【特集】 日中間の争点「尖閣諸島」再考

尖閣諸島を含む南西諸島防衛の課題

常務理事・東京都市大学環境情報学部講師 髙井晉
takaiはじめに
 米国は、冷戦の一方的勝者となったものの、イラク、アフガン戦争を境に、そのパワーと軍事的地位が相対的に低下した。オバマ政権は、中国の南シナ海への進出、更にはロシアのウクライナ等への軍事的圧力等に対し何ら有効な手立てを講じることができず、中国とロシアに対して宥和政策を採り始めたかの感がある。
 中国は、経済大国化の実現と軍事力の増強を背景に、南シナ海のみならず日本固有の領土である尖閣諸島を、武力を行使しても確保する「核心的利益」と言明した。更に中国は、尖閣諸島周辺領海に政府公船を遊弋させ、東シナ海上空に防空識別区を設定し、武力による尖閣諸島領有の機会を窺がっている。かかる政策を遂行する習近平総書記の行動の背景には、オバマ外交に現れている米国の対中宥和政策をもたらしている米中間の力関係の変化、米国の対中経済依存、そして中国のA2/AD(接近禁止/領域拒否)戦略の進展に伴う軍事的自信などがある。
 中国は、経済大国化に伴う軍事力の増強と近代化が相俟って、国際社会における経済的・経済的影響力が拡大しており、今後もこの傾向が続いていくと思われる。この結果、アジア太平洋地域においては、米中両国は今後も一定の協力関係を模索し、米国はリバランシング政策によって前方展開戦略の維持と同盟強化を図り、アジアにおけるプレゼンスを維持すると思われる。他方で中国は、経済力、軍事力の増大を背景に「中華民族の偉大な復興」を旗印として、東シナ海や南シナ海における自国の影響力の拡大に努めると思われる。


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