怒りの声

元法務大臣   長勢 甚遠

 9月3日、中共は北京で抗日戦勝利を記念して式典、軍事パレードを行った。その前夜、友人から怒りの電話があった。私は見ていないがNHKのニュースで抗日戦勝利記念式典に参列するため続々北京入りする各国首脳の模様が放送されたそうである。それを報道する記者が「抜けるような青空のもと」と喜びの声を上げているのを聞いて、NHKはどこの国の放送局だと腹が立って仕方がないというのである。同氏によれば「抜けるような青空のもと」という形容は運動会など嬉しい時に使用される表現で、いかに天気が良かろうが葬式などよくない時には使われないものだという。
 ご説ごもっともだが、NHKが日本の放送局だと今まで信じていた友人にむしろ驚いた。NHKがそういうものであることはいつものことであって、腹を立てる気にもならない。
 北京の空が抜けるような青空であるのを見た人はないであろう。中共は抗日戦勝利を世界にアピールするため、何週間も前から北京の空がきれいになるよう強力に自動車、工場の規制を実施してきたと聞く。その結果、北京の空が抜けるような青空になったのかもしれない。それであれば、何とも珍しいことだからNHKはそのことをニュースとして報道したのである。NHKが日本の放送局であれば友人にそのようにでも言い訳するであろうが、もちろんそんなことはしないに違いない。
 中国共産党が抗日戦を戦ったかどうかは議論のあるところである。当時中共はコミンテルン(ソ連による国際共産主義運動の指導機関)の支配下にあった。コミンテルンの方針は日本を共産化すればアジアが共産化するというものであり、日本の共産化の戦略は日本を支那と長期間闘わせ疲弊させるというものであった。それに従い中共がやったことは蒋介石率いる国民党に日本との戦争を断固継続させることであった。日本軍が行ったように見せかけて支那人を虐殺し反日意識を煽ったり、逆に国民党が行ったように見せかけて日本人を虐殺し日本の対支強硬方針を煽ることを行った。日本軍との戦闘においては、将来の支那の共産化のための国民党との戦いに備えて自らの勢力を温存、強化することに専念した。すなわち、国民党軍を前線で戦わせ自ら(共産党軍は八路軍として知られる)は戦闘に加わらず、それどころか後ろから国民党軍を攻撃することをやった。そのために八路軍は残虐なものとして支那からも日本からも恐れられた。中共軍は自称するように抗日戦を戦ったわけではない。その活動は日本軍と国民党軍との泥沼の戦いを長期化させ両者共倒れになり支那を共産化させることに大きな意義があったのである。このようなことは幾多の研究によって明らかにされているところである。だからこそ欧米首脳は抗日戦勝利式典に参加しないのである。
 抗日戦勝利式典をにぎにぎしく報道する日本のマスコミを見るにつけ、電話してきた友人ならずとも、中共軍によってどれだけの日本人が虐殺されたのであろうかと悲しく悔しい思いを強くする。


 Ø バックナンバー  

  こちらをご覧ください
  


ホームへ戻る