【特集】 日中間の争点「尖閣諸島」再考

日本の領土「尖閣諸島」と領有権
−国際法的および歴史的考察−

筑波大学名誉教授 尾ア重義氏
ozaki 尖閣諸島をめぐる日中間の紛争は、外交および国際政治の問題であるが、国際法にいう領土紛争ではない。尖閣諸島の法的地位は1895年の領土編入措置とそれ以後の日本の実行、そして、それに対する中国を含む外国の抗議の欠如によって確定したのであり、爾来その地位に変動はない。それは確定した日本の領土であり、決して係争地ではない。
 1971年に至って、中国・台湾は突如、尖閣諸島は歴史的に中国の領土であって、中国に返還されるべきだと主張し始めた。その問題の国際法上の主要な争点は次の3点である。
(1)1895年までの、およびそれ以後の日本政府が尖閣諸島に対してとった一連の措置は、国際法上の先占の要件を満たしているのか、そしてそれによって、日本は有効に尖閣諸島に対する領有権を取得したのか(論点1)。
(2)(これに関連して)1895年の時点で、尖閣諸島は中国の領土であったのか、それとも国際法上の無主の地であったのか(論点2)。
(3)中国がそれより76年後の1971年に歴史的権利を根拠に領有権を主張したことは、日本の先占の権原に基づく領有主張に国際法的に対抗し得るのか(論点3)。

I 先占の権原に基づく日本の尖閣諸島領有
 国際法上、先占とは、どの国家にも属していない地域である「無主の地」を、他の国家に先立ち、実力によって支配することによって自国の領土とすることをいう。
 先占が認められるためには、(1)無主の地に対して、 (2)その土地を領有しようとする国家の意思が何らかの形ではっきりと表示され、(3)国家がその土地を実効的に占有することが求められる。更に最近の国際判例は、このような国家的権能の行使が、「国家的権能の平穏かつ継続した発見」でなければならないとする。

続きをご覧になりたい方は...



ホームへ戻る