中国航空母艦「遼寧」への艦載機の初離着艦について

監事・海洋安全保障研究会代表幹事  川村 純彦

1.今回のデモンストレーションは、失敗を恐れたためか事前に外国報道機関への通報もなく、海上が静穏で、気象条件の良い日を慎重に選んで、J-15戦闘機 2機による着艦と発艦の模様を中国の報道機関に公開したものである。
   
2.これまで、中国空母の運用開始時期は2010年代の半ばと予想されていたが、今回の情報でその予測が確認されたと言えよう。ただし、中国空母の出現で、日本周辺海域の情勢がこれ以上悪化するとは当面考えられない。
 中国空母が米空母機動部隊に対抗できる戦闘能力を獲得するまでには、更に長期間が必要である。
  有事の際、遼寧が外洋に出れば米海軍の恰好の標的となることは確実で ある。
   
3.有事における軍事能力については問題点が多いものの、平時においては周辺諸国に対する政治的圧力を加えるに有効な手段として遼寧が活用されよう。
   
4.画像を見る限り、着艦の技量は初期段階としては、あの程度のものであろう。
 発艦は、燃料タンクも武器も搭載せずに行われ、機体重量を出来るだけ減らす努力がなされたようである。
 J-15戦闘機は、運用重量が約30トンになるロシアのSu-33UB戦闘機を中国が無断でコピーしたものと言われるが、カタパルトのない遼寧から実際にJ-15を運用できるのか? 
 遼寧の能力を見極める上で極めて重要なポイントである。
 実は、1999年10月と2004年11月にSu-33UBは、遼寧に改装された旧ソ連空母ヴァリアーグと同型の空母クズネツォフでの離着艦試験に成功している。
 ただし、その際の発艦は搭載燃料を最小限に制限して行われ、Su-33UBは離艦したものの、直ちに着艦したと言われる。
  カタパルトのない遼寧で、飛行甲板(約300m)を最大限に使っても運用重量のJ-15の発艦に必要な速度を得られそうになく、発艦のためには武器や燃料の搭載量を減らして機体の重量を軽くする必要が生じる。結果として、艦載機の行動半径や攻撃力が制限され、空母としての戦闘能力は低下することとなる。
 そのような戦闘能力では米空母部隊と太刀打ちできないことは明らかである。また有事には、遼寧に陸上基地からの防護が必要である上に、外洋に進出するには潜水艦の脅威が大きいため第1列島線内の沿岸海域に留まらざるを得ないであろう。遼寧の能力を見極めるためにも、今後引き続き、空母艦載機の発艦能力を注視する必要がある。
   
5.中国海軍の対潜能力は日米に比較して大きく遅れており、中国海軍にとって潜水艦が最大の脅威である。そのため遼寧は中国沿岸海域に留まらざるを得ないが、軍事的利点から考えて、遼寧は虎の子の戦略ミサイル潜水艦を日米の対潜部隊から防護するために南シナ海に配備され、外洋には進出しない可能性が高い。
 
(11月26日)

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