【特集】 日中間の争点「尖閣諸島」再考

尖閣諸島周辺領海における中国の執行管轄権行使

愛知大学名誉教授 三好正弘氏
miyoshiはじめに
 このところ、中国の海洋監視船が頻繁に尖閣諸島周辺の海域を航行し、領海内に入ってくる現象が見られる(付図参照)。これら島嶼が我が国の領土である以上、その周辺12海里幅の海域は我が国の領海であるから、領海内での外国船舶の航行は無害通航でない限り国際法違反である。このところ、中国の海洋監視船が頻繁に尖閣諸島周辺の海域を航行し、領海内に入ってくる現象が見られる(付図参照)。これら島嶼が我が国の領土である以上、その周辺12海里幅の海域は我が国の領海であるから、領海内での外国船舶の航行は無害通航でない限り国際法違反である。
 ところが、問題を複雑にしているのは、中国が尖閣諸島を自国領と称し、その周辺の12海里の海域は中国の領海だから、そこを管轄するのは中国の正当な権利行使だと言い張る姿勢である。あまつさえ中国はこれら島嶼をその「革新的利益」だとして、台湾、チベット、新疆ウイグル自治区と並ぶ重要な領土だという。その当否は後ほどけんとうするとして、表面的には、日中の主張が島嶼領有権という基本のところで重なり合い、その周辺の領海の侵犯や排他的経済水域(EEZ)における漁業に対して行っている海上保安庁巡視船による規制行為は、中国側に言わせると、中国の領海を侵犯し又は中国のEEZでの管轄権行使を妨害するという図式を生み出している。
 現今の現象としては、尖閣諸島周辺の領海及びEEZにおいて法執行の管轄権が両国によって同時に主張され、公使され又は行使されようとするという、執行管轄権の「競合」が生じているとも言われる。しかし、言葉の正しい意味において、管轄権の「競合」が生じているといえるのかどうか。本来ならば、我が国の執行管轄権行使に対して中国の非商業的目的の政府船舶がどこまで免除を認められるかどうかという構成で論ずべきではないか。
 ここで、「執行管轄権」について一言しておきたい。

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