【特集】米・露・中・韓情勢が及ぼす日本への影響

流動化する東アジア情勢

拓殖大学海外事情研究所教授 澁谷司氏
shibuya 1.今日の世界
 20世紀後半、米国は世界的に圧倒的なパワーと影響力を誇っていた。だが、今や米国は「世界の警察官」という役割を降りてしまい、単なる強国の一つになったように見える。
 21世紀に入り、いつかそんな時代がやって来ると多くの人が予想していたに違いない。だが、こんなに早くその日が来るとは、誰もが考えていなかっただろう。
 2001年の「9・11米同時多発テロ事件」を受けて、ブッシュ米大統領は、アフガニスタンに対して「対テロ戦争」を始めた。更に、イラクに対しも、サダム・フセインが大量破壊兵器を保有しているという理由で、同大統領はイラク戦争を行ったのである(実際、イラクに大量破壊兵器が存在しなかったのは周知の事実である)。
 その後、米国民の厭戦気分を背景に、“理想主義者”のオバマ米大統領は、イラク・アフガニスタンからの米兵撤退を模索している。
 現在、米国の“凋落”によって、世界のパワーバランスが崩れ、各地域が不安定化している。今日の世界は、(1)「近代化」した「政教分離」の先進国、(2)原則的に「政教一致」のイスラム世界、(3)「前近代的」“ロシア帝国”と“中華帝国”の復活、(4)インドやブラジル等、新興勢力の台頭、などに分けられよう。
 (2)は、イスラム教の教義(生活・慣習を厳しく規定するイスラム法)と関係が深い。多くのイスラム教国は、「近代化」(資本主義・議会制民主主義・近代法の導入)と一線を画す傾向がある。そのためか、「近代化」した諸国(イスラム教徒からすれば“堕落”した国々)との関係は必ずしも良くない。
 (3)の「前近代的」“ロシア帝国”と“中華帝国”の復活は、プーチン大統領・習近平国家主席の個性によるところが大きいのではないか(とりわけ、後者は本稿と直接関わる)。

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