1回「中国事情研究会」
政策提言委員  野口東秀
 サイバー攻撃は「第5の戦場」と言われる。21世紀の戦争において、攻守両面でのサイバー能力なくして国家は存亡の危機にさらされる。
 日本が受けたサイバー攻撃は2011年の三菱重工事件などが記憶に新しいが、企業は自社が攻撃を受けたことを公表したがらず、対策も不十分である。
 サイバー攻撃はどこから攻撃を受けたか早急に特定することは難しい。その意味で隣国、中国のサイバー能力の向上は日本にとって脅威と認識すべきである。中国は、民主化活動家や少数民族、法輪功など反政府勢力の通信を傍受、妨害するため、「金盾」などネットおよび通信を統制する技術を飛躍的に高めている。国家組織で情報を窃取する技術もハイレベルで、いわゆる「情報化工作」の重要性を認識し1990年代末から本格的に動き出した。2008年にはサイバー戦争を「第5の戦場」と認識、戦争初期においては米軍の情報統制システムを攪乱する技術を研究しているとみられる。
 軍総参謀部など「サイバー部隊」の陣容は、民間企業を装った軍系企業を含め、約40万人とも言われ、日々技術を向上させている。
 技術的な点に眼を転じると、システムへのウイルス混入(時限式でのシステム破壊型ウイルスや情報窃取型ウイルスなどさまざまなタイプがある)、パソコンの遠隔操作による盗聴、盗撮、スマートフォンを盗聴したり、遠隔操作し社会混乱を図ることも技術的に可能な時代である。
 米国は政府関連機関で中国製の部品をコンピューターや軍関連機器、兵器に使用することを規制し始めているが、日本はその危機意識が共有されていない。内閣官房情報セキュリティーセンター(NSC)があるが、総合判断権限がなく、人員も80人ほどと少ない。官僚出身者でほぼ構成され省益に左右される懸念がある。自衛隊のサイバー部隊も100人程度でしかない。組織力の強化と民間との連携、サイバー部隊の拡大強化などが今の日本に求められる。
 原発や鉄道、水道、電気など重要インフラへのサイバー攻撃に日本は対策を本格的に講じなければならない。以上の点がサイバーの専門家である伊東寛氏により明らかとなり、日本の脆弱さを改革すべきとの認識が共有された。

                                                   記

 テーマ: 「益々巧妙化するサイバー攻撃の実態」
   講 師: 伊東 寛 氏  (ラックホールディングス株式会社サイバーセキュリティ研究所所長、元陸上自衛隊システム防護隊初代隊長)
   日 時:  平成25年4月9日(火)13:00〜15:00



 Ø 過去中国事情研究会
2013年

ホームへ戻る