日韓国交正常化50周年

元法務大臣   長勢 甚遠

 日韓基本条約が調印され国交が正常化してから50周年を迎えた。6月に両国首脳は記念式典でそれぞれ「新たな未来に向けた努力」を呼びかけた。
 しかしそんなことにはならない。韓国には自主的判断能力がないからだ。
 こんな意見には反論もあろうが、過去の朝鮮半島の歴史から大局的に見てこのことは否定し得ないのではないか。
 朝鮮は気の毒な民族だ。ずっとシナに支配されてきた。それに対する恨みは深い。生きるためにシナに隷属し、シナが弱った時には自立しようとするのだが、自らシナと闘うことができず、近隣の支援に依存してきた歴史である。助けを求める対象が日本であり近くはロシア、さらにアメリカだった。そしてどこに頼るかを巡っての国内対立は悲惨なものだった。日清、日露の頃の朝鮮史を思い出すことが必要だ。シナが強くなればシナ従属に戻る。今も同じことに違いない。
 歴史認識、慰安婦問題、竹島問題が日本に対する韓国の主張だが、それが正しい主張だと思っているわけでもなかろう。韓国の強硬姿勢は、日本よりも中共依存という国内勢力が強くなったことの表れであるに過ぎない。韓国の親中共派は何でも日本は悪い国に仕立てて、国内の親日派に対抗するという戦略を取ることになるから、親中共派は親日派との対立において事の真偽はどうあれその主張を下すことはできない。親中共派は中共への従属姿勢を示すことにより中共の指示を受けることとせざるを得ないから、中共の対日方針を受け入れ、それ以上の反日姿勢を示さざるを得ない。シナが強大の時、朝鮮半島はシナ以上に反日となる宿命にある。シナに従順であることを示さなければならないからである(こういうシナと朝鮮の関係を朝貢というが、歴史学者によれば近代の植民地支配とは違うもののようだ)。とはいえシナに対する恨みは深い。国内にはシナの暴虐に対する反発勢力は常に存在し、その勢力は他の隣国特に日本に頼ることとなる。親日勢力の伸長を阻止するためにシナ礼賛、日本批判・蔑視が強調される。現在の韓国が主張する歴史認識、慰安婦問題はこの図式で考えれば、ピッタリではないか。
 シナが弱体化した時、シナに対する積年の恨みが顕在化する。日清戦争の時はシナに対抗するものとして日本が期待された。日露戦争の時は日本に期待する勢力とロシアに期待する勢力に分かれた。1945年の日本の敗戦により、朝鮮半島はソ連に期待する勢力とアメリカに期待する勢力に分かれた。日本の復興により親日派も増大した。しかし、中共が強大になるにつれ北朝鮮は中共の支配下となり、韓国においても北朝鮮との統一派が勢力を持つようになった。日韓関係が改善されるのはシナが弱体化した時であって現在はその図式が当てはまる時期ではない。そのうち韓国の親日派の粛清、日本への亡命ということが起こるであろう。もっとも日本が自立しておればだが。
 韓国に日本との関係改善の動きが出ているとか、歴史観と経済は別だという意見があるとかいう報道があるが、日本の嫌韓ムードを和らげ、韓国に妥協しようとしない安倍政権を揺さぶろうとする意図的な報道だろう。軍艦島の世界遺産について妥協があったなど馬鹿馬鹿しい。そんな表面的なもので考えてはならない。韓国内にシナに対する隷属とそれに対する反発の勢力争いはあるだろうが、当面シナ隷属派の優位が変わることは考えられない。そういう視点で見ていればわかりやすいではないか。
 現在の韓国政権は北朝鮮との融和方針であるといわれる。シナの強大化の中でシナの指示に従っての方針転換であると考えればわかりやすい流れである。北朝鮮も韓国もそれぞれ不満はあっても所詮宗主国である中共の命令には抗しがたいということであろう。
 韓国大統領はシナの抗日戦勝利記念式典に参列した。アメリカは韓国に不参加を働きかけていると報道されていたが、どうするかは韓国が判断できることではない。中共政府が中米関係の判断に立って決定し韓国はそれに従ったということだ。本来出席すべき北朝鮮の金某が式典に参加しなかったのも中共政府の指示によるものであろうし、そこに中共政府のしたたかな意図が読み取れるのではないか。まして、抗日戦勝利記念式典直前の北朝鮮と韓国の武力衝突、そして中共政府が韓国の要請を受け入れて中韓日首脳会談に応ずることにしたという習・朴会談の演出など見えやすい茶番劇である。中韓日首脳会談を韓国主導のように見せかけ、中韓が一緒になって日本を脅し上げ日米関係を牽制しようという中共の策略に韓国が従っているのは明白ではないか。
 国連事務総長が中共の抗日戦勝利記念式典及び軍事パレードに出席することに批判的な声がある(日本のマスコミでは少ないようだ)が、これについて韓国大統領選の時の中共の支持を睨んでのことという解説を聞いた。韓国人である国連事務総長が大統領選挙に意欲があるのかどうか知らないが、そうであればこの解説は誠に的を射たものと思える。韓国の現状を見事に反映しているからである。
 韓国の対日言動に不快感を持つ人は多い。しかしそれで韓国を責めることは酷である。そういう目で韓国の不当な批判、要求に耐えることが未来の日韓関係の正常化にとって最善の道であろう。韓国の要求に応じたからといって日韓関係が改善される可能性は少ない。日韓関係の改善は日本がシナの支配に服することを認めた時にのみ成り立つと考えておけば大筋間違いはない。したがってシナが強大である間は、韓国の対日要求には取り合わないのが最も賢明な方針なのではなかろうか。政府はこの基本方針に立って巧妙に外交折衝を行ってもらいたいものである。


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