澁谷 司の「チャイナ・ウォッチ」 -27-
「9・3大閲兵」後の人民解放軍改編
政策提言委員・拓殖大学海外事情研究所教授 澁谷 司

 今月9月3日、北京で「抗日勝利70周年」記念式典、いわゆる「9・3大閲兵」が行われる。この式典には、なぜか国連事務総長の潘基文も“中立性を侵さない”として臨むという。潘は韓国次期大統領選の出馬が噂されている。これは潘基文のパフォーマンスかもしれない。
 よく知られているように、近年、北京はPM2.5(あるいはPM10やPM0.5等)の大気汚染でしばしば空が霞んでいる。中国共産党として、諸外国要人が北京を訪問した際、その状況を見せるわけにはいかない。
 そこで中国共産党政権は大行事開催時、北京市はもとより、同市を取り巻く河北省の工場(鉄鋼業が多く、大量の石炭を使用)の操業を停止させる。
 また、北京市内の自動車を規制する。車の排ガスも大気汚染の有力な一因だからである。ナンバープレートの奇数番号と偶数番号で走ることのできる日を決める。もし今日、奇数ナンバーの車ならば、明日は偶数ナンバーの車となる(ただ、金持ちは奇数・偶数両方のナンバーの車を所有しているので、規制とはほとんど無縁である)。
 このようにして、中国共産党は、北京の鮮やかな青空を演出する。2008年8月の「北京五輪ブルー」、2014年11月の「APECブルー」などに続き、今度は「パーレード・ブルー」である。
 「パーレード・ブルー」ため、北京市民の生活はきわめて不便になる。警戒が厳しくなるので、移動も制限される。また、暮らしに必要な日用品や食料品も手に入れにくくなる。今回、市民がマンションの窓から大閲兵を見てはいけない決まりとなった。習近平が自らの暗殺、あるいはテロを恐れてのことだろう。

 さて、「9・3大閲兵」後、習近平は人民解放軍の軍区改編に着手するという。
 周知の如く、現在、7大軍区が存在する。瀋陽軍区、北京軍区、済南軍区、南京軍区、広州軍区、蘭州軍区、成都軍区である。これを「4戦区」に再編する。
 @瀋陽軍区、北京軍区を併合して「東北戦区」(指揮センターは北京)
 A済南軍区、南京軍区、広州軍区を合併して「東南戦区」(指揮センターは広州)
 B蘭州軍区は「西北戦区」(指揮センターは蘭州)
 C成都軍区は「西南戦区」(指揮センターは成都)

 B、Cは基本的にそのままである。
 習近平の狙いは、北京政府の言うことを聞かない瀋陽軍区を潰し、北京自ら瀋陽軍区支配を目指すことにあるのではないか。実は瀋陽軍区は強大な実力を持ち、北朝鮮をコントロールしているとも言われる(同軍区には、朝鮮族の兵士が多い)。ここには、精鋭部隊の機械化5集団中、4集団が集中している。ロシア・北朝鮮・モンゴルと国境を接しているからである。朝鮮半島の緊急事態が生じた際には、真っ先に瀋陽軍区が動く。
 例えば先月8月、非武装地帯での地雷爆発をめぐり、南北朝鮮の間で緊張が走った。その際、瀋陽軍区の戦車が北朝鮮国境沿いへ向かったとの情報が流れている(幸いにも、南北間で話し合いがもたれ、戦争は回避された)。
 習近平としては、この瀋陽軍区こそが一番手をつけたい軍区だろう。瀋陽軍区と江沢民の「上海閥」は関係が深いからである。習近平政権は「東北のトラ」こと徐才厚(制服組トップの「上海閥」)を党規律違反で失脚させた。そして徐才厚は今年3月、膀胱癌のため北京の301病院で亡くなった。
 一説によれば、すでに江沢民と曽慶紅が軟禁状態だと言われる。また、今年8月12日深夜の天津大爆発事故で、政治局常務委員(「チャイナ・セブン」)の一人 張高麗(「上海閥」)が責任を取らされ、副首相の座から降りるという。張の娘(張小燕)が爆発した瑞海国際物流公司と関係が深いためである。
 もし、これらが本当だとすれば、中国は重大な局面を迎えるかもしれない。習近平・王岐山連合が、いよいよ「上海閥」のトップを追い詰める。だからと言って、「太子党」対「上海閥」・「共青団」の戦いは終わるわけではない。
 「上海閥」の党・政府官僚らは、習近平の指示をサボタージュして、更に習の政策を実行しないことも考えられる。習近平の目指す改革は進まず、景気の落ち込みはより激しくなるだろう。そして、ますます社会不安が増大するに違いない。
 現在、中国はいつ「革命」が起きてもおかしくない状況にあると言っても過言ではない。



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