本日ここに、国際社会の安全保障の堅実な推進にとって、極めて重要かつ現実的課題に関わる議論が日英の優れた識者のご出席を頂いて行われますこと、開催にご尽力いただきましたデイビッド・ウォレン駐日英国大使をはじめ、関係各位に敬意を表しますとともに、ご参集下さいました皆様に御礼を申し上げます。
RUSI(ルーシー)は、その優れた調査研究と政策提言をもって国際的に高名なシンクタンクであります。2009年度、私ども日本戦略研究フォーラムの研究テーマ「先進防衛装備品の多国間共同開発とこれが我が国の防衛機器産業に及ぼす影響」に関わる海外調査で担当委員がRUSIを訪問し意見を交換する機会を得ました。そこでは、安全保障と防衛産業との関わりについて現状を的確に認識し、相互に解決すべき課題を分析して国内外の政策に反映させることが二十一世紀の国際社会における重要かつ喫緊のテーマであり、寄与すべきことであると共通の理解が生まれ、RUSIから本セッションの開催について強く働きかけられたと聴いております。
中でも関心事は、国際社会の協調・共同・協力・支援の進め方でありました。東西対立の構造が崩壊した冷戦後の国際システムは、国連依存や二国間関係を進化させ、国連の再編成や役割の拡大強化、多国間の相互扶助を求めるようになり、それがヨーロッパにおける共同体再編成、地域紛争解決のためにコアリッション・フォースを投入するなどの現実として具体化し、効力を発揮してきたところであります。また産業界においては、ボーダレスの合併や吸収施策による産業構造の国際的な再構築が進められ、国際システム化による企業経営基盤の強化、利益の確保、共同開発・共同生産に依る安全保障の連帯強化が図られております。分けても防衛産業の大規模合併の現象は、今後の国際安全保障、国際秩序の維持にいかなる貢献がなされるか興味深いところであります。 |
ひるがえって第二次世界大戦後、わが日本の安全保障や経済政策は、日米同盟に基づき米国とのパートナーシップ一辺倒でありました。防衛産業に関しては、終戦直後から占領政策によって軍需に対する厳しい制約が徹底されました。研究開発の制限、造船・航空機産業をはじめとする重要企業の解体、製造の禁止といった直接の指令と徹底が日本の産業界の再生を遅らせました。
今日に至るまで解かれていない武器輸出に関わる禁止政策、米国製装備の導入に偏らざるを得なかった日米共同体制など、ここでも安倍晋三元総理大臣が主張して来た「戦後レジームからの脱却」が進んでいない日本の二十世紀後半的体質が顕著であります。占領政策の主導に依って作られた日本国憲法の解釈論議の中で、国軍としての誇りを持たせられなくなった自衛隊の立場、占領政策が導いた日本人教育の産物である母国を護る気概が希薄でひ弱な日本人の存在、過度な軍事アレルギーの定着などが原因で、分けても安全保障の世界において日本が普通の国として優れた先進諸国とパートナーシップを形成できないでいるという現状は深刻な問題として認識できます。
日本は今日このような現実に直面しているわけですが、今申し上げました戦後レジームという要因に導かれてきた日本の防衛産業が抱える問題を嚆矢として、日本が今日アプローチすべき、多くの面で価値観を共有する欧米諸国・国際共同体・ボーダレス防衛産業機構とのパートナーシップについて、優れた発表と闊達な議論が提供する示唆に期待したいと思います。そこでは特に英国側から、所謂、有効な外圧として、日米二国間関係の多国間関係への拡大について後押しする言及があり、強調されることに強い関心を持っておりますことを付言させて頂きたいと思います。 |