【特集】 日中間の争点「尖閣諸島」再考


中国の派遣主義と海洋戦略

政策提言委員・拓殖大学客員教授 矢野義昭
yano1 中国の地政学的戦略の基本概念
 中国の戦略の基本的な概念の中に、地政学的な視点がある。中国の基本的な立場は、自らを社会主義国であり決して侵略せず覇権を唱えないとしつつも、「複雑に変化する国際環境の中で、自らの生存空間の利益を守り、敵対勢力の政治的、軍事的、経済的闘争に対抗し、現代化の建設を発展させ、祖国の統一を実現し、必ずや、国防力を高め、先進的な装備を整え、強大な武装力量を建設し、国家の領土、領海、領空を保衛し、制陸圏、制海権、制空権の安全を守るという課題こそが、最大の重要課題である」とする主張にある。
 このように中国は、富国強兵を実行することが、地政学の原則の根本的な要点であるとみている。このような見方は、党の「富強国家建設」の方針と一貫している。尚、ここでいう「敵対勢力」として、軍事戦略関係文献でとり上げられているのは、第1に米国であり、ついでロシア、日本、インド、時に東南アジア諸国、欧州諸国である。台湾は国内の一部として扱われており「敵対勢力」には含まれていないが、武力統一を前提とするならば、第1に攻撃すべき対象となる。
 また「戦略要地」については、国家の主要な中心であり、「核心地区」であり、作戦目標となりまた重要な戦場となるとされ、現代の国家の生存、発展、安全に関わり、戦略全局に重大な影響を与える政治、経済、軍事、文化の中心地区を指すと定義されている。戦略要域の中でも、領土の辺縁部は係争地となりやすい。戦略的な要地の1つとして、陸海を含めた東アジア地区が挙げられ、日露、日韓、日中の間で領土をめぐる係争があり、辺縁部での矛盾が存在するとみている。また、東南アジアでも各国間の領土紛争が存在する地区として東アジア地区に含められている。

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