必要は考えられない。
尖閣諸島の領土判断が、日本の領土であることを国際的も判断される状態にあっても、さらに国際的に状況を認知してもらうために広報活動をする必要がある。特に米国での活動は、効果的である。それは、第二次世界大戦終戦後、尖閣諸島は沖縄と共に米国駐留軍の施政下に入っており、その後、尖閣諸島を含んで日本に沖縄返還となったことから、尖閣諸島が日本に属していると連合国側が判断しているためである。すなわち米国こそ尖閣諸島が日本の領土であることを証明する重要な証人といえる。現実の多くの米国人にとって尖閣諸島の存在すら明らかでなく、どこに位置するか正確に言い当てる人は稀と思われる状況から、少なくとも米国内で話題になるための努力が必要である。
もし、他国民が警告を無視し、国境侵犯を繰り返し、強行上陸するような場合は、沖縄県警と第11管区海上保安本部による入管難民法違反として対処しなければならない。裁判でその罪を問うのが法治国家として当然の態度である。しかし、毅然とした態度で、厳正に対処するというが、事は重大である。なぜなら、歴史はこの種の小さな「小競り合い」に対し、主権国家が、どのような対処をしたかによって「戦争」に至ってしまったかという事実を残している。
このような事態で解決が見られず、不幸にして武力的衝突が発生した場合、我が国は自らの努力でこれを解決しなければならない。武力的衝突のような事態を避けるためにも、事前に十分な対処計画と実動訓練、装備の充実を図り、有事にはあくまでも主権を放棄することなく防御するという明確な意思表示をする必要がある。

5. 安全保障条約により米国は、我が国の領土の保全のために武力を行使するか。
武力衝突が発生した場合、米国が安全保障条約で我が国を守ってくれるから、我が国は自衛隊を発動させなくとも大丈夫だと考える人もいるが、日米安保条約では、日本の施政下に入っている領域に関し、日本がその自身の国の防衛力において守っている時、他国が国家成立三要素である領域を侵害する場合、日米安保5条において米国は協調行動をとるとされている。もし尖閣諸島で紛争が起これば米国は日本をバックアップするが、尖閣から12海里以上の海域となるとグレーエリアとなる(注2)のである。
 あくまでも、バックアップであって、軍事的表現において"back up"は文字通り「後押し」であって、素直な解釈としては「あくまでも尖閣の紛争では日本が前面に立つこと」をアメリカとしては条約発動の前提としていることを強く示唆している。パトリック・クローニン前米国防大学戦略研究所所長が「日本は安保条約があるから、アメリカが日本を見捨てないと信じているようだが、アメリカにはこの考えは共有されていないのではないか」という核心的質問に答えている(注3)。
米国務省のキャンベル次官補(東アジア・太平洋担当)は、上院外交委員会小委員会で、日本と中国の間で深刻な問題となっている尖閣諸島について、日本が攻撃された場合に米国が日本を防衛することを定めた日米安保条約の「明らかな」適用対象との認識を示した(注4)が、これは、日本が尖閣諸島を管理していることを「はっきり認める」とし、「よって、(米国の対日防衛義務を定めた)日米安保条約第5条の明確な適用対象となる」という意味であって、あくまでも、「島の防衛は日本側の責任」であって、仮に尖閣諸島が取られたとしても、自動的に安保条約を発動してアメリカ軍が介入するという問題ではないということである。
つまり米国は中立であって、中国が攻撃して、自衛隊が守りきれない場合、中国が押さえ続けたら管轄権は中国にいく。日本が自ら守らなければ(日本の施政下でなくなり)米国は、尖閣諸島を守ることはできなくなるという意味である。
 尖閣諸島に何か起こった場合、自動的に米国が武力を発動して我が国を守るということではなく、我が国が自力で防衛する場合にのみ、安保条約で協調行動をとるということである。まして、米国も現在一気に中国と事を構えると世界的な混乱は避けられないと考え、そこまでレベルを引き上げる時期でないと判断している可能性も高い。

6. 結論−国を守る自覚
以上から、我が国は武力衝突を避けるために、事前に十分な対処計画と実動訓練、装備の充実を図り、有事にはあくまでも主権を放棄することなく自身の力で防御するという明確な意思表示をする必要があると考えられる。何もせずに米国との安全保障条約に期待し、自分が正しいのだから、世界が認めてくれ、誰かが助けてくれるという傍観者的な立場をとっていたならば、過去の歴史を紐解くまでもなく、国を失い滅ぼす結果が確実に生ずることを自覚しなければならない。

(2012年9月24日)
注1:尖閣諸島の領有権についての基本見解(外務省)(平成24年9月)。
注2:パトリック・クローニン前米国防大学戦略研究所所長(「日米同盟」シンポジウム
米新国防戦略指針と在沖米海兵隊の意義〜普天間飛行場移設問題の展望〜平成24年3月22日)。
注3:同上。
注4:ワシントン平成24年9月20日ロイター。


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