【連載】台湾で愛される日本人(5)

阿里山に山岳鉄道を敷いた森林利用学の先覚

政策提言委員・拓殖大学海外事情研究所准教授 丹羽文生
miwa 檜の宝庫
 富士山よりも高い標高3,952メートルもある台湾の玉山は、かつて「新高山」と呼ばれた。日清戦争勝利によって清国から台湾の割愛を受けたことに伴い、日本に、富士山に代わる新しい日本最高峰の山が誕生したとして、明治天皇が命名したものである。1941年12月8日の大東亜戦争の緒戦である真珠湾攻撃において、大本営が大日本帝国海軍機動部隊に発した暗号電文「ニイタカヤマノボレ一二○八(ひとふたまるはち)」は、これに由来する。
 その玉山の西側には3,000メートル級の18の山々が連なっている。これらを総じて「阿里山」と言う。樹齢1,000年を優に超える巨木群、幻想的な雲、澄んだ空気、四季折々の万葉植物が楽しめる。冷気を肌で感じながらの森林浴は実に快適で、疲れた体と心を癒してくれる。台湾有数の景勝地である。
 茶の産地としても名高い。阿里山の斜面の至る所に茶畑が広がっている。軽やかな飲み口、爽やかな風味、上品な香りで人気があり、台湾土産の定番となっている。

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